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GREG WILLIAMS / ESQUIRE

※本記事は、ロサンゼルス在住のジャーナリスト、ヴァレンティーナ・ヴァレンティーニ氏による取材をもとにした寄稿です。

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 エディ・レッドメインは急いでモニターのところへ駆け寄ると、画面に顔を近づけてプレイバックを見つめました。

 目を画面に釘づけにしたまま、首を左右に振り、何事かつぶやいています。画面に映った自分の小さな姿を見ながら、彼は言いました。「この仕事で肝心なのは、本物だと感じられるものにしなければならないということなんだ」。 

 私(筆者)が取材で訪れたのは、AMAZONのオリジナル映画『エアロノーツ』の撮影セットです。この作品は、現代の気象学の基礎を築いたといってもいい二人の男が1862年に行った、それまでの記録を破る一連の熱気球飛行を描いた著書『フォーリング・アップワーズ』に創作を加えたものになります。2019年秋のテルライド映画祭でのプレミア上映された際には、主演のエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが顔をそろえていました。

 二人が共演するのはレッドメインがアカデミー主演男優賞を受賞した、『博士と彼女のセオリー』以来のことです。 

 レッドカーペットの上ではゴージャスそのものだった二人ですが、映画のクライマックスとなるシーンの撮影を行っていた2018年の夏の終わりには、かなり過酷な状況にあったようです。

 科学者のジェームズ・グレイシャーを演じるエディー・レッドメインと、熱気球パイロットのアメリア・レンを演じるジョーンズは、各テイクの前になると氷水の入ったバケツに両手を突っ込んでから、手足がかじかむような寒さのブルーバックルーム(CG用の青いシートの部屋)で熱気球に乗ったシーンの撮影に臨んでいたのです。

 そのブルーバックルームは、高度37000フィート(約11278メートル)の環境を再現するため特別につくられたもので、氷点下ギリギリの温度まで冷やされていました。

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Amazon Prime
ブルーバックルームで撮影された、映画『エアロノーツ』のワンシーン。

 その後、自分のトレーラー(幸い、こちらはもっと暖かい)で休憩中だったジョーンズは元気ハツラツといった感じで、「どうだ!」と言わんばかりに鉄棒で懸垂をやって見せてくれました。ストレッチや懸垂をするために、そこには鉄棒が用意されていたのです。

 「今度の役は体力勝負なのよ」と彼女は言います。「だから、こういうことをやりたかったわけ。(アメリアは)完全に肉体派で飛んだり跳ねたりの…言ってみれば、おてんば娘ね。冒険家でありパイオニアってわけ」。

 『エアロノーツ』でジョーンズが演じている役で注目すべきなのは、彼女の演技ばかりではありません。監督のトム・ハーパーが脚本家のジャック・ソーンと一緒にこの作品の脚本執筆に取りかかったとき、二人はある問題に気がつきました。

 もとになった実話では、熱気球に乗っていたのは年齢も階級も人種も似通った二人の男だったのです。「それだと、キャラクター同士の衝突や関係を描くのに必ずしも相応しいものとは言えなかった」と、『ピーキー・ブラインダーズ』のファースト・シーズンやBBCのミニ・シリーズ『戦争と平和』、『ワイルド・ローズ』などの監督を手がけてきたハーパーは語っています。 

「過去の事実をありのままに描くだけだったら、熱気球に乗るのは白人の男二人だけになってしまうからね」トム・ハーパー監督

 原作となった本に登場する脇役の中に、ソフィー・ブランシャールという19世紀の熱気球パイロットがいて、ハーパーはこの人物に心を奪われたということです。

 「『女性の熱気球パイロットをベースにしたキャラクターがいればいいなぁ』と思ったんだ。女性の熱気球パイロットは何人かいて、その中でも、彼女は特に魅力的だった。過去の事実をありのままに描くだけだったら、熱気球に乗るのは白人の男二人だけになってしまうからね。女性のキャラクターにしたのは、別に、『それだと釣り合いが取れないから男のひとりを女に変える必要がある』ということではなくて、ストーリーを語る上での自然な決定さ。キャラクターを生かすためのね」

 「ぼくらはこれを、『事実をありのままに描いたものだ』と言うつもりはない。そもそも、そうでないことは明らか。フィクションやファンタジーが混じっているからね。最高のストーリーというのは、それらを組み合わせることによって生まれるものなんだ…」 

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Greg Williams
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 去る9月、私はエディ・レッドメインにインタビューを行い、映画の撮影のことや、ジョーンズと再共演することになったいきさつ、熱気球で空を飛んだときのことなど、いろいろな話を聞くことができました。

——バケツの氷水というのは、誰のアイデアだったんですか?
 

エディ・レッドメイン(以下エディ):
あれは、あのシーンの撮影が始まったあとに出てきたんだ。

 メイクをすませてスタジオに入ると、そこがすごく寒いんだ。だけど、その寒さにはすぐに慣れてしまうよ。スタジオの外は夏だから、体の芯から冷えてるわけじゃない。すると、トムが寒さのレベルを上げるアイデアを出してきたんだ。実際、その通りになったよ。ぼくは寒さが体にどのような影響を与えるか調べるようになって、寒さで痛くなる部分と、物理的に動かせなくなる部分の違いを把握したよ。

 やらなければならない動きをやりながら、どこまで手足の寒さに耐えればリアルに見えるかという、奇妙な調査をやっているような感じさ。

 例えば、『どの程度までなら、手にまめができても大丈夫か?』というふうにね。だって、ひどくなり過ぎると、道具やロープを手で持てなくなってしまうからね。そのバランスをとるのに気を遣っていたよ。

——あなたが役のために肉体の限界に挑戦するのは、これが初めてではないわけですが、このキャラクターに関心を持ったのはその点ですか?
 

