バラク・オバマ元米大統領は2019年6月下旬、家族と過ごすバケーション先のフランスで黒いスニーカーを履いている姿が目撃されました。

このスニーカーに見覚えがある人もいるかもしれません。と言うのも、オバマ氏は2019年2月、トロントでデューク大対ノースカロライナ大のバスケットボールの試合を観戦していたときにも同じスニーカーを履いていたからです。このとき彼が、「44」という数字(44代大統領の自身を示しています)が刺しゅうされたボンバージャケットに合わせて履いていたのが、「オールバーズ(allbirds)」という環境に優しいスニーカーブランドのもので、モデル名は「ウールランナーズ」でした。

あれほど話題になりそうなタイミングで、オバマ氏の選んだスニーカーがあまり注目されなかったという事実は、このブランドの控えめな性質を示しているかもしれません。

オールバーズ」は派手なロゴでブランドを押し出すこともなく、スタイルと環境への意識が高い人のための手ごろなスニーカーブランドとしての地位を確立してきました。

この多機能スニーカーはベン・アフレックやアシュトン・カッチャー、レオナルド・ディカプリオ、ヒュー・ジャックマン、マシュー・マコノヒーなどが履いている姿もしばしば目撃されています。

オバマ氏もお気に入り!手ごろで環境に優しいスニーカーブランド「オールバーズ」とは
MEGA AGENCY

「オーバーオ―ルズ」の価格は?

「オールバーズ」のスニーカーは95ポンド(約1万3000円)の均一価格で、「Wool - Soft & Cozy」と「Tree - Light & Breezy」の2つのラインがあり、動物福祉や社会・環境への配慮の厳しい基準を満たすZQ認証を取得した素材ですべてつられています。

同社は「Bコーポレーション(米非営利団体のB labが運営する社会・環境に配慮した企業の認証制度)」に認定されており、90%がリサイクルされた使用済み段ボールで製品を出荷し、100%リサイクル素材でつくられた靴紐を使っています。また、NPOと協力して、状態のいい中古スニーカーを貧困地域に送る活動も行っています。

オバマ氏もお気に入り!手ごろで環境に優しいスニーカーブランド「オールバーズ」とは
Allbirds

「オールバーズ」が初めて注目を集めたのは、レオナルド・ディカプリオが2018年8月に同社への投資を発表したときでした。ディカプリオは同社について「新たな素材を開発し、フットウェア業界の模範となることで、よりサステイナブルな未来を築くことに尽力している会社」とツイートしていました。

ディカプリオの資金援助は単なる「高貴なる者の務め」というわけでなく、抜け目のないビジネス上の判断でもありました。と言うのも、同社の評価額は2018年10月には14億ドル(約1500億円)に達したのです。

instagramView full post on Instagram

オールバーズのサステナビリティへの取り組みとは?

巨大なコンシューマー向けファッションブランドの場合、サステナビリティへの取り組みは「リサイクル素材から作られたラインを1つ立ち上げる」、「将来的な無駄の削減を公約に入れる」といったカタチを取るのが普通です。

しかし、消費者は環境責任を優先する企業にますます目を向け始めています。これまで、一部のエシカルブランドや「パタゴニア」のようなアウドドア愛好家のためのブランドの関心事でしかなかった環境への取り組みが重視され始めているのです。英「ガーディアン」紙は、「2018年に月に1回衣服を購入した消費者の割合は2016年から4%減の33%まで減少。一方、2、3か月ごとあるいはそれより少ない頻度で衣服を購入した消費者は同3%増の67%に増加した」というデータを明かしています。

多くの新たなブランドは、流行を意識した顧客基盤にアピールしながらも、サステナビリティをブランド・アイデンティティーの中心に据えています。このようなブランドには、「裸でいることの次に、サステイナブルな選択肢」と売り込む女性向けファッションブランドの「リフォーメーション(Reformation)」、メンズウエアブランドの「ノア(Noah)」や「エバーレーン(Everlane)」などがあります。

これらの企業は顧客に対し、製品の素材や製造方法に関して透明性を提供し、より長持ちする衣服を購入するよう提唱しています。

「オールバーズ」はサステイナブルなフットウエアとして流行していますが、同社はこのイメージをことさら強調されたくはないようです。創業者のティム・ブラウン氏は米国版「エスクァイア」のインタビューの中で、「サステナビリティは誇りに思うようなものではありません。当然のことなのです」と語っています。

ブランディングが控えめであれば、消費者はサステナビリティへの意識をあからさまにアピールすることなく、環境に配慮するブランドを支持できるのです。

実際に「オールバーズ」は、「ヴァーチュー シグナリング(virture signalling、自分が道徳的な活動を支援していることを主張すること)」のためのプロダクツにはなっていません。同ブランドの靴について聞かれたとき、ほとんどの愛用者が最初に語るのは「この靴下のような靴がどれほど快適か」ということになるのです。

最高級のメリノウールやリヨセルからつくられた同社のスニーカーは、サポート力に優れ非常に快適です。その快適さは素足で履けるほどで、必要なときには洗濯機で洗うこともできます。

「日常着としてのテクニカルウエア」でお馴染みの「アウトドア・ボイシズ(Outdoor Voices)」と同じように、「オールバーズ」は自社を高機能ジム用シューズのブランドというよりは、ライフスタイルブランドとして売り込んでいます。

ミレニアル世代を狙ったブランディングにより、同社のスニーカーには「ケレル・ムーンストーン」あるいは「テューク・ジャム」のような心地よい名前がつけられており、Instagram上で「#allbirds」のタグが付いた投稿は「トレッドミルで走り込む人」というよりは、「チンクエ・テッレ(イタリア北西部に位置し、世界遺産に登録されている)でのバケーション」といった印象のものです。

「オールバーズ」がつくるスニーカーは、ファッション性においても機能性においてもフットウエア市場で一番というわけではありません。しかし同社は、この2つの完璧なバランスを取ることに成功しています。これに加え、控えめながら確かなエシカルブランドとしてのイメージもありますから、「オールバーズ」の勢いがそうそう衰えることはないでしょう。…というわけなので、オバマ氏もこれを選ぶわけです。

Source / Esquire UK
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。