DCコミックスは2021年10月11日、グラフィックノベル『スーパーマン』の最新号で主人公ジョン・ケントがバイセクシュアル(両性愛者)であることが描かれることが明らかとなりました。

◇新スーパーマン、ジョン・ケントの両親は?

ジョンは元祖スーパーマンのクラーク・ケントを父に、記者ロイス・レインを母に持つ半分人間で半分クリプトン人の息子であるわけです。ジョンは、父と同じく記者と恋に落ちたわけですが、その相手は女性ではなく男性の新人記者のジェイ・ナカムラでした。そして、日系人(アジア系)の恋人であるところも注目に値するでしょう。

◇日系人記者ジェイ・ナカムラとの関係性

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ジョンとジェイは、2021年8月発売のコミックですでに親交を深めていた間柄でしたが、来月(2021年11月9日米国時間)出版される最新号では、「キスを交わす」という表象がなされています。そして新スーパーマンを、「バイセクシュアル(両性愛者)」として描写。作者のトム・テイラー氏は、「今日からコミック界最強のスーパーヒーローに、自分の姿を重ね合わせられる人が増えることでしょう」とコメントしています。

私はいつも、『誰しもがヒーローを必要としている』と発言してきました。そして、誰もがヒーローであり、ヒーローに自分自身を投影する権利があると思っています。私はDCコミックとワーナー・ブラザースがこの考えを共有し、理解を示してくれたことにとても感謝しています」と、テイラー氏は続けます。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

スーパーマンの象徴(理念)は、常に希望・真実・正義を表しています。今日、そのシンボルはより力強くなりました。より多くの人々が、コミックの中で最も強力なスーパーヒーローに自分自身の姿を見ることができるはずです」。

◇米国保守層は猛反発

予想通り、こういった発表の後には特に保守層の間では動揺が広がるでしょう。ですが、反発する多くの人はカミングアウトしたのは息子ジョン・ケントのではなく、元祖スーパーマンのクラーク・ケントだと勘違いしていたわけです。事実を調べずに、とにかく誹謗中傷に乗っかる人ばかり…といった構造なのです。

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そうした不甲斐ない代表格の一人が、米国アリゾナ選出のウェンディー・ロジャーズ上院議員(キリスト教福音派)が投稿したツイート(削除済み)から見て取れます。

ロジャーズ上院議員はクラーク・ケントの妻ロイス・レインの名を持ち出して、「スーパーマンが愛しているのはロイス・レイン(Lois Lane)です」と投稿しようとしたのでしょう。しかし、女性名ロイス(Lois)のつづりを間違って男性名にし、「スーパーマンが愛しているのはルイス・レイン(Louis Lane)です」と投稿。皮肉にも、スーパーマンの同性愛を支持してしまったワケです。

描かれてこなかった現実を描いているだけ

アメリカン・コミックの世界では、多様性を受け入れる作品が増えています。多様性と言う、ありふれたな言葉と使用するよりも、描かれてこなかった現実を描き始めていると言ったっほうが正しいのかもしれません。

マーベルコミックでは、「キャプテン・アメリカ」シリーズ初となる同性愛者の主人公も発表され、DCコミックスの「アクアマン」には黒人で同性愛者のスーパーヒーローも登場しています。さらには「バットマン」の最新シリーズに登場する相棒のロビンは、バイセクシュアルであることをカミングアウトしているのです。

ハリウッドでは1960年代頃まで
「異人種間の恋愛」を禁止する
ヘイズ・コードがあった

かつてハリウッド映画では、1934年から名目上1968年まで異人種間混交、特に白人と黒人が性的関係を結ぶ表現をを禁止する「ヘイズ・コード(Hays Code)」が存在していました。つまるところ、アジア系やヒスパニックは問題外とも言えるのです。

2021年現在では、この異人種間の恋愛を不快に思う人は、世界的に見ても少ない傾向にあると言えるでしょう。その意味さえ理解できないで驚く、若い世代の人もいるかもしれません。

しかし現実の世界でも、アメリカは1967年夏の時点で異人種間結婚を禁じる「異人種間混交禁止法」をいまだ撤廃していない州は、合計16州にのぼっています。

2021年現在のアメリカでは、「黒人と白人の結婚」は国民のほとんどの総意として支持されている傾向にあります。調査会社の「ギャラップ」が、2021年9月10日に発表した調査結果によれば、「異人種間結婚を認めると答えたアメリカ人の割合は、過去最高の94%になっている」と伝えています。

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Courtesy of GALLUP

LGBTQ+は他人事ではない

異人種間結婚を禁じる法律があったことが信じられないように、同性婚ができない社会は少しづつ変わっていくことでしょう。

こうした保守層を中心に批判する人たちは、人種差別や性的マイノリティーに関して自分がいつでも当事者になる得ることを想像すらしていないのです。大切な家族や友人、子を持つ親であれば愛する子どもがLGBTQ+である可能性または、なる可能性があることに対して完全には否定できないのですから。

大切な人が、より生きやすい環境を提供するためにも、この(最近よく聞く)多様性という言葉を支持しなければいけないと思うのです。