人気復活に苦戦してきた「ターミネーター」シリーズに、新たなリブート版が登場します。2019年5月23日(米国時間)に公開された『ターミネーター:ニュー・フェイト』の予告編は、このシリーズの将来への展望を示すものと言えるでしょう。
しかし、その内容はかなり混乱を招くものであり、また、2017年の陰うつなスーパーヒーロー・ロードムービー『LOGAN/ローガン』を彷彿とさせるのです…。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』は『ターミネーター2』の直接的な続編になります。よって、すでに公開されている以降のシリーズ作品は、(ありがたいことに)シリーズの公式作品とは言えなくなるでしょう。ジェームズ・キャメロンもプロデューサーとして復帰するので(これは『ターミネーター2』以来、初めてである)、本作は正真正銘の「ターミネーター」シリーズ3作目として扱われるというわけです。
1991年に公開された『ターミネーター2』は、1995年の世界を舞台にしていました。ですが、『ターミネーター:ニュー・フェイト』では、この27年後の世界が描かれています。つまり、2020年代の物語になるということになります。
またサラ・コナーも復帰し、アーノルド・シュワルツェネッガーもT-800(『ターミネーター2』では、溶鉱炉に沈んで消滅したシーンが象徴的です)としてカムバックをはたします。さらに、人類の根絶に総力をあげるコンピューターシステムである「スカイネット(ジョン・コナーによって過去に遡って破壊されたはずでした)」も復活するようです。
「このような物語設定で、どのように整合性をとるのか?」については、誰もが疑問を抱くことでしょう…。新たな予告編を見ながら、その重要なヒントを探りましょう。
舞台はメキシコなのか?
米国の国境沿いでの苦闘は、2017年の『LOGAN/ローガン』の中心的なテーマでした。スマッシュヒットした『デッドプール』の監督を務めるなど、「X-MEN」シリーズとの関係が深いティム・ミラー監督が手がける『ターミネーター:ニュー・フェイト』もまた、メキシコの移民危機に照準を合わせているように思えます。
この予告編は、「BIENVENIDOS A LA CUIDAD DE MEXICO(メキシコの街へようこそ)」という道路標識が映るシーンから始まり、後半には移民らしき集団が移動する列車の上に座っているようなシーンもあります。
「ターミネーター」シリーズは、ロサンゼルスを舞台にした素晴らしいシリーズの1つです。ですがこの映画に関しては、主たる物語は道中(あるいは列車上)で起こるロードムービーのようにも見えます。
予告編に映る一団は、カリフォルニアからメキシコへ向かうことになるのでしょうか? そしてこれは、人類が将来生き残るための鍵を握る人物を守るための試みなのでしょうか?
新キャスト & おなじみのストーリー
「ターミネーター」シリーズと言えば、強力なロボットを中心に展開する、追いつ追われつのストーリーで構成されがちです。その点においては、この『ターミネーター:ニュー・フェイト』も同じになります。本作では、新たな重要キャラクターが2人登場し、1人はマッケンジー・デイヴィス演じるハイブリッド・サイボーグ(改造人間)、もう1人はナタリー・レジェス演じるダニ・ラモスというキャラクターです。
コロンビア人女優のレジェスが、「ターミネーター」シリーズとメキシコ国境の新たな結びつきを示す存在であることは十分に考えられます。予告編を見る限り、マッケンジー・デイヴィス演じるサイボーグは、『ターミネーター2』のアーノルド・シュワルツェネッガーのような役どころで、人間であるダニ・ラモスを守っています。また、今回ガブリエル・ルナが演じる新たなターミネーターは、明らかに彼らに襲いかかろうとしています。
進化したサイボーグが近い将来、「スカイネット」の脅威になるであろう理由は理解できます。しかし、ジョン・コナーとサラ・コナー、カイル・リースの時代を超えた物語において、「メキシコ国境の若い女性がどのような役割をはたすことになるのか?」は、はっきりしていません。
「ダニ・ラモスに何らかの家族的つながりがあり、それが将来のカイル・リースの存在を左右することになる」という可能性はあるのか? これもまた、この予告編でははっきりしません。
新ターミネーターは「ほとんど人間」
この予告編の中でサラ・コナーは、「あなたのようなのは見たことがないわ。ほとんど人間ね」と言い、マッケンジー・デイヴィスは「私は人間よ」と反応します。人間という概念、そして人間であることの真の意味は、「ターミネーター」における大きな焦点であり、プロデューサーのジェームズ・キャメロンが自らのキャリア全体を通じて模索してきたことでもあります。
サラ・コナーがそれまでに多くロボット(あるいはターミネーター)を「見てきた」とすれば、『ターミネーター2』以降の人類の未来はどのようなものだったのでしょうか?
『ターミネーター2』のラストを思い出してください。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800が、「人間がなぜ泣くか分かった」という名言を残して、自ら溶鉱炉に降りていく理由は、「スカイネット」にターミネーターをつくるための技術を入手させないためのものだったはずです。しかし、この予告編に登場するハイテクロボットたちを見る限り、その望みははたされていなかったようです。「スカイネット」自体も、本作で展開している時代において稼働していることは間違いありませんし…。それとも、人類に競合するほど進化したサイボーグを製造することのできる他のロボット企業が現れたのでしょうか…。
年を取ったT-800
我々の知る限り、ターミネーターは年を取りません。ですが、この予告編に登場する年老いたアーノルド・シュワルツェネッガーは、この認識に反しているようにも見えます。
『ターミネーター2』の中で、このキャラクターは消滅しました。ですが未来におて、このT-800が何体製造されたかについてはわかっていません。T-800が再びこの時代に送り込まれたとすれば、アーノルドがこの2022年のタイムラインに存在する理由も説明できるかもしれません。
しかし、彼が年を取っているのはなぜでしょうか?
このことはスカイネットの技術が人類と融合し、我々と同じように時間とともに成長するアンドロイドが誕生したことを意味するのでしょうか? この疑問は、マッケンジー・デイヴィス演じるキャラクターをめぐる、「人間とは何か?」というテーマにもつながるかもしれません。
そんな『ターミネーター:ニュー・フェイト』 は、2019年11月日本公開予定です。
From Esquire US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。