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スギ花粉を始めとする、花粉の飛散などが主な原因となって引き起こされる花粉症によるくしゃみ・鼻みず・目のかゆみなどの諸症状。それは、体内の免疫システムの反応によるものです。
これ自体は正常なことですが、反応が過剰になると非常に過ごしにくくなります。そんな花粉症への過剰な反応が起こることを防いでくれる、また、和らげてくれる市販の内服薬の選び方とおすすめの市販薬を紹介します。
現役の医師が記事を監修
今回の記事作成にあたり、あまきクリニックの味木 幸 (あまき さち)院長に、監修協力をお願いしました。
◇PROFILE
あまきクリニック / 味木 幸(あまき さち)院長
慶應義塾大学医学部入学後、同大学卒業後同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。2003年あまきクリニック(眼科・形成外科・皮膚科)を院長として新橋に開設。2007年法人化、医療法人社団 慶緑会理事長に。2013年ルミネ有楽町店に眼科を開設。医師として、痩身・美肌づくり・メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。テレビ・ラジオ・雑誌取材多数。学校医も勤める。4児の母。
花粉症の市販内服薬の選び方
まずは、市販の花粉症用内服薬の種類と選び方の理解を深めていきましょう。
体内の免疫が花粉に対して過剰な防衛反応が起こすとき、「体内では『ヒスタミン』と『ヒスタミンH1受容体』が結合している」と考えられています。
この結合をブロックして、花粉症の諸症状を抑えようとするのが「抗ヒスタミン薬」でになります。開発された時期によって第1世代と第2世代があり、効果の出方や眠気などの副作用が異なります。
前述のとおり現在、抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があります。「第1世代抗ヒスタミン薬」は抗ヒスタミン作用だけでなく、眠気、または口渇や便秘などの抗コリン作用もあるとされています。一方、第二世代抗ヒスタミン薬は抗アレルギー薬と呼ばれ、ヒスタミンH1受容体との結合を抑えるだけでなく、他のアレルギーを起こす物質の放出を抑えることも知られています。第一世代と比べて眠気が弱く、抗コリン作用(錯乱、かすみ目、便秘、口腔乾燥、ふらつきと平衡感覚の喪失、排尿の開始困難の症状が懸念される一方で、振戦や吐き気を抑える助けになるなど有用な作用もあるとされています)も少ないことが特徴となっています。
花粉症用の市販内服薬として、現在最も一般的なのが「第2世代抗ヒスタミン薬を主成分としたもの」と言えるでしょう。
第1世代に比べ、眠気をはじめとした副作用が大幅に軽減されていることが期待できるので、仕事のある日中でも飲みやすくなったという声も多くなっています。また、有効時間も長く、1日1回または2回の服用で効果が感じる人も多いようです。
ただし即効性に欠けるため、「花粉症シーズンより前から飲み始めておくの必要がある…」との声も多いので、そのあたりはぜひ理解しておきましょう。
【第2世代抗ヒスタミン薬の代表的な成分】
- エピナスチン塩酸塩
- フェキソフェナジン塩酸塩
- エバスチン
- ケトチフェンフマル酸塩
- セチリジン塩酸塩 他
第1世代抗ヒスタミン薬は、相性のいい人の場合は速攻性が期待できます。なので、そんな人には、鼻詰まりなどすぐに解消へと導いてくれるかもしれません。とにかく、「すぐに効いてほしい!」というときに試してみることをおすすめします。
ただし、睡眠改善薬の主成分にもなるほど、眠くなりやすい薬とも言われています。そのため常用は避けたほうがいいでしょう。眠くなりやすい特性を生かして、花粉症がつらくて夜眠れないときに服用する…という人もいるようです。
【第1世代抗ヒスタミン薬の代表的な成分】
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- ジフェンヒドラミン塩酸塩 他
眠くなりにくい第2世代抗ヒスタミン薬であっても、注意文には「運転時には十分注意するようこと」、もしくは「運転等をしないように」と書かれています。
絶対に眠くなれない職業や状況なら、漢方薬を服用するのも1つの方法と言えます。また、抗ヒスタミン薬が身体に合わない人も、そうすべきかもしれません。
最初にお試しいただきたい漢方薬として、ここでひとつ挙げるなら「小青竜湯(ショウセイリュウトウ)」をおすすめします。鼻みずやくしゃみに、大きな効果が期待できるでしょう。
花粉症の市販内服薬おすすめ10選【成分別】
では、おすすめの花粉症の市販内服薬を紹介します。成分ごとのご紹介となりますので、試してみて効果を感じられなかった場合は別の成分のものをお試しいたださい。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:エピナスチン塩酸塩 20mg(1日量)
医療用と同成分の市販アレルギー薬として2011年に発売され、花粉症用の市販内服薬の定番となっているのがアレジオンです。
1日1回の服用で、くしゃみや鼻みずの症状の緩和が期待できます。服用後の運転、飲酒は禁じられていますので、就寝前の服用がおすすめとなります。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:フェキソフェナジン塩酸塩 120mg(1日量)
