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アカデミー賞2024物議を醸した瞬間~事件&モーメント

第96回アカデミー賞は『オッペンハイマー』の席巻は予想できるし退屈…と思っていたら、見逃せない事件はやはり現場で多数起きました。

By
第96回アカデミー賞 ジョン・シナ ジミー・キンメル
Kevin Winter

爆笑シーンから、命に係わる問題定義まで。

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第96回アカデミー賞受賞作品・人物全リスト

ジョン・シナ全裸事件

アカデミー賞2024 ジョン・シナ
Kevin Winter

この写真だけを見ると、神経を疑いそうになるものの、これはスキット(寸劇)の一部。衣装デザイン賞のプレゼンターとして衣装を着けず、全身の体毛さえも残さず(彼は濃い体毛で苦労したことで有名)登場したジョン・シナが、「笑い」として成立するのは過去のある事件をネタにしているから…。

第46回(1974年)授賞式で、ある学校教師が記者に扮してバックステージに潜入。式の真っ最中に全裸で舞台上に現れ、ストリーキングしたことはオスカーの歴史に残る事件として語りつがれています。

ちなみにシナは舞台袖から封筒で股間を隠し、カニ歩きで登場します。そして、ステージの中央に着くと「衣装はとても重要です」「多分、1番大切なものです」と裸のまま衣装の大切さを語りました。その後シナは、映像が流れている間にギリシャ風のローブを着用して再度登場し、受賞作を発表します。

第46回全裸事件【証拠動画】

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
The Oscars Streaker | 46th Oscars (1974)
The Oscars Streaker | 46th Oscars (1974) thumnail
Watch onWatch on YouTube

こちらがその“歴史に残る”オスカー珍場面です。

ちなみにCBSニュースによれば、今回ジョン・シナは「最小限のパッド入り下着を身に着けていた」とのこと。

安心してください、穿いてましたよ。

*CBS News 2024年3月11日配信記事参照

ライアン・ゴズリング、圧巻のライブパフォーマンス

ライアン・ゴズリングのパフォーマンス 2024年アカデミー賞
Kevin Winter

舞台での強さを見せつけたライアン・ゴズリング。授賞式前から期待値は高く、「最大の見せ場」と言われたいた歌曲賞候補「I'm Just Ken」を生披露。マリリン・モンロー主演『紳士は金髪がお好き』(1953年)の有名なナンバー「Diamonds Are a Girl's Best Friends」のシーンを彷彿とさせる演出で圧倒すると、客席に下りていくやグレタ・ガーウィグ、マーゴット・ロビーにマイクを向け一緒に歌唱。

各個人賞から落ちてしまった監督と主演女優賞の存在をアピールすると、流れでエマ・ストーンにもマイクを。『ラ・ラ・ランド』(2016年)のコンビ復活!とこれまた話題に。さすが元ディズニー・アイドルです。

ちなみに舞台には作曲者のマーク・ロンソンだけでなく、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュ、エドワード・ヴァン・ヘイレンの息子ウォルフガング(ウォルフギャング)もギター演奏で参加。このうえなく豪華な並びとなりました。

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『バービーVS.オッペンハイマー』のビーフ

96th annual oscars show
Rich Polk//Getty Images

ちなみにライアン・ゴズリング。プレゼンターとして登場した際には、『オッペンハイマー』のエミリー・ブラントと『バービーVS.オッペンハイマー』のビーフ(ディスりあい)を披露。これが洒落がきいていて面白い。

「2作品のライバル関係が、休戦状態になったことはうれしいことだね」(ゴズリング)

「ケンとキティとしての闘いは、もうおしまいにしましょう。まあ賞レースではそれほど競争にならなかったしね」(ブラント)

「ほほう。まあそれは真実かも。おたくは結構うまくいっているみたいだし。ところで、なんで皆『オッペンバービー』じゃなくて『バーベンハイマー』って言うか知ってる? みんなこの夏『オッペンハイマー』は『バービー』の後ろの裾を踏んずけている(riding on one's coattail=人気に便乗している)と思ってたからさ」(ゴズリング)。

「どうも。見事なケン-スプレイニング*¹だこと。助演男優賞候補には、腹筋描けばなれるのかしら?*² ロバート・ダウニー・Jr.が描いている所見たことないけどね」(ブラント)

「ふざけんな! あんたおかしいぜ!×●×●」(ゴズリング)

