セレブは私たちとはちょっと違います。ブラッド・ピットは離婚して陶芸を始めたところまでは私たちに近いかもしれませんが、もうすぐ60歳で腹筋は8つに割れています。キアヌ・リーブスはいつもの彼のままです。レオナルド・ディカプリオはヨットの上やスイス・ダボスで過ごしたり、大みそかから年始の休暇には23歳年下の恋人カミラ・モローンとカリブ海の高級リゾート地セント・バーツ島でゆっくりと実に優雅にのんびりしていました。ラッパーのドレイクは、眉毛に剃り込みを入れていますが、現在は34歳です。ハリー・スタイルズに関しては、なにせフレアパンツが似合います。

 彼らはもはや、異なる人種のように、私たちの日常では考えられないことを平然とやってのけるのです。彼らの過去の自分自身は、お金やスイートルーム、高価な歯科治療、新しい靴、高級レストランへの予約などなどのさまざまな特権によって、すべて洗い流されてしまったのでしょう。

 しかし、その中でも例外が存在します。それがベン・アフレックです。

ベン・アフレック
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ベン・アフレック
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 コロナ禍の夏、秋、冬の間に、ロサンゼルスの熱い太陽の下で、まるでサミュエル・ベケット(『ゴドーを待ちながら』を代表に、不条理演劇を代表する劇作家)の現代版の芝居とも言える物語が繰り広げられました。

 ある日、ある男性(『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と面白画像で有名なベン・アフレック)がある女性(『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』と『ブレードランナー 2049』のアナ・デ・アルマス)と恋に落ちました。2人は犬を散歩させたり、彼はひげを生やし、彼女は彼のすべての冗談に大笑いしていました。一緒にアイスコーヒーを飲んだり、ドーナツショップに並ぶカップル。

 すべてが美しく、誰も傷つくことなどなさそうでした。かつて疲れ果てて物思いにふけり、背中に巨大な不死鳥のタトゥーを入れ、灰色の地平線を見つめていた、数年前の悲しいベン・アフレックは、過去の記憶となったのです。彼は新しいひげを生やした新しい男性に生まれ変わったのです。そして、すべては順調に思われていました…。

ベン・アフレックとアナ・デ・アルマス
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 しかし、この度ベンとアナが別れたことが発表されました。原因は不明です。破局報道後すぐに、彼女の等身大ボードが彼の家の外のゴミ箱に捨てらいるのも目撃されています。スーパーに2人で出かけることは、もうありません。アイスコーヒーの注文は、2人分ではなく1人分になりました。犬はどちらが飼うのでしょう? 週末には、ベンが約103個のアマゾンの小包みと格闘しているところが撮影され、ダンキンドーナツのカップをアマゾンのパーケージの上に不安定に乗せたまま、無精髭の顔にニヤリとした表情を見せました。別れは常に辛いものですが、誰もがゴシップサイトでその様子に注目しているときには、尚更です。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
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 オスカーを受賞し、数十億円相当の資産があるにもかかわらず、ダサいジーンズを履き、タバコを吸っていて、ひどいタトゥーをしているベン・アフレックは、唯一親近感の持てるセレブです。レッドカーペットもプレミアも艶やかなパパラッチの機会もないため、彼はある意味、ストリート版アンチヒーローとなってしまいました。ホールフーズの駐車場と郊外の舗道を、古いアディダス「SAMBA(サンバ)」を履き、苦々しい表情をしながら歩いています。 お金と名声の輝きは、ロサンゼルス・カラバサスの地のコンクリートに溶けていきます。

 この12カ月間で物事は悪い状態から“まだ終わらないの?”という状態になってしまったので、もうできることとして残っているのは、ベン・アフレックのように服の着方を忘れて、Amazonで買いすぎて、そこそこの味のコーヒーを飲みにちょっとした散歩に出かけるだけです。ベン・アフレックはその王様です。哀愁漂う、果てしない散歩の王様なのです。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。