2019年に公開された大ヒット作映画『ジョーカー』。貧しくも野心的なピエロのアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)が、悪役ジョーカーへと変貌していくこの物語は、アワードシーズンで快進撃を続けました。

この作品が愛される大きな理由には、ホアキン・フェニックスの存在があります。

素晴らしい演技でアワードシーズンを席巻したフェニックスは、アカデミー賞前哨戦のひとつであるゴールデングローブ賞(映画部門)の主演男優賞をはじめとする多くの賞を受賞し、さらにアカデミー賞での主演男優賞を受賞しました。

最近では、どんな一流のサイコスリラー映画でも個性あふれるメソッド演技(役柄の内面に注目し、感情を追体験する演技)のアプローチなしでは、主演男優賞を受賞することはできません。フェニックスの場合も、ジャレッド・レトがジョーカーの役づくりで行った、クレイジーなメソッド演技法に匹敵するようなエピソードこそないものの、この絶賛された役のために肉体的そして精神的な変貌を遂げていました。 

極端な減量

フェニックスは、「ジョーカー役のために約24kg体重を落とした」と言い、このプロセスが役に生気(せいき)を与えたことを示唆しています。

ヴェネティア国際映画祭で『ジョーカー』が公開されたとき、フェニックスは「ハリウッド・レポーター」誌の取材に「最初は体重を落とすことから始めました。本格的に体重を落とし始めると、心理的にも影響があることがわかりました。一定期間で一気に体重を落とすと、精神面で変化がおきました」と語りました。

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(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics.

それからおよそ1カ月後、フェニックスは「深夜トーク番組めぐり(プロモーション活動の中でも彼のお気に入りの1つです)」の一環で、『ジミー・キンメル・ライブ!』に出演しました。その際に、短期間で大幅に体重を落とすことについて、 「最初は本当に消耗しました。階段を上がるだけでも30秒くらいかかるんです。『できる! 絶対にできるはずだ!』と、自分に言い聞かせなければなりません」と、フェニックスは語りました。

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Joaquin Phoenix on Playing Joker + Exclusive Outtake
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その後、目標体重に達したフェニックスは、「活力や高揚感を感じ始めた」と言っています。ジョーカー役に生気を与えるために、自らの空腹や新たな体の動かし方を利用したわけです。

とは言え、フェニックスは「ニューヨーク・タイムズ」紙の取材に、「こんな生き方はとんでもない」とも語っています。 

高笑い

フェニックス演じるジョーカーについて、おそらく何より注目すべきことは、その身の毛もよだつような高笑いです。

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彼はイタリアの「イル・ヴェネルディ」誌のインタビューの中で、情動調節障害(不適切で制御不能な笑いを特徴とする障害)を患う患者の動画を参考にしたことを明かしています。そして、「ハリウッド・レポーター」紙による『ジョーカー』のあらすじによれば、フレック自身もこの障害を患っていることが明らかになっています。

ジョーカーは、フレックから出てこようとしている彼の人格の一部だと思います。そしてこの発想は、彼の高笑いの見方として、さらに興味をそそるものではないでしょうか。ですが当初、正直言って自分がうまく演じられる自信はありませんでした。一人で練習してから、事前にトッド・フィリップス監督に見てもらったんです。本番撮影時には、人前で即座にできる必要があると感じていましたから…。で、うまくできるようになるまでには、かなりの時間がかかりましたよ」と、フェニックスは語っています。

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映画『ジョーカー』本予告【HD】2019年10月4日(金)公開
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当然ながら、フェニックスが最終的に選んだのは、ジャレッド・レト(『スーサイド・スクワッド』でジョーカー役を演じる)よりも故ヒース・レジャー(『ダークナイト』でジョーカー役を演じる)のジョーカーに近い笑い方でした。とは言え、フェニックスは今も「この笑い方に満足できたわけではない」と話しています。

彼はエンタメ情報サイト「ETオンライン」の取材に、「理由はそれぞれですが、うまくできたと感じるシーンもあれば、苦戦したと思うシーンもありました。ときには、ワンテイクで撮れたこともありましたし、そうでない場合もありました」とコメントしています。  

ジョーカーを演じるメソッド演技について

フェニックスはジョーカーのキャラクターについて、「撮影開始から数週間のジョーカーは、撮影終盤の彼とはまったく異なっていました。彼は進化し続けていたのです。こんな経験は今までにありませんでした。私たちがより予測不能で自由に描くことで、ますます面白いキャラクターになっていったのです」と語っていました。

とは言え、これは少なくともフェニックスが『ジョーカー』の制作で記憶していたことであり、共演したキャストや撮影クルーたちの印象はまた違っていました。

撮影監督のローレンス・シャーによれば、ジョーカーの強烈な高笑いのシーンを撮影した後、フィリップス監督がこのテイクについてフェニックスに、「最高だ!」と伝えると、彼は突然その場から出て行ってしまったとのことです。

シャーによれば、フィリップス監督は「演技が良かったと、彼に伝えるべきではなかったのかもしれない」と後悔していたということです。シャーは「ビジネス・インサイダー」紙の取材に、「あの数週間は強烈でした」と振り返っています。

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賞レースで快進撃を続けた『ジョーカー』を観る限り、フェニックスやフィリップス監督、そして製作チームが行ったことは、どれもうまくいったようです。これはフェニックスが撮影現場で定めた、1つのルールのおかげだったのかもしれません。それはは…、『ジョーカー』でフレックの上司を演じたジョシュ・パイスによればフェニックスはフィリップス監督に対し、「誰をキャスティングしようと気にしないが、最高の俳優だけを集めてくれ」と伝えていたそうです。

その結果、名優ロバート・デ・ニーロが本作のキーパーソンの一人である、番組司会者のマーレイを演じたというわけです。

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Source /Esquire UK
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。