Ye(カニエ・ウェスト)が発表したセルフ・ドキュメンタリーには、2013年よりアディダスとのパートナーシップ契約の上で展開する自らのブランド「Yeezy」に関して、Yeとアディダス社幹部とのヒートアップした話し合いの様子を明らかにしています。そしてそのシーケンスを、Yeは自らのYoutubeアカウントに投稿したことに関してウェブサイト「Insider」が触れていました。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
LAST WEEK
LAST WEEK thumnail
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そのYouTube動画は、現地時間2022年10月10日に投稿された30分あまりにおよぶものであり、「Last Week」と題されたもの。東京・渋谷のスクランブル交差点の映像から始まり、ゲーム風のシーンに仕立てられています。

やがて映像はアディダス幹部との話し合いへと移り、その中でYeは彼らにポルノビデオを見せ、Yeのアイデアを盗んだと糾弾する場面も映っています。動画の中では、Yeが顔がぼかされている4人の男性と座り、幹部と思しき人物にスマートフォンでビデオを見せているシーンがあります。そのうちの一人が「これはポルノ映画ですか?」と聞き、Yeがそうだと答えると、その男性は「勘弁してくれよ(ジーザス・クライスト)」と答えています。

そしてYeは、ポルノビデオに出演している男性とYeと写っている4人の男性のうち一人との声が似通っていることを指摘。その後、数回のカットを挟んだのちYeは、「あなたたちは私の会社に、ビジネスに、そしてパートナーシップに対し汚すようなことをしている」と発言します。

Yeがなぜポルノビデオを見せようとしたのかは、すぐには明らかになりません。その後4人の男性のうち一人、Yeのチーム側と思われる男性が「今あなたが感じているのは極度の不快感ですが、それこそがYeのポイントなんです。もし誰かがYeのアイデアやクリエイションを盗むことは、彼の子どもを盗んでいるようなことなんです。これは皆彼の心の中の子どもたちであり、あなた方はそれを誘拐したのも同じです」と割り込みます。

そして発言は続きます。

「『Yeezy』にインスパイアされた派生商品がたくさんあって、それによってとても大きな利益を上げていますね。そのインスパイアされた濃度があまりにも高いので、購入者はその違いがわからないほどです。もし誰かがステラ(アディダスはステラ・マッカートニーともパートナーシップを結んでいます)のデザインを盗んだら、あなた方は激怒するはずです…」と語ります。 

蟹江
Arnold Jerocki//Getty Images
2020年3月パリ・ファッション・ウィークで行われた「Yeezy」のショーにて、娘のノースと。

この会話でこの男性は、「YeはGAP(ギャップ)とのパートナーシップを『昨日』打ち切った」と述べています。Yeがギャップに文書で彼らとの仕事上の関係を打ち切ると伝えたのは、2022年9月中旬です。つまりこの映像は、先月9月に撮影されたものと思われます。

会話の後半では、Yeがその男性に対して「私は私よりお金のない人とお金に関して議論しているわけではありませんし、私より劣ったアイデアを持った人たちとアイデアについて議論するつもりもありません」と発言しています。

このセルフ・ドキュメンタリーは、アディダスがYeとのパートナーシップを見直すと発表した翌日にリリースされています。アディダスは2022年10月7日にYeとのパートナーシップは業界の歴史上「最も成功したコラボレーションのひとつ」と述べ、また「われわれはまた、全ての成功するパートナーシップは相互への尊敬と価値観の共有に根ざしていることも認識しています。この事態を内々に解決するための努力を重ねた結果、私たちはパートナーシップを見直す決断をしました。この期間中も、現在の製品の共同管理を継続していくつもりです」と述べています。

2022年9月、Yeはアディダス社とギャップ社との契約が切れたら「ひとりでやっていく」つもりだと発言しています。Yeとアディダスとの契約は2026年まで、ギャップとの契約は2030年までとなっています。

2022年10月8日からの週末、Yeはツイッターに電撃復帰し、反ユダヤ的な発言(“going death con 3 on JEWISH PEOPLE.”)を投稿したため、その後すぐにツイッターのポリシーに違反したとされアカウントを凍結されています。今回の出来事で彼の内面のカオスの一部を垣間見れたものの、一般の人々には彼の思想を理解できるはずもなく…Yeの独壇場はこれからも続きそうです。