静寂の中の格闘技”とも呼ばれるゴールボール。この種目は視覚に障がいを抱える人に向けた球技で、迫力のあるボールの投げ合いとディフェンス、そして、感覚を研ぎ澄ませた試合を読む目が重要となるパラ競技です。

 今夏の東京2020パラ大会において、ゴールボールをより楽しむためにゴールボールのルールや見どころなど、知っておくべき基礎知識をご紹介します。

ゴールボールとは?

ゴールボールを投げる選手
Alexandre Loureiro//Getty Images

 ゴールボールとは、鈴の入った音の鳴るボールを相手のゴールに投げ合い、得点を競う球技スポーツです。視覚障がい者を対象にしたチーム球技で、全盲から弱視の選手まで出場可能です。公平を期すため視覚の程度に関わらず、全員アイシェードと呼ばれる目隠しを着用します。

ゴールボールの歴史は?

ゴールボールを止める選手
Oliver Kremer at Pixolli Studios//Getty Images

 ゴールボールは、第2次世界大戦で視覚に傷害を受けた軍人のリハビリ効果を促進する目的で考案されたプログラムの一環として誕生し、1946年に視覚障がい者のためのスポーツとして紹介されたのがその起源とされています。

 パラ五輪に登場したのは、1972年のハイデルベルグ大会(当時西ドイツ)のことでした。このときは公開競技でしたが、1976年のトロント大会(カナダ)で正式種目に採用されています。

 日本女子代表チームは2004年のパラ五輪アテネ大会で銅メダルを獲得し、2012年のロンドン大会では金メダルに輝いています。この夏の東京大会で、5大会連続のパラ五輪出場となります。男子代表チームは、東京大会が初のパラ五輪出場となります。

ゴールボールの基本ルールは?

ゴールボールのコート
Alexandre Loureiro//Getty Images
  • 1チームは3名。3体3の対戦形式で競技が行われます。
  • 1試合は前後半12分ハーフ。延長戦(前後半各3分)になった場合は、先にゴールを決めたチームが勝利となる「ゴールデンゴール方式」で行われます。
  • ボールの中には鈴が2つ入り、投げると音が鳴ります。ボールの重さは1.25kgです。
  • ボールを投げ合い、相手ゴールにボールを入れると得点となります。
  • 投げたボールを自らの陣地に近い「攻撃側エリア」と、コート中盤の「ニュートラルエリア」の両方にバウンドさせる必要があります。
  • 守備側のチームは、全身を使ってゴールを守ります。身体全身、どこでボールをブロックしてもOKです。
  • 攻撃側の不利になるような音を守備側の選手が出すと、反則となります。
  • アイシェード着用が義務付けられています。また、試合中にアイシェードに触れると、反則となります。
  • コートの大きさは、バレーボールコートと同じ横18m × 縦9m。ゴールの大きさは幅9m × 高さ1.3mです。

東京2020パラ大会のスケジュール・対戦カードは?

 男女それぞれ10カ国が出場。2つのグループに分かれて5カ国総当たりの予選リーグを行います。各グループ上位4カ国がトーナメント形式の準々決勝に進出します。

 男子日本代表(10位)は予選Aグループとなり、ブラジル(1位)、アルジェリア(13位)、アメリカ(8位)、リトアニア(2位)と対戦します。※かっこ内は世界ランキング

 女子日本代表(5位)は予選Dグループ。トルコ(1位)、ブラジル(3位)、エジプト(29位)、アメリカ(4位)と対戦します。

 男女共に初戦は2021年8月25日(水)。男子はアルジェリアと、女子はトルコと対戦します。2戦目は同27日(金)で、男子はアメリカ戦、女子はブラジル戦。3戦目は同28日(土)。男子はリトアニア戦、女子はアメリカ戦となります。予選リーグ最終戦は男女共に同29日(日)。男子はブラジル戦、女子はエジプト戦です。


「音と気配」を手がかりにした、選手たちの想像力にも注目です!

ゴールボールを止める選手
Dennis Grombkowski//Getty Images

 ゴールボールの見どころは「音と気配」を頼りに、静寂の中で繰り広げられる緻密な攻防と言えます。選手の頭の中にはピッチ全体の様子が描かれ、常に対戦相手のプレイスタイルが思い描かれていると言います。

攻撃時、フェイントを駆使した駆け引きが行われます

攻撃方法を話し合う選手たち
Moto Yoshimura//Getty Images

 攻撃時、オフェンスの選手たちはあらゆる手段を講じて、ディフェンス側の選手を惑わせます。複数の選手が連動して動くことで、誰が投球をするのかをわからなくしたり、音が鳴らないようにボールをチームメイトに手渡しすることで、ボールのありかを気づかれないようにするなど、ボールを投げる前から繰り広げられる駆け引きにも注目してください。

守備時、男子選手のボールは時速70km/hに達することも…

速球を投げる選手
Oliver Kremer at Pixolli Studios//Getty Images

 男子のトップ選手の球速は、時速60~70km/hにも及びます。高速で向かってくるボールの軌道を想像し、反応して止めます。視界のない中でゴールを死守するには、反射神経だけでなく、高速ボールへ立ち向かう勇気も必要となります。