アレグラFXは、脳への影響を及ぼしにくい(脳内移行が少ない)成分を使用しているとのこと。そのため、「アレルギー症状をしっかり抑えるのに、眠くなりにくいお薬」という表記があります。なので、眠くなりにくいアレルギー薬の1つとして人気を得ています。
つまり、集中力・判断力・作業能率の低下といった能力ダウンの懸念を抑制しているため、飛行機のパイロットにも服用が許可されている数少ない抗アレルギー薬でもあります。
服用は1日2回。服用後の飲酒は禁じられていますが、運転は禁じられていません。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:フェキソフェナジン塩酸塩 120mg(1日量)
アレグラで広く知られるようになった「フェキソフェナジン塩酸塩」ですが、他にもいくつか同成分を配合した花粉症向け市販薬があります。
そんな中でおすすめなのが、皇漢堂製薬の「アレルビ 」です。ドラッグストアなどではあまり見かけず、もっぱら通販での購入となりますが、フェキソフェナジン塩酸塩の含有量はアレグラと同じ。お得な価格で購入できます。1箱56錠入りです。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:ケトチフェンフマル酸塩1.38mg (ケトチフェンとして1mg/1錠中)
第2世代抗ヒスタミン薬「ケトチフェン」を1mg配合した、花粉症・ハウスダスト向け鼻炎薬です。1日2回服用するタイプで、服用後の運転が禁じられています。
第2世代抗ヒスタミン薬の中でもケトチフェンを使用した製品は少なく、ケトチフェンが体質や症状に合っている人にとっては、貴重な存在の医薬品と言えそうです。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:セチリジン塩酸塩 10mg(1日量)
第2世代抗ヒスタミン薬、「セチリジン塩酸塩」配合のアレルギー性鼻炎薬です。飲みやすいソフトカプセルなので、錠剤やカプセルが苦手な人におすすめです。
中身は液状なので、素早く溶けて効果のスピードも期待できるでしょう。服用のタイミングは就寝前に。1日1回が基本となっています。なお、服用前後の飲酒と服用後の運転が禁じられています。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:メキタジン 4mg (1日量)
第2世代抗ヒスタミン薬、「メキタジン」を配合した鼻炎薬です。抗ヒスタミン薬が効きづらい鼻づまりに適した「塩酸プソイドエフェドリン」も合わせて配合しています。そのため、他の花粉症約で鼻づまりが解消しなかった人も試す価値があると言えるでしょう。
メキタジンは、じんましんのかゆみを抑えるお薬や、気管支喘息の治療にも使われる成分です。エピナスチン塩酸塩やフェキソフェナジン塩酸塩と比べると、やや眠気が出やすい傾向があり、服用後の運転は禁じられています。服用は1日3回です。
- 種別:第2世代抗ヒスタミン薬
- 成分:アゼラスチン塩酸塩 2mg (1日量)
第2世代抗ヒスタミン薬、「アゼラスチン塩酸塩」を含んだ花粉症向けの市販薬です。他の成分同様に眠くなりにくく、また、食事の影響を受けにくいため、空腹時の服用も可能とされています。
さらに抗コリン作用がないことで、便秘や口の渇き、胃不快感が起こりにくくなっているとされています。他の花粉症薬で、このような症状に悩まされたことのある人も、「これなら試してみる価値はある」と言えそうです。服用は1日2回で、服用前後の飲酒と、服用後の運転が禁じられています。
- 種別:漢方薬
服用回数は1日2回とのこと。この製品は細粒の多い漢方薬では珍しく、錠剤になったタイプです。なので、他のアレルギー性鼻炎薬と同じ感覚で服用できるでしょう。
- 種別:漢方薬
漢方葛根湯加川キュウ辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は、花粉症のなかでも、無色や白っぽい鼻水が出て、鼻詰まりが強いときにおすすめの漢方薬です。
風邪薬としてよく飲まれる葛根湯(かっこんとう)に鼻詰まりを改善するための漢方薬をプラスした処方で、花粉症だけでなく、鼻炎や鼻詰まりの強い風邪のときにも服用できます。運転など眠くなってはいけないときに役立つでしょう。
- 種別:漢方薬
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は、鼻詰まりのなかでも、黄色っぽい粘り気のある鼻水がでるときに効果的とされる漢方薬です。
黄色っぽい鼻水は、鼻の粘膜が炎症で熱をもっているサインでもあります。そんな熱を冷ましつつ鼻炎を改善する効果が期待でき、慢性鼻炎や蓄膿症(副鼻腔炎)でも服用されます。こちらもやはり、眠くなれないときにおすすめです。
まとめ
医療用と同じ成分を配合したアレジオンが、第1類医薬品として初めて販売されたのが2011年のこと。そして、2015年には第2類医薬品として販売されるようになり、市販の第2世代抗ヒスタミン薬はグッと身近な存在になりました。
現在は医師の診察を受ける時間を取りにくい人でも、同成分の医薬品が手に入る時代です。だからこそ、自分に合った成分や服用時の禁止事項を詳しく理解した上で、自分自身でより確実な選択をすることが大切となります。なお、他の薬との飲み合わせや自身の体調について不安がある場合には、薬剤師へ相談、または医師の診断を受けることをおすすめします。