※本文は『ペイン・ハスラーズ』のネタバレを含みます

Netflix最新作
『ペイン・ハスラーズ』
製薬ビジネスの闇に挑む
エミリー・ブラント

製薬会社の闇を題材にしたNetflixによる最新プロジェクト、『ペイン・ハスラーズ(Pain Hustlers)』。クリス・エヴァンス、エミリー・ブラントをキャスティングすることで、この題材をライトな雰囲気へとシフトさせたのでは、そんな製作側の意図が見え隠れします。監督デヴィッド・イェーツ(『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』)も、「この物語をコメディ的に表現したい」と望んでもいたようです(「大手製薬会社は悪だ」という結論になることには変わりませんが)。

彼はエヴァン・ヒューズによるノンフィクション・ブック『Pain Hustlers: Crime and Punishment at an Opioid Startup(ペイン・ハスラーズ:オピオイド・スタートアップの罪と罰)』を、よりドラマティックに表現することに挑戦しました。これは億万長者のスタートアップ(新興企業)ではあるが落ち目の製薬会社の物語であり、腐敗した製薬ビジネスの不穏な狙いが随所に描かれています。そしてそこに、杜撰(ずさん)な対応ぶりも加わっています。

この映画の主役は、ライザ・ドレイク(エミリー・ブラント)というシングルマザーでストリップクラブのダンサー(少なくとも、彼女が製薬会社のセールスに誘き寄せられるまでは)を務める架空のキャラクター。そしてライザはストリップクラブでピート・ブレナー(クリス・エヴァンス)と出会い、ピートは「(きわめて強力な鎮痛薬)フェンタニル」をベースにした末期ガンの鎮痛剤『Lonafen(ロナフェン)』と呼ばれる新薬を売り込むことで、「年間10万ドル稼げる」と言って仕事をライザにオファーします。

そうしてライザは、このロナフェンをつくるZANNA(ザナ)という製薬会社で仕事を始め、どんどん出世していきます。登場人物はライザ、ピートの他、脳腫瘍によるてんかんに苦しむライザの娘フィービー(クロエ・コールマン)、そしてライザの母ジャッキー(キャサリン・オハラ)によって物語は展開されていきます。

やがて、ザナ製薬の戦略(賄賂やロナフェンの中毒性に関する不当表示)が、この製薬会社を連邦捜査局の注視下に置くことになります。ですが、ライザは次第に『ロナフェン』によるオーバードーズが当初の想定以上に頻繁に起こっていることに気づき、自首することを選びます。そしてザナ製薬の違法行為を自供…いわゆる内部告発をするという流れ。続いてライザと家族の協力のもと、億万長者の投資家ジャック・ニール(アンディ・ガルシア)を含め、関係者全員を逮捕するまでに至ります。投資家ニールに関しては、ライザの母と寝たという架空の出来事(そして、有罪を立証するいくつかのメールも)をきっかけに逮捕されるのですが…。

コメディと社会派が
ジャンルミックスした
新感覚の映画?

不十分でありながらも、全員が刑期宣告を受けてザナ製薬は倒産します。そうしてライザは一時的に、多少なりともハッピーエンディングを迎えます。たった15カ月という刑期を終え、刑務所から解放されたのです。その後皆さんは、「ライザの新しい仕事は何?」 と思いでしょう。それは、彼女の母親がはじめた新しいスキンケア商品の販売です。ですが次に、「そんなに稼ぎがいいのか?」と思うはずです。そして、「ライザが会社を辞めたのなら、どうやってフィービーは高額の脳手術を受けることができたんだ?」とも…。『ペイン・ハスラーズ』製作サイドは、その正確な経緯を具体的には説明していません。ですが、なにはともあれ最後に映るフィービーは元気そうです!

エンドクレジットで監督イェーツは、この映画にインスパイアを与えた実在人物も登場させているのも注目してほしいところです。加えて劇中では、ピート自らがプロモーションでしょうか? ステージ上でラップのパロディで商品を宣伝してます。つまり、クリス・エヴァンスが実際にラップを刻んでいるのです。わずかな時間ではありますが、これは見ものです。

…というわけで、結局のところこの映画の教訓は、「ヒップホップ・トラックのパロディで紹介されるようなものは、絶対に信じちゃダメ!」ということなのかもしれません。

From: Esquire US
Translation /Miki Chino
※この翻訳は抄訳です。

From: Esquire US