エディ:おもしろいことに、この物語の中では(エディー演じる)ジェームズもアメリアもそれぞれの極限状態を経験するけれど、より肉体的な極限状態を味わうのはフェリシティが演じるキャラクターのほうなんだ。

 ぼくがこの映画に惹かれたのは、これまでに読んだどんな物語とも違っていたからだね。ここに描かれているのは、ひとつの熱気球に乗った二人の人間…これ自体、興味をそそるものさ。だけど実は、この映画は「奇跡」と、「目を空に向ける」ことの物語なんだ。

 現代は目を下に向けることが多すぎる。何かをのぞき込んだり、モニターをじっと見つめたりして…。未開拓の世界というのは、すごく感動的なものだということがこれでわかったよ。

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——再びフェリシティ・ジョーンズと共演するというのは、どんな感じでしたか? 

エディ:今度の脚本を受け取ったとき、彼らがすでにフェリシティにオファーしていることを聞いていたので、彼女を念頭に置いて本を読んだんだ。

 ぼくがこれまで見てきた彼女の役とは、それは全然違うものだったよ。前回の共演はすごくうまくいったけれど、「はたして2回目もうまくいくのかな?」という、ちょっと複雑な心境だったのは確かだね。

 でもぼくは、彼女を一人の人間として尊敬しているし、彼女はぼくに対して、一人の俳優として戦いを挑んでくるからね。それにぼくらは二人とも、これが大きな賭けであることがわかっていたし…。だからぼくらとしては、全く違うことをやらなければならないし、お互いを違う方向へ持っていくようにしたんだ。自分が尊敬できて、相性のよさそうな方法論を持った人との共演には、何か特別なものを感じるよ。

 実は、今度の映画では、これまで以上に多くの時間をリハーサルに費やしたんだ。

——あなたがホーキング博士を演じたことを考えると、まったく信じられない思いです。

エディ:
フェリシティとぼくとトムとで、小さな撮影ステージにつくられた熱気球のバスケットを使って、リハーサルをやれる時間が2〜3ヵ月あったんだ。

 映画の撮影では、現場に行ったその日に初めてセットを見るということも珍しくないんだけどね。今度の映画の醍醐味は、細部にあるからね。リハーサルをしていたころ、ぼくの妻はまだ妊娠しておらず、フェリシティは結婚を間近に控えていた。2〜3ヵ月のリハーサルをやったのは、そんな時期だったんだ。

 その後フェリシティは結婚し、ぼくには息子のルークが誕生。なので、リハーサルをやったあとで、しばらくオフの時間を過ごしたね。オフを終えて戻ってきたとき、リハーサルでやったことはしっかり体に叩き込んであったけれど、同時に新鮮さも感じたよ。

 ずいぶん長い間リハーサルをやったあとだったので、やる気を新たにして戻ってくることができたんだ。

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——この作品の撮影に入る前に、熱気球に乗ったことはありましたか?

エディ:そういう経験はなかった。きみは乗ったことある?

——ありません。ほとんどの人は乗ったことがないと思います。


エディ:だよね。ぼくもそう思う。今回、気球に乗ることが実にワクワクすることだということがわかったよ。とは言っても、ほとんどの操作はフェリシティがやっていたんだけどね(笑)。

 彼女とトムはドイツまで行って、ガス気球と熱気球の操作を習い、フェリシティはガス気球の操縦法まで習得してきた。その後、こっちに戻ってきてからは、撮影用につくられた熱気球に乗る前にぼくら3人で熱気球に乗り、空を飛んだんだ。熱気球に乗っていくつかのシーンを撮ったけれど、かけがえのない経験だったよ。

 あんなに高いところまで昇っていくと、すべてのことに影響が出てくるんだ。

 スタントに関して言うと、それらのシーンでは、ぼくはただバスケットに乗ってるだけ。上まで昇っていかなければならないのはフェリシティのほう。彼女の勇敢さは恐れ入ったよ。ものすごくたくましい彼女に対して、ぼくのほうはちょっぴり情けなかったね。

——いやいや、そんなことはないでしょう。 

エディ:ところがそうだったのさ。

 ぼくは塩の入った袋を顔にぶつけてばかりいて、ぼくらのシーンの撮影中はすり傷だらけだったけれど、フェリシティに「痛くないの?」って訊くと、彼女は「ちっとも。すごくいい効果が出てるでしょ」って言うんだ。

 「とにかくやるだけよ」って感じの彼女に対して、ぼくのほうは「いてて!」って調子さ。肉体的な部分に関して、今度の映画で彼女に課せられたことはぼくよりもはるかに厳しかったね。

 でも、彼女と再び共演できたことは、本当に素晴らしい経験だった。ぼくはこれまで、本当に信頼できて真剣勝負を挑めるようなダンスパートナーと再び組むような機会が一度もなかったんだ。今回は、いい刺激を受けることができたよ。

——ダンスパートナーというのは、たとえ話ですよね?


エディ:(笑)そうだよ。説明不足だったかな。

——それをお聞きしたのは、下手なダンスに関する台詞があったものですからね(笑)。
 

エディ:ああ、確かに! ダンスのシーンがあったんだ。グレイシャーはダンスがへたくという設定なので、何週間もかけてその準備をしたよ。それでもトムはぼくに、「おまえはダンスがへたくそなんだってことを忘れるな」と、何度も言わなければならなかった。

 だけどね、世の中には下手なダンスもあるけれど、シーンをぶち壊しにするダンスもあるってぼくは思うんだよね(笑)。

Source / Esquire UK
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。