*¹上から目線で女性に説明(explain)したがる男性あるあるを非難する新語、「Mansplaining」から発想した揶揄。

*² 筋肉はマッチョ思想(男性優位主義)の象徴。頭の悪さの象徴とされることもこれは筋肉が褒められることの多いゴズリングへのあてこすり。ちなみにゴズリングの筋肉は描かれたものではないそう。

ロバート・ダウニー・Jr. 、キー・ホイ・クァンを無視

ロバート・ダウニー・jr オッペンハイマー 助演男優賞受賞
Rich Polk

"arrogant(イキってる)"と騒ぎになっているのが、助演男優賞を受賞した際の ロバート・ダウニー・Jr.。「オレ様」風に登壇すると、オスカーを持って手渡しにきたキー・ホイ・クァンから奪うように受け取ると、目を合わせることもなくすぐ隣にいるティム・ロビンスに挨拶に向かったシーンが、「いかにも白人っぽい仕草」だと“Invisibility of Asians*”の問題を重ねた人々が問題視しています。

バックステージでは握手をし合ったものの、それで解消されるわけでもなく炎上は広がるばかり。無意識だったとしても、曲がりなりにも前年のオスカー受賞者。一瞥(いちべつ)もしない行為は、それはそれで失礼と言えるでしょう。

さらに言えば、彼は壇上でマハーシャラ・アリも完全に無視しました。

*「アジア人の透明化」。アジア系がまるでいないかのようにぞんざいに扱う視線・社会・人を指す。参考:Springer

サム・ロックウェルの優しさ

アカデミー賞2024年 キー・ホイ・クァン サム・ロックウェル
Rodin Eckenroth

ロバート・ダウニー・Jr.の無礼事件。ここで株をあげたのは、『スリー・ビルボード』(2017年)で助演男優賞を受賞したサム・ロックウェル。気にしていたのか終始キー・ホイ・クァンの肩に手をやったり、キスしたりと隣に寄り添う姿勢を見せていました。

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エマ・ストーン、ミシェル・ヨーを無視か

エマ・ストーン アカデミー賞 主演女優賞受賞 哀れなるものたち
Kevin Winter//Getty Images

声が出ないうえに、ドレスまで破けてしまったエマ・ストーン。受賞を告げられると慌てふためき、「ドレスが破けているの!」と錚々たる過去受賞女優たちに叫びながら壇上へ。ジェシカ・ラング、シャーリーズ・セロンにろくに挨拶もせず、ミシェル・ヨーが差出したオスカーを受け取ることすらせずに、ジェニファー・ローレンスのもとへ向かったように見え、「エマ・ストーンまでアジア人を無視?」と疑いがかかりました。

犯人はジェニファー・ローレンス

sally field, jennifer lawrence, michelle yeoh, emma stone, charlize theron, jessica lange
Frank Micelotta//Getty Images

動画*をよく見ると、問題のもとはジェニファー・ローレンス。親友の彼女は本人よりも慌てふためき号泣。本来いるべき立ち位置よりずっと前に出てしまったせいで、本来ヨーがしっかり手渡す前に、彼女とストーンが接近しすぎてしまった。もしくは、二人が親友同士だと知っているヨーが気遣って、ローレンスから渡してもらおうとわざと近づけて譲ろうとしていたように見えます。

授賞式後、ミシェル・ヨーはインスタグラムで「混乱させてしまいましたね。あなたの親友であるローレンスと一緒に手渡したかったのです」と、公式インスタグラムに投稿、状況を説明しています。

いずれにせよ本来渡すべきでない人がオスカーを手にしてしまったため、奪い取ったかのように見えてしまったこと。そして前年度のオスカー受賞者を軽視した挙動は残念。

動画では、隣のサリー・フィールドが必死でローレンスを止めるべく後ろに戻そうとドレスを掴んで引っ張っている様子が見られます。大女優が「あなた、そこは邪魔だからこっちきなさい!」とばかりに彼女のドレスを掴んで必死に引き戻そうとしている様子は、なかなか貴重な瞬間と言えます。授賞式の舞台で尊重されるべき前年の受賞者の晴れの場を汚さないようにという姿勢には、賞賛の声も。

