「SUNSPEL(サンスペル)」は高級下着開発のパイオニアとして、1860年にトーマス=アーサー・ヒル氏によって創立されました。当時から今日まで私たちが知る「サンスペル」と変わらないマインドで、繊細なコットンを使った軽くソフトな服づくりでブランドはスタート。20世紀初頭に、現在の「サンスペル」でもおなじみのシーアイランド・コットンに出合います。

 大恐慌の時代には、シーアイランド・コットン使用の最高級アンダーウエアの生産に集中し、第二次世界大戦で大きな打撃を受けながらもブランドは支えられ続け、1947年にアメリカから持ち帰ったボクサーショーツで新たなる風を英国に吹かせます。シーアイランド・コットンを素材に使用し、快適さを追求したデザインで「サンスペル」のボクサーショーツをつくりあげたのです。このアイテムはのちの1985年に、「リーバイス501」のCMに使用され、「サンスペルの白いボクサーショーツ」は服好きの人たちのお気に入りのアイテムとなります。

 そうして「サンスペル」は、英国を代表する一流ブランドとしての不動の地位を確立していきました。その一方で、英国を代表する最も優雅なスパイをつくり上げた作家のイアン・フレミングは、1953年から「007」そしてジェームズ・ボンドのストーリーを書き始めるのです。イアン・フレミング自身、クラシックで上質な英国スタイルを好む人物で、彼のスタイルは2020年現在にも通用するほど洗練されていました。

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Harry Benson//Getty Images
ジャマイカのセント・メアリー教区にある自宅で、『007 ゴールデンアイ』を随筆中のイアン・フレミング。

 そんなイアン・フレミングが特にお気に入りだったのが、「サンスペル」にとっても重要な素材であるシーアイランド・コットンでした。ジャマイカ滞在中に随筆した「007」シリーズにも、この素材は頻繁に登場しています。

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Mara Vivat//Getty Images
ジャマイカにて撮影された、イアン・フレミングのポートレート。

 「サンスペル」とイアン・フレミング、そしてジェームズ・ボンドの関係を急速に縮めたのは、2006年の映画『007 カジノ・ロワイヤル』で衣装デザイナーを務めたリンディ・ヘミングでした。

 ヘミングはクラシックで流行にとらわれず、仕立ての美しい「サンスペル」のアイテムをさまざまな映画や演劇の衣装に使用してきました。彼女は、ジェームズ・ボンドの新しい顔として抜てきされたダニエル・クレイグが着用するTシャツ、ポロシャツ、アンダーウエアすべてを「サンスペル」でつくれば、完璧な「英国らしさ」を表現できると考えたわけです。

「サンスペル」のtシャツを着たダニエル・クレイグ
『007 カジノ・ロワイヤル』で、「サンスペル」のTシャツを着たダニエル・クレイグ

 そうして、この英国紳士のスパイを通じて数々の共通点を見出した「サンスペル」は、2018年にイアン・フレミングの50年代スタイルにインスピレーションを得たシーアイランド・コットンだけを使用した「イアン・フレミング™コレクション」を発表しました。

 そして当初2020年の公開が予定されていた「007」シリーズ最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に合わせ(2020年11月に予定されていた公開日は、情勢を顧み2021年4月に再延期されました)、「サンスペル」はイアン・フレミングのカプセルコレクションを展開します。

「サンスペル」のイアン・フレミングのカプセルコレクション
SUNSPEL
「サンスペル」のイアン・フレミングのカプセルコレクション
SUNSPEL

 イタリアのウールとカシミアをブレンドしたフランネルスーツは、モダンなフィット感と滑らかな触り心地が特徴です。また、スコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島で伝統ある職人たちが手織りして仕上げた、ツイード生地を使用したチェスターコートもあります。

 さらに厚手のカーディガン、シーズン間に活躍するコットンカシミアのトランジショナルなニット、そしてもちろん、『007 ムーンレイカー』でボンドが着用しているシーアイランド・コットンのシャツもそろっています。

 チャコール、ライトグレー、ブラック、ネイビーなどを基調としたカラーパレットで、上質な仕立てとモダンでシンプルなシルエットに焦点を当てつくられた今回のコレクション。これは最もミニマリストな「ボンドワードローブ」と言えるでしょう。

着心地の良さそうなスーツを着たイアン・フレミング
Getty Images

公式サイト

Source / ESQUIRE UK