フェイスブックはなおも、世間の厳しい視線にさらされています。フェイスブック社のマーク・ザッカーバーグCEOと同社が、ユーザーデータをいかにいい加減に扱い、プライバシー上の懸念を軽視してきたかについては、次から次へと新たな報告が出されてきました。最近では、同社が習慣的に子どもたちやティーンネイジャーを狙い撃ちにしてきたこともわかってきました。

 この1カ月に出された2つの報告は、フェイスブックが子どもたちからデータやお金を搾取することに一線を引いていなかったことを示唆しています。わずかでも倫理的推論のある企業であれば、この一線は最も明白に守るべきものであるにもかかわらず…にです。 
 
 2008年ごろ、米国中のティーンネイジャーがフェイスブックでプロフィールをつくり始めました。

 彼らはウェブカメラを使ってプロフィール用の写真(当時はまだ「セルフィー」という言葉さえありませんでした)を撮影し、風変わりなフィルターで加工をしては、熱狂的な勢いでクラスメートたちと友達申請を送り合ったものでした。

 そんなティーンネイジャーの1人であった私に言えるのは、情報セキュリティのことなどほとんど気にも留めていなかったということです。

 フェイスブックに対し、「裏切られた」と思うほど、そもそも「信頼」は存在していませんでした。

 それ以前に、「信頼を裏切る」という選択肢があったことさえ知らなかったわけですから…。今日のティーンネイジャーが、自分たちを取り巻くテクノロジーの状況について、より理解していることは間違いありません。例えば2017年のピュー研究所の調査によれば、米国人の51%は「ソーシャルメディアサイトが自分たちのデータを保護しているかは確信がない」と回答しており、大規模なデータ漏えいやプライバシースキャンダルに関する話題は、ひっきりなしに報じられているのが現状です。 

 
 
 
ITニュースサイトの「テッククランチ」は2019年1月29日(米国時間)、フェイスブックがティーンネイジャーや大人に報酬を支払って、端末内のデータに「ほぼ無制限に」アクセスできる「Facebook Research」というVPNアプリをダウンロードさせていたことを報じました。

 あるセキュリティ専門家によれば、このアプリはソーシャルメディア・アプリ上の私的なメッセージやインスタントメッセージアプリでのチャット(やり取りした写真や動画も含む)、Eメール、ウェブ検索、ウェブ閲覧、リアルタイムの位置情報などなど、ありとあらゆるデータから情報を収集することができるということです。
 
 13歳〜35歳のユーザーが、毎月20ドル(約2200円)という手数料を受け取りながらデータを売り渡す、このプログラムに招待されていました。18歳以下の参加者の場合には、保護者の同意が求められ、この契約についてはっきりと説明する次のようなフォームが表示されていました。

 「当プロジェクト固有の性質上、お子様がアプリをご使用になる際に、個人情報が追跡されることをご了承ください。お子さまのご参加には、アプラウズ(Applause)から報酬をお支払いします」(Applauseは、フェイスブックがこのアプリの配布に使用した3つのアプリテストサービスのうちの1つ)とのこと。 
 

 
 どうやらこのiOSの調査アプリによって、フェイスブックはこのようなデータ収集を禁止するアップルのプライバシーポリシーを回避していたようです。

 「テッククランチ」がこの話を報じると、フェイスブックは「このアプリのユーザーのうち未成年者は5%以下」としながら、アップルのシステム上での同アプリの配布停止を発表していました。アップルは自社のApp Storeで、フェイスブックの複数の権利を無効にしたとする声明を出しています。このアプリは現在も、Android上では稼働しています。 
 
 この動きについて、フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)は、2019年1月30日(米国時間)にCNBCのジュリア・ブアスティン氏のインタビューで回答しています

