厳しい寒さが和らぎ、過ごしやすい陽気になる春。ただ、花粉症の方にとっては厳しい季節です。

 一般財団法人日本気象協会の発表によりますと、2021年の花粉の飛散傾向として、スギ花粉の飛び始めは全国的に例年並み。飛散量は広い範囲で例年より少なく、九州は非常に少ないとのこと。しかし、九州から関東は2020年と比べると飛散量が非常に多い所もあるという予報が出されています。

 このページでは、花粉症によるくしゃみや鼻みず、鼻詰まりを抑制、もしくは緩和してくれるアレルギー性鼻炎用点鼻薬の選び方と、おすすめしたい市販薬をご紹介しましょう。


現役の医師が記事を監修

 今回の記事作成にあたり、あまきクリニックの味木 幸 (あまき さち)院長に、監修協力をお願いしました

監修を担当した医師


PROFILE
あまきクリニック / 味木 幸(あまき さち)院長
広島ノートルダム清心高校在学中に米国1年の留学。米国高校卒後、母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。2003年あまきクリニック(眼科・形成外科・皮膚科)を、院長として新橋に開設。2007年法人化、医)慶緑会理事長に。2013年ルミネ有楽町店に眼科を開設。医師として、痩身・美肌づくり・メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。テレビ・ラジオ・雑誌取材多数。学校医も勤める。4児の母。

花粉症の市販点鼻薬の選び方

 まずは、市販の花粉症用点鼻薬の種類と選び方の理解を深めていきましょう。

点鼻薬の成分は大きく分けて3種類

点鼻薬
Ralf Geithe//Getty Images

 花粉症の鼻みずや鼻詰まりに効果のある点鼻薬には、大きく分けると下記の3種類があるとされています。

  1. ステロイド薬
  2. 抗アレルギー薬
  3. 血管収縮薬

「ステロイド薬」は、鼻詰まり・くしゃみ・鼻水への効果が期待できる。しかし、即効性には欠けるとの声も…

くしゃみが止まらない男性
Maskot//Getty Images

 最もおすすめできると考えられているのが、ステロイド薬を使用したタイプです。病院で医師が処方するものと同じ成分の製品が市販されています。

 鼻詰まり・くしゃみ・鼻水への効果を期待でき、眠気の副作用が少ないとされています。ただし、即効性はあまり期待できず、継続的に使い続けることで効果を発揮する…との声も多いので、その点は理解しておくとよいでしょう。

代表的な成分

  • ベクロメタゾンプロピオン酸エステル

「抗アレルギー薬」は、くしゃみ・鼻水への効果が期待できる。しかし、鼻づまりへの効果は欠ける傾向に…

眠気が治らない男性
knape//Getty Images

 「抗アレルギー薬」は、内服薬で多く使われることのある、抗ヒスタミン作用などがある成分を使用したタイプです。

 くしゃみと鼻水を大幅に抑えるとされていますが、残念ながら鼻詰まりへの効果はさほど期待できないかもしれません。また、使用する人の中には、「少しの眠気」を訴える人もいるようです。

 そのため、内服薬やステロイド薬を使いづらい方が、限定的にこの「抗アレルギー薬」を使用することも多いようです。

代表的な成分

  • ケトチフェン
  • クロモグリク酸ナトリウム

「血管収縮薬」は、“即効性は期待大”との声も。しかし、“長期間の使用には細心の注意が必要”とも…

点鼻薬をする男性
LightFieldStudios//Getty Images

 最も即効性があると考えられているのが、このタイプです。血管を縮めて粘膜を収縮させることで、鼻づまりを解決に導くとのことです。

 ただし、使い過ぎると鼻詰まりの原因にもなるとされ、症状が悪化したというケースも報告されているそうです。

 そういった点を理解した上で、使用には細心の注意が必要となります。中には「今この瞬間、どうしても鼻詰まりを治したい」というときに、この血管収縮薬をスポット的に使う人もいるようです。