動画で全体を確認すると受け取った直後に、ストーンは挨拶をし損ねたラング、セロン、ヨーと握手をし直した様子も確認できます。

* itvのYouTubeチャンネル参照

『ゴジラ-1.0』がアジア圏初の視覚効果賞受賞

ゴジラ 山崎貴監督 アカデミー賞視覚効果賞
Robert Gauthier

日本に初めて 視覚効果賞をもたらした『ゴジラ-1.0』。中間チェックを省き、監督が直接現場のクリエイターたちとやりとりしていくワークフローや、装置不足を補う創意工夫で圧倒的低予算で見事な映像を生み出したことが評価された様子。

世界から注目されたことで、予算の大きな作品構想が監督のもとに押し寄せるのは必至。不必要な予算削減をすることなく、より優れた作品をつくる機会が増えることが期待されています。

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山崎貴監督のメッセージ「『オッペンハイマー』のアンサー作品を」

山崎貴 takashi yamazaki ゴジラ
Michael Buckner

山崎貴監督には授賞式後の記者会見で、同じく第二次世界大戦と核を背景にした『オッペンハイマー』と比較する質問が寄せられました。

そのひとつに対し、「個人的な思いとしては、いつか『オッペンハイマー』のアンサーになる作品を日本人としてつくらなければいけないと思っている」と回答*。破壊兵器と戦争を連合国側から見た作品に対して、日本からはどんな視点を提示できるのか? 今後の作品づくりに期待が持てます。

*オスカー公式YouTube参照

『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー、原爆について触れる

キリアン・マーフィー「オッペンハイマー」主演男優賞受賞
Myung J. Chun//Getty Images

「アジア系を無視した」と疑惑の対象となったロバート・ダウニー・Jr.やエマ・ストーンと異なり、たっぷり時間をかけてひとりひとり丁寧にあいさつする姿に好感がもてたキリアン・マーフィー。

「アイルランド人として、ここに立てていることを誇りに思います」と語ると、「私たちは原爆の開発者の物語をつくりました。私たちはオッペンハイマーの世界に生きています。和平を構築する人々にこの賞を捧げます」と続けました。

この映画のプロデューサーのひとりであるジェームズ・ウッズは、「野蛮人(savages)を皆殺しにしろ。ハマスの野蛮人とハマス支持者を豚の残りかすと一緒に埋めてしまえ」というひどい発言をXに投稿したことで、世界中から非難を浴びました。

これに対する一種、異を唱えたとも捉えられます。

ガザ停戦へのメッセージ

96th annual oscars arrivals
WWD//Getty Images

『哀れなるものたち』で助演男優賞候補となったマーク・ラファロはじめ多くのセレブリティが、赤いピンバッジを着けて登場。これはガザ停戦を訴えるもの。

国際長編映画賞を受賞した『関心領域』のジョナサン・グレイザー(自身もユダヤ系)は受賞スピーチ*で、「本作は人間性の喪失が最悪の場合、どのような事態を招くのかを描いています。それは私たちの過去と現在の全てにつながっているのです」と語り、「10月7日のイスラエルにおける犠牲者の方々であろうと、今もガザで続く攻撃の犠牲者の方々であろうと、(互いが)人間性を奪い去る行為によって犠牲者が出しているのです。私たちはこれに、どう抵抗すればいいのでしょうか…」と問いかけました。

そんななかアカデミー賞は、少なくとも授賞式開催日が終わるまでに、反戦の意を示した『関心領域』のジョナサン・グレイザーのスピーチ、そして記者会見の様子も公式YouTubeチャンネルには投稿されることはありませんでした。

*BBC記事引用

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『君たちはどう生きるか』宮崎駿監督不在のまま受賞

アカデミー賞2024 長編アニメーション映画賞 君たちはどう生きるか
Handout//Getty Images

『千と千尋の神隠し』以来21年ぶりにアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得した宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は、監督もプロデューサーも不在のまま受賞。しかしプレゼンターであるアニヤ=テイラー・ジョイとクリス・ヘムズワースが代理で受け取り、舞台裏でもカメラにむかってしっかり受賞を再確認。

スパイダーマンアクロススパイダーバース』に受賞の期待をかけていた人々は、「賞を盗まれた!」「授賞式にもこないのに!」とSNSで声をあげたものの、英語コメントでも「受賞は当然」と冷静な意見が同様に多出していました。

21年前、イラク戦争開戦したそのときもアカデミー賞出席を拒否した宮崎駿監督。2024年何が起こっているのか考えれば、不在は当然かもしれません。

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