 ティーンネイジャーが情報収集に同意していることや、保護者の同意を得ていること(この検証は容易ではありません)を主張しています。彼女は、「これはフェイスブックの調査アプリです」と語り、「参加者にもはっきりとわかります。全くのオプトインのアプリなのです。厳格な同意プロセスがあり、参加者は報酬を受け取ります。市場調査プログラムなのです」としています。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
アレックス・ヒース氏のツイートより:
アップルはフェイスブックのiOSデベロッパー証明書を無効にしたことを発表。この証明書は、企業が従業員向けの社内用アプリをApp Storeを通さず配布することを想定してアップルが出していたものでしたが、フェイスブックは異なる目的で使用していました。
アップルの声明:
当社は「Enterprise Developer Program」を組織内部でのアプリ配布のためにのみ設計しました。フェイスブックは自社のメンバーシップを消費者向けのデータ収集アプリの配布に利用しており、これは明らかにアップルとの合意に違反しています。法人としての証明書を消費者向けアプリの配布に利用するいかなる開発者に対しても、当社は証明書を無効とします。それが今回、われわれがユーザーとそのデータを保護するために取った措置です。

また、フェイスブックは13歳未満の子どもたちからも搾取してきました。 
 
 米非営利ジャーナリズム組織「リヴィール」は、2019年1月下旬にフェイスブックが『Angry Birds』や『PetVille』、『Ninja Saga』といったゲームを通じて、子どもたちを標的に課金させていたことを訴えた集団訴訟に関する裁判資料を取得。2010年〜2014年にかけて、ゲームデベロッパーは親の許可を得ずにゲーム内での課金を行うことを許可されており、子どもたちはしばしば自分が何をしているのかもわからないままに高額の課金をしてしまうことがありました。

 今回の資料によれば、フェイスブックはこのような課金を「友好的な詐欺(friendly fraud、要するに監視のない課金です)」という社内用語で呼んでおり、社内の開発者が子どもたちを守る方法を提案しても、このような措置を取らなかったと言います。『Angry Birds』で遊んでいた子どもたちの平均年齢は5歳でした。 
 
 「長年出されてきた多くの警告サインにもかかわらず、フェイスブックは明確な決定を下しました。子どもたちやその親たちを食いものにして、収入の最大化を目指したのです」と「リヴィール」は報じています。 
 
 フェイスブックは2016年に、この訴訟で和解はしています。ですが、子どもたちや親たちへの返金処理はあまりにも遅々としていました。そして同社は同年の「リヴィール」への声明の中で、「利用規約をアップデートし、フェイスブック上で未成年が行った購入への返金リクエストのための専用リソースを提供することに合意した」としています。

 この件については2人の上院議員が2019年1月29日(米国時間)、ザッカーバーグ氏に説明を求める書簡を送っていました。

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SAUL LOEB//Getty Images
2018年4月の米国会議事堂におけるフェイスブックへの抗議。


 

 フェイスブックは全盛期から、SNSをクールでないものとみなす新世代のティーンネイジャーに対し、乗り遅れまいと試みてきました。2018年秋のデータによれば、1カ月に少なくとも1度はフェイスブックを利用するティーンネイジャーの割合はわずか38%となっており、この数年間で大幅に減少しています。

 2012年にフェイスブックは、若者世代の支持を集めるインスタグラム(Instagram)アプリを買収し、また、同じく若者世代を魅了していたスナップチャット(Snapchat)の買収を試み、このアプリの機能を真似しようとしてきました。また同社は、2017年には若者世代にもっと人気のあるプラットフォームであるYouTubeに対抗する「Facebook Watch」もリリースしました。しかしながら、彼らはほとんど関心を示さなかったのは事実です。 
 
 大抵の場合の場合において、フェイスブックの目的は金儲けなわけです。今この瞬間も、同社は過去最高の成長を記録していますので…

 しかしながらフェイスブックは、私たちの両親や祖父母へのアプローチには成功してきました。というのも、この世代ではますます多くのユーザーが同プラットフォームに群がっているのです。結局のところ、これまで聞いてきた話のとおりです。お金とデータを集めるうえで、フェイスブックに良心の呵責(かしゃく)などない…と言ってもいいでしょう。 
 
 今回のこの件については、子どもたちやティーンエイジャーが心配するようなことではなく、大人の私たちがよく知っておくべきことなのです。 

 
From Esquire US 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。


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