代表的な成分

  • ナファゾリン塩酸塩

【おすすめしたい結論】
ステロイド薬を花粉シーズン前から使い始めること

点鼻薬を選んだ男性
vadimguzhva//Getty Images

 花粉症の鼻詰まりや鼻みずを解決に導きたいなら、ステロイド薬を使用したタイプが最も効果を期待できる存在かもしれません。特性上、花粉症シーズン到来前の早めの段階から使い始めるのが良いと考えられていますが、副作用や眠気の心配が極めて少ないとの声が多く寄せられています。

 また、諸事情からステロイド薬が使えないという方は、抗アレルギー薬を選ぶケースも多いようです。

花粉症の「市販点鼻薬」おすすめ5選【成分別】

 上記でご紹介してきた選び方を踏まえて、おすすめできるとされる花粉症の点鼻薬をご紹介します。成分ごとのご紹介となりますので、試してみて効果を感じられない場合は、別の成分のものを試すことがおすすめとなります。

【ステロイド薬】

佐藤製薬 ナザールα AR 0.1%【指定第2類医薬品】

佐藤製薬 ナザールαAR0.1%

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 「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」を医療用と同量配合した、点鼻薬です。鼻の中の炎症やうっ血を抑える効果を期待でき、スムーズな鼻の通りに導いてくれます。

 逆流しないスプレー容器なので、最後まで清潔に使いやすい点も好評なようです。

 ただし過去1年以内に、同様のステロイド点鼻薬を3カ月以上使った経験のある方は、この製品の使用は避け、医師の診察を受けてください。

パブロン 鼻炎アタック JL【指定第2類医薬品】

大正製薬 パブロン鼻炎アタックJL

パブロン鼻炎アタックJL

 こちらも、「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」を配合した点鼻薬です。ステロイド薬は体内に吸収されると分解されるため、全身への作用が少ないと考えられています。

 霧状にスプレーされた薬液は、炎症患部でジェル化して、液だれしにくいという特徴があります。スーッとした使用感で、「気持ち良く使える」という声も多い点鼻薬となります。

【抗アレルギー薬】

ザジテン AL 鼻炎スプレーα 【第2類医薬品】

ザジテンAL鼻炎スプレーα

ザジテンAL鼻炎スプレーα

 抗ヒスタミン薬「ケトチフェン」を主成分とした、点鼻薬です。花粉によるくしゃみ・鼻みず・鼻詰まりを解決に導くとされています。

 容器を横向き・逆さにしても噴射できるエアレス容器なので、使い勝手がよく便利です。なお、副作用として眠気が出る可能性が指摘されているため、使用後の運転は禁止されています。

【血管収縮薬】

ナザール スプレー【第2類医薬品】

佐藤製薬 ナザール「スプレー」(ポンプ)

ナザール「スプレー」(ポンプ)

 血管収縮薬「ナファゾリン塩酸塩」の働きで、鼻腔内のうっ血や炎症を抑制、または緩和し、鼻詰まりの改善が大いに期待できるでしょう。

 さらに抗ヒスタミン薬「クロルフェニラミンマレイン酸塩」を配合しているので、アレルギー症状への効果も期待できる点鼻薬となります。なお、血管収縮薬の副作用が出やすくなると考えられていることから、長期間の連用は禁止されています。

エージーノーズ アレルカットC【第2類医薬品】

第一三共ヘルスケア エージーノーズアレルカットC

エージーノーズアレルカットC

 こちらも、血管収縮薬「ナファゾリン塩酸塩」を主成分として使用した、鼻詰まりへの効果が期待できる点鼻薬です。メントールを配合しているので、使い心地はすっきりクールです。

 アレルギー症状の緩和に効果的とされる「クロモグリク酸ナトリウム」や、鼻の中の炎症を鎮める効果が望める「グリチルリチン酸二カリウム」を配合しているのも特徴です。なお、こちらも長期間の連用が禁止されてます。

まとめ

 花粉症用の市販点鼻薬は、成分の違う3タイプが混在しているため、それぞれの効果を知って選ぶと、頭の中が整理されるかもしれません。

 中には、長期使用で副作用を起こす恐れが指摘されている成分もありますので、ここでご説明した選び方をご参考にしていただき、しっかり調べてご購入することがおすすめとなります。

 なお、他の薬と併用していたり、自身の体調について不安がある場合は、薬剤師への相談、または医師の診断を受けることを強くおすすめします。