ブラッド・ピットは自身を、「スタイルを持たない人間」だと断言します…。

 「もし僕がスタイルを持っているとするのなら、それは"ノースタイル(スタイルを持たないこと)"ってやつだね」と、電話をした私に対して断言するピット。しかし私(筆者:ジョナサン・エヴァンズ)は、「そうは思いませんよ」と頭の中でつぶやきます。

 『エスクァイア』誌が長年にわたって彼のレッドカーペットや、オフの日のスタイルを定期的に取り上げてきたのには、それなりの理由があります。それは彼が、「真の映画スター」の1人であり"ブラッド・ピットさま"だから…というだけではありません。

 なぜならブラッド・ピットはクラシックなブラックタイでレッドカーペットに登場しようが、カジュアルな服装でカフェでコーヒーを飲んでいようが、彼は自分に合った着こなしを生得(せいとく)的に…生まれた時から持っていた能力や資質のように感じさせるからです(ただしそこで、彼が"ブラッド・ピットさま"であることも大きな助けになっていることは否めないでしょうが…)。

 そこで私はその話に割って入って、私自身の頭の中に浮かんだ見解を伝えようとしました。ですがピットは、続けて自身の「"ノースタイル "のスタイル」という考え方について、さらに語り始めてくれたのです。ですがそのとき、私は気づきました。「私たちの意見は相違しているわけではない」と…。これは単に表現の違いであり、古き良き言葉の壁にぶつかっているだけだと理解できたのです。ピットは次のよう解説してくれました。

 「僕はモノクロームが好きなんだ。でも、制服のように見えないヤツね」と。さらに、「シンプルなものが好きだね。でも、ステッチのディテールや肌触りは重視するかな…。強いて言うなら、それが僕の唯一のこだわりで、選ぶときの基準と言えるね」とピット。

 これを言い換えれば…ピットは、まず第一に外見を気にする多くの男性とは異なり、さまざまなプロダクツのより深いところに存在する何かを読み解くかように見つめ、そこに共感するか否かを選択の基準にしているのだと理解できます。そして、そのアイテム着こなしたとき、自分の生き方…自らの特異性および偏見…いわゆる個性をどう活かしてくれるかに注目していると読み解けます。

 それこそが「生粋のスタイルじゃないか!」と私は思うわけですが、ピット自身はそれを「スタイル」とは呼ばないようです…ただそれだけのこと。

brad pitt
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 「その選択の先は、(それを着こなしたと想定したときに感じる)快適さをどう感じたかによって決まるね」と彼は続けます。「ライカのカメラや、時計が持つ感触が好きなんだ。見た目の派手さは求めてはいない…ただ近くで見るとその良さに気づく、そんなプロダクツが好きなんだ。服で言うなら、裏地の肌触りも重要な要素だね。僕にとって重要なのは、ディテールってことさ。流行ばかりを追いかけていても、それは疲れるだけ。そういう類のものが苦手なんだ。だから僕自身も、『広告塔にはなるべくなりたくない』っていう考えになったというわけさ」と、ピットは深めにコメントしてくれました。

 とは言えピットは、本当に自分が好きなブランドのためには喜んで協力することを私は知っています。なので、今回の電話インタビューを行ったというわけです。そう、このたびピットは、イタリアのコーヒーメーカー「デロンギ」のために、最新キャンペーンの顔として新グローバルアンバサダー契約を結んだばかりです。

 「僕は真剣かつプロフェッショナルにコーヒーと向き合う、献身的なコーヒー愛飲家なのさ」とピット。そしてさらに、「いつも午前中はカプチーノを3杯は飲んで、午後に関しては仕事に応じてエスプレッソに切り替えることもあります」と説明を加えてくれました。私自身、カフェインの過剰摂取で神経が高ぶっている中でピットは、デロンギとの仕事を決めた理由をさらに説明してくれたのです。

 「このようなこと(広告塔や商品の宣伝など)は、実際はあまりしないようにしているんだけど…」と彼は前置きをしたのち、「でも、今回のデロンギの話は違う次元さ。この話に乗ることは、僕の理にかなったことだったんだ。もしあなたがその製品の素晴らしさを実感して、自信を持っておすすめできるのであれば、それを紹介するにあたって無理矢理人に押しつけるようなことしないよね? あなたは、その素晴らしさを自然体で表現できるはずさ。それと同じことさ」とピット。

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 本キャンペーンにおいて展開する新TVCM動画は、デイミアン・チャゼル監督をはじめとするミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2014年公開)を手掛けた才能あふれる制作チームによって製作されました。主演はもちろん新アンバサダーであるブラッド・ピット。彼のリアルな日常を垣間見るようなストーリーになっています。

 朝、バイクに乗ってコーヒー豆を買いに行き、ロサンゼルスの海沿いを颯爽と駆け抜ける壮大な映像、そして自宅に帰り、デロンギの全自動コーヒーマシンで淹れた極上のカプチーノを味わうピットの至福の表情にも注目してください。

 「こんな日は、そう頻繁にはないことだけど…」と言いつつも、ピットはこれを「ちょっとした人生の一コマ」と呼んでいます。そしてそのとおり、彼がこの映像の中で着ているウェアは、スタイリストから支給されたものではありません。普段から彼が愛用するアウターを着こなしています。そしてそのアウターからは、ピットのスタイルセンスが見事に凝縮されていることが感じとれるのです。もちろんモノクロームかつシンプルであり、どこかで見たことがあるような懐かしさまで感じさせてくれるのです。それはピットが、リアルなピットのまま登場しているからです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
ブラッド・ピット主演 デロンギ全自動コーヒーマシン TVCM 「Perfetto 30秒編」
ブラッド・ピット主演 デロンギ全自動コーヒーマシン TVCM 「Perfetto  30秒編」 thumnail
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 それを告げるとピットは、「そうか、あなたも持っているんだね」と私に確認してくれました。

 そして、「あのジャケットは『ロロ・ピアーナ』のもので、カシミア製なんだよね。もし86歳まで生きていられたとして、そのときに虫食いの穴が開いていたとしても、僕はこれを着ていると思うよ。とても高価だったけど、あと30年も着こなせるのならば納得できるものさ。とてもシンプルだし、洗練されている。僕にとって完璧なジャケットなのさ」と加えて説明してくれました。事実、この服はとても着心地がいいです、私にとっても完璧です。

 この台詞は、自分のスタイルの基盤を深く理解している人でしかできない内容ではないでしょうか。そして「スタイルを持たない」と自覚した上で、こんな風に迂回とも言える説明ができるしまうところも、理想のスタイルの持ち主である証明にもなっています。そして最後に、57歳のピットは私にこう説明してくれました。

 「人は年を重ねていけば、だんだん不機嫌になることが多くなるもの…だから、『どれだけ快適か』がより重要になっていくんだ、単純なことさ」と。まさに“Semplice è perfetto”、「シンプルこそ完璧」ということです。

Source / ESQUIRE US
※この翻訳は抄訳です。

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