『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観るべき7つの理由

　物語の舞台は1969年のLA、ハリウッドがちょうどTVドラマから映画へとシフトしていった過渡期。

　レオナルド・ディカプリオ演じるリック・ダルトンは、人気のピークを過ぎたTVドラマ俳優で、時代に合わせて映画界へとステップアップしたいがうまくいかず焦りを感じていました。

　そしてリックの付き人であり、スタントマンとして長年一緒に歩んできたブラッド・ピット演じるクリフ・ブースは、リックをつねに落ち着いて支える相棒…。

　そんなリックの家の隣にある日、映画界の寵児となったロマン・ポランスキー監督（ラファル・ザビエルチャ）と、その妻で新進女優のシャロン・テート（マーゴット・ロビー）が越してきて…というのが物語の序盤です。

　半世紀前の話ではあるものの、今作の根幹にあるのは、満たされない夢や憧れ、将来への焦り、温かい友情といった誰もが経験するタイムレスな事象の数々です。

　そのため、時代は違えど多くの人に訴えかける魅力があり、大人こそ観ておきたい作品となっているのです。

　変わりゆくハリウッドで必死にもがく俳優リックと、彼をそっと支えるスタントマンのクリフ。2人はやがて凄惨な事件に直面するのでした…。

　そしてこの物語に、不穏な緊張感をもたらすのが、1960年代を…そしてハリウッド黄金時代を終わらせたとも形容される「シャロン・テート殺人事件」です。

　今作を観るにあたり、この実在の事件を知っているのと知らないのとでは実に大きな差が生じるので、知らない人はせめて概要だけでも予習しておくのが◎でしょう。

　このおぞましい本当にあった事件について、タランティーノ監督は、「マンソンがあの少女・少年たちをどうコントロールしていたのか、理解を超えています…真に理解できないからこそ、僕らはあの事件に引き込まれるんだと思うのです」と語っており、今作ではこの事件についての監督なりの想いが込められているのでした。

　今作における“希望の光”のような存在であるシャロン・テートを演じたのは、シャネルの広告塔にもなった実力派女優マーゴット・ロビーです。

　2019年5月、カンヌ国際映画祭で上映された『ワンハリ』。

　上映後には何百人もの観客から6分間にわたるスタンディングオベーションがおくられ、レオ様とブラピが目を潤ませたこともニュースになりました。

　『タイム』『NYタイムズ』『ガーディアン』といった各国メディアも、「この作品がこんなに感動的だとは予想外だった」「ショッキングで強く心をとらえ、撮影も見事」などと高く評価しています。

　2019年7月末に公開されたアメリカでは、4035万ドル（約42億円）のオープニング興行収入を記録。タランティーノ監督最高のオープニング成績を樹立したのでした。

　世界的にも大ヒット中で、現在までに世界で約1億8000万ドル（約190億円）を叩き出しており、世間の期待度と人気の高さがここに示されました。監督が所有するLAの映画館「ニュー・ビバリー・シネマ」でも、連日満席が続いているようです。

　写真は、カンヌ国際映画祭でのブラピ＆レオ様。この2人が同じ画面内にいるというだけでもスゴいことです。

　日本にも多くのファンが存在する青春ドラマ、『ビバリーヒルズ高校／青春白書』のディラン役で知られるルーク・ペリー。この作品は、2019年3月に脳卒中のため逝去した彼の遺作とも言えるのです。

　ハリウッドでは未だに「TVドラマ俳優」と「映画俳優」では区別され、ある種のヒエラルキーが存在しています。が、TVスターが名監督の映画に出演するなど非常に稀なのです（HBOやNetflixの世界的ヒットで、その流れは変わりつつありますが…）。

　そんなルークの起用にファンが喜んでいた中、なんとも切なく心苦しい巡り合わせとなったわけです…。

　さて、ルークの役柄と言いますと…、スコット・ランサー。スコット・ランサーは、テレビシリーズ『Lancer（原題）』で俳優ウェイン・マウンダー（Wayne Maunder）が演じたキャラクターです。

　実話をもとにした今作の中でルーク・ペリーが演じたのは、テレビの中の架空の人物ということに。タランティーノらしいツイストを効かせた粋な計らいです。

　ちなみに、ルークと共演したブラピとレオ様は、撮影現場でルークと会ったときの感動について、『エスクァイア』US版との共同インタビューで語っています。 　

　ブラッドがまだ10代だったころ、ルークはドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』で大ブレイク中でした。当時、ルークの姿を見るために、撮影スタジオを訪れたこともあるというブラッドは、ルークを発見した瞬間に「見ろよ、ルーク・ペリーだ！ 」と思わず大興奮でレオ様に叫んでしまったそうです。

　レオもルークの大ファンで、ルーク・ペリーが2019年3月に急逝した際には、早すぎる死を悲しむ追悼メッセージをおくっています。

　生粋の映画マニア＆サブカル博士で、多彩な要素を作品に取り入れることでも知られるタランティーノ監督。

　今作では、映画やTVドラマ、ラジオ、懐メロ、インテリア、カラフルなファッションにレトロなクルマやロケーションなど、当時のポップカルチャー要素が見事なディテールでキラキラ＆ギラギラと観客の脳を刺激してくれます。

　この膨大なリサーチの結晶と、ハリウッドやエンタメ業界へのあふれんばかりのリスペクトは、一度では楽しみきれないほど濃密です。　

　つまり『ワンハリ』は、彼が幼少期を過ごした1960年代LAへの愛とノスタルジーがギュッと詰まったパーソナルな回想録であると同時に、古きよきハリウッドへ宛てたアツ～いラブレターでもあるようです。タイトルをはじめ、全編に見られるオマージュや元ネタを推理するのも醍醐味と言えるでしょう。監督お得意のバイオレンス描写も（!?!?!?）盛り込まれているので…、タランティーノファンは期待しておいてください。

　写真は撮影中のひとコマ。どのシーンにもタランティーノ節が炸裂しています。

　カンヌで上映される前、実はこんなネタバレ禁止令をアナウンスしていた監督。

私は映画を愛しています。皆さんも映画を愛していますよね。初めて映画を観ること、それは未知の物語への旅なのです。皆さんに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観ていただけることに興奮しています。

スタッフ、キャストともにまったく独自の新しいものをつくり上げるため、大変苦労しました。そのため、本日皆さんがご覧になるようなカタチで、何も事前に明かされることなく、これから観る方々にもこの映画を楽しんでいただきたいと思っています。

感謝を込めて。
　
クエンティン・タランティーノ

　つまり、これは何を意味するのか…？　

　タランティーノ渾身のクライマックスを、どうか劇場で自分の目で確かめてみてください。観賞後は、一緒に観た人と語り尽くしたくなるはずですよ。※中には、映画を観たあとには語り合いたくない方もいるので、お気をつけください…。

click☛『『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に登場！ブルース・リーの知られざる実話』

　
click☛『ディカプリオとブラピが共演！『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告編に見える5つの注目点』

　
click☛『マーゴット・ロビー、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』での役は監督へのファンレターで獲得』