この5年ほどの間に、ハワイアンシャツは控えめなアイテムから高級アイテムへと変化し、デザイナーが最も繊細で大胆なビジョンを表現する夏のキャンバスとして好まれるようになりました。

 「プラダ」ではフランケンシュタインのプリント、「ドリス ヴァン ノッテン」ではアントワープにあるデザイナーの庭から摘んだ花の写真、「ディオール」では現代アートの巨匠レイモンド・ペティボンのオリジナル絵画などが登場していました。

 しかし、ワイドパンツやアボカドグリーンのバスルーム、ヨーロッパにおけるポピュリズムの復活などと同様に、トレンドというのはいつかは必然的にその原点へと戻っていくものです。つまり、2021年夏のプリントシャツはレトロなホノルルスタイルとなり、大きくて明るいアニメに出てくるような花や、レッドやイエローの色彩が蔓延することでしょう。

 ここ数年は、アバンギャルドなオープンカラーを追求するハイファッションがメインになっていましたが、今年のハイワイアンシャツはラグジュアリーかつ包括的なハワイ島版アロハスタイルを目にすることになるでしょう。

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Getty Images

 アロハシャツは起源としては、「20年代にハワイに住む日本人女性が、余った着物の生地を使って男性用のシャツをつくり出したことからスタートした」という説が有力です。他にも諸説ありますが、いずれにせよハワイ観光のシンボルとして定着しています。

 そしてこのシャツは、瞬く間にハワイ観光のシンボルとして定着し、楽しい時間を過ごすことが好きな方やお酒を大量に飲み、年に一度は病的なほど日焼けをするようなハワイアンが着るシャツとなりました。

 穏やかな海岸で、カニとカクテルを楽しむ真っ赤に日焼けした人々だけでなく、より多くの方々がこのカラフルなシャツを楽しむことができるよう、この夏多くのデザイナーがハワイにインスピレーションを求めました。

 2020年4月に「カサブランカ」のトップであるシャラフ・タジェルと電話で話したとき、彼はコロナウイルスから身を守るため、そして鮮やかなピンクの夕日と島の風に揺れるヤシの木をモチーフにした2021年夏のコレクションを構想するため、ハワイに滞在していました。

 「サンローラン」ではアンソニー・ヴァカレロが、ランウェイをハワイの島へと移す計画を立てていました。ですがパンデミックの影響で、それは頓挫してしまいました。しかし服のほうは、貝殻のネックレスやハイビスカスのプリントなど、昔ながらのホリデーウェアから多くのアイデアを得ています。

 今シーズンのシャツ(毎回、目玉となるシャツをつくっています)は、シルキーなリヨセル(テンセル)素材を使用した赤、黒、ペールブルー、紫の花柄のユニセックスなアイテムで、パリの高級ファッションハウスのレンズで屈折させた究極のホリデーシャツといったところです。

 パパラッチビジネスが再開されれば、多くの有名人がこの服を着て写真に撮られることでしょう。コレクションのもうひとつのルックでは、黒のショールカラーのスーツジャケットにスクエア型のアビエーターをかけ、そのインナーには花柄のシャツを前開きで合わせているルックがあります。これはちょっと威嚇的でもありますが、肩の力を抜いているようにも見えます…。

「casablanca(カサブランカ)」のハワイにインスピレーションを受けたコレクション。
CASABLANCA
左は、「Casablanca(カサブランカ)」のハワイにインスピレーションを受けたコレクション。右はモノクロのハワイを描いた「サンローラン」 の2021年春夏コレクション。
モノクロのハワイを描いた「サンローラン」 の2021年春夏コレクション。
SAINT LAURENT

 他にも、「YMC」はクラシックなアロハシャツから、楽しげで派手な花柄のデニムジャケットとショートパンツのセットまで、あらゆるアイテムを生み出しています。「ラルフローレン」は、サーフィン、ラウンジ、シュノーケリング、そしてさらにラウンジと、アメリカーナのレジャーを彷彿とさせるシャツを展開しています。

 通常はあからさまなプリントを避け、素材で大胆さを表現するデザイナーである「トム・フォード」でさえ、グラマラスで楽しく、とても70年代らしい長袖のお洒落着用ハワイアンシャツをつくりました。

 このコレクションにはキッチュな花柄がたくさん登場し、バックパックやボクサーパンツ、非常に退廃的なシルクのローブにも取り入れられています。

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Saint Laurent
「サンローラン」のクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロが手掛けた2021年春夏メンズコレクション新作「HAWAIIAN SHIRT(ハワイアンシャツ)」

 デザインの歴史の中では、これは最先端のデザインというわけではありません。ですが2021年の夏は、これまでの(特に)2020年とは大きく異なって、より楽しくよりリラックスした休暇を過ごし、そしてカニを食べ、さらにどこかのプールで病的なほどに日焼けてしまうような(理想の)夏になることを切望している私たちの気持ちを、見事に象徴しているのではないでしょうか。これは非常に、理にかなっているように思えます。

 さあ皆さん、アロハシャツの復活です。そして今年の夏こそ、アロハシャツを眩しい太陽のもとで着こなせる機会がたくさんあることを願いましょう!

Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。