※本記事は、「エスクァイア」UKのスタイルディレクターであるチャーリー・ティーズデール(Charlie Teasdale)の「Watches & Wonders 2023」現地取材による寄稿です。

カルティエ(Cartier)」の時計は、私にとって唯一無二の存在。「右に出るものはいない」と言っていいでしょう――。

スイス・ジュネーブで行われる世界最大の宝飾と時計の見本市として知られる「Watches & Wonders(ウォッチズ&ワンダーズ )」。1991年から毎年1月に開催されていたSIHH(ジュネーヴサロン=国際高級時計見本市)と呼ばれた見本市が前身です。このSIHHが2020年に、それまで世界最大の時計見本市と言われていた(100年超の歴史を持つ)「バーゼルワールド」が事実上廃止となった同年に改称し、2021年から「ウォッチズ&ワンダーズ」として開催されるようになりました。

そんな世界中の時計ファンが注目する「ウォッチズ&ワンダーズ」のオープニングステージは、業界屈指のブランドたちが誰もが唸るほどの目玉商品を用意され、最高峰の話題性で競い合う一種のトーナメントのような様相を呈しています。

2013年3月27日(月)~4月2日(日)の期間で開催された今回の「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2023」では、事前にチューダー(TUDOR)の37mmスティールモデル「ブラックベイ 54」や、パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)の「カラトラバ Ref.6007G」(この展示会の初期の頃のトレンドであった3色展開)などが登場することが噂となり、多くの人々が期待に胸を膨らませていました。

そのうちの一人でのある私がカルティエのブースを訪れてみると、そのトーナメントの勝敗の行方を明らかになってきました。それはもう、グラストンベリーフェス(イングランドで1970年から行われている大規模野外フェス)の最終日の大トリを飾るレジェンドミュージシャンのようなオーラを放っていました。このジュエラー/ウォッチメゾンは、エレガンスさに品質、芸術性、時代を超えたスタイルを豊富に提示し、全く別の次元に存在しているかようでした。

最新モデル「タンク ノルマル」の魅力

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Ryan Hopkinson © Cartier

このメゾンにおける伝説のタイムピースに焦点を当て、個別番号の入った限定品として製作されるカルティエ プリヴェ(CARTIER PRIVÉ)コレクション。その最新モデルである「タンク ノルマル(Tank Normale)」は、このメゾンのアーカイブの中で最も重要なシリーズであり、アイコニックな作品にアレンジを加えて限定生産されたものです。

そのモチーフとなった「タンク ノルマル」は、1917年に発表された間違いなくカルティエによって最も有名なデザインのひとつです。そんなオリジナルウォッチに敬意を表し、今回、同じプロポーションと面取りが施されながらサファイアクリスタル製ガラスを備えた7作目「タンク ノルマル」が7種類ラインナップされました。

この新しいコレクションは3種のバージョンで用意されています。 ブラウンアリゲーターストラップをつけたイエローゴールドモデルとともに、ブラックアリゲーターストラップをつけたプラチナモデルの2種。さらにこのコレクションでは初となる、イエローゴールド製ブレスレットとプラチナ製ブレスレットの2種類が用意されていました。アリゲーターストラップのモデルに関してはそれぞれシリアルナンバー入りの200個限定で、ブレスレットモデルはそれぞれシリアルナンバー入りで100個限定となります。

加えて、スケルトン仕上げの「タンク ノルマル」もあり、シリアルンバー入りの各50本限定となります。イエローゴールドの本体にブラウンとグリーンのアリゲーターストラップが付け替え可能になっているモデルと、プラチナの本体にグレーとボルドーのアリゲーターストラップに付け替えが可能なモデルがありました。最後に、ケースにブリリアントカットのダイヤモンドがセットされたモデルを見逃してはいけません。シリアルナンバー入りで20本限定となります。2色のブルーの付け替え可能なアリゲーターストラップを合わせ、リューズにもブリリアントカットダイヤモンドがあしらわれています。

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これらの全てのモデルには、オリジナルの「タンク」が擁するデザインコードが忠実に守られています。例えば(スケルトンではない)シンプルな「タンク ノルマル」には、インデックス内側には正確に時間が読み取れるよう長方形型のレイルウェイ・ミニッツトラックが、スケルトンモデルには一見したところでは見づらく、斜めの光にかざしてようやく判読できる「CARTIER」のシークレット・サインが刻まれ施されるなど、カルティエ ウォッチである証が散りばめられています。私が特に惹かれたのは、イエローゴールドやプラチナ製の新しいブレスレットを装着したモデルです。これほどまでクールな時計は、いまだ見たことがありません(まだ初日を終えたばかりですが…)。

crash baignoire カルティエ ベニュワール
Charlie Teasdale
チャーリーの腕に光るカルティエ『ベニュワール(Baignoire)』。

また昨年(2022年)登場した、1960年代の伝説的名作「クラッシュ(Crash)」をモチーフにした「クラッシュ ティグレ」ウォッチの系譜を感じさせる、ダイヤモンドをあしらった『ベニュワール(Baignoire)』も登場していました。

実にカルティエらしいエレガントさを醸すオーバルでキュートなモデルであり、タキシードにはもちろん、Tシャツやジーンズにも似合うものです。いかがですが、この時点で勝敗の行方はあなたにも見えてきませんか?

カルティエ公式サイト

Source / Esquire UK
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。