これまで長い歴史と共に多くの名選手が登場したNFLですが、その中でも偉大なる選手として知られるジム・ブラウンをご存じですか。

 1957年1965年まで、クリーブランド・ブラウンズでランニングバックとして、縦横無尽に走り続けてきた彼は今回は大統領選を含む政治について縦横無尽に語ってくれました。

 おそらくそれぞれの道、各スポーツでの偉大なる成績が「鎧」にもなったのでしょう。さらに、当時、この国で最も対立した問題に対して声を上げた瞬間から、彼らはフィールド、コート、そしてリングで鍛え上げた卓越した運動神経および反射神経により、この問題を前進させたのではないでしょうか。そう、彼らはアスリートであり、活動家でもあるのです。

 そんな彼らとは、元ボクシング選手のモハメッド・アリ、元バスケットボール選手のカリーム・アブドゥル・ジャバー、そして元アメリカンフットボール選手であるジム・ブラウン等です。

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ROBERT ABBOTT SENGSTACKEGETTY IMAGES
写真前列左から右へ、ビル・ラッセル(NBA)、モハメド・アリ、ジム・ブラウン(NFL)、カリーム・アブドゥル=ジャバー(NBA)。後列にカール・ストーク(政治家)、ウォルター・ビーチ(NFL)、ボビー・ミッチェル(NFL)、シド・ウィリアムズ(NFL)、カーティス・マクリントン(NFL)、ウィリー・デイビズ(NFL)、ジム・ショーター(NBA)、ジョン・ウートン(NFL)。1967年、米国オハイオ州クリーブランドで行われた黒人産業経済連合の集会での様子。

 ユニフォームを脱ぐと同時に、その発言を止めてほしかったに違いないアメリカという国から、彼らはその後も執拗な監視が続いていたことでしょう。でも、その大きな壁をもものともせずに、ブレークスルーさせたツワモノたちなのです。

 1967年、偉大なるボクサー故モハメド・アリは、ベトナム戦争への徴兵を受けたことに対し、宗教の信条や政治的・哲学的な背景の基づいての兵役拒否、いわゆる良心的兵役拒否を宣言しました。それに多くのアフリカ系アメリカ人アスリートがアリをサポートするために集まったのです。そんな上の写真の中心にいるのが、ジム・ブラウン。彼はその他のアフリカ系アメリカ人アスリートたちと一緒に、ベトナム戦争徴兵に反対するとして立ち上がったのです。

 その理由を具体化すると…、「全面的な市民権をアフリカ系アメリカ人に供与していないのに、戦場に送り国のために戦わせようとするのは…」ということです。

 ジム・ブラウンは、公民権運動が世の中を変えるペースがあまりにも遅いと確信し、当時のアフリカ系アメリカ人の地域社会やそこに住む人たちの経済力向上のため、闘う組織を設立したのでした。そして彼は人生を通して…フットボールを辞めたあとに映画スターとしての名声を得た後も、自らのよく響く声で、その思いを人々に伝え続けているのです。


◇黒人社会の経済力向上の進展について語る

 アメリカのプロフットボールリーグであるNFLは、ジム・ブラウンをリーグで2番目に偉大なプレイヤーだったと評価しています(なぜ2番なのかは、わかりません)。彼はプロフットボールでプレイした9回のシーズンで当時のラッシング記録を打ち破り、クリーブランド・ブラウンズに優勝という栄光をもたらしたのですが、それだけではないのです。彼はフィールド外でも、同じぐらい偉大な成績を残しているのです。

 2016年のNBAファイナル第3戦にて、クリーブランドという同郷のよしみでこの試合を観戦していたジム・ブラウン氏に対し、キャバリアーズのキング、レブロン・ジェームズ(現在のNBAでナンバーワンの人気選手)が敬意を表したことがスポーツ界で話題となりました。

 ですが、それは別として、ブラウンは自らの道をまだまだ貫き通しているのです。ちょうど彼の人生を具現化するビジネス、フットボール装具を展開する会社「ルーツ・オブ・ファイト」から新製品がちょうど発売したタイミングで、Esquire編集部はインタビューをさせていただいたので、それを今回ご紹介しましょう。

 その内容は、社会の変化の中でファッションはどのような役割を果たすか? でも、このタイミングでそれだけに留まるわけにはいきますん。期待通り、ドナルド・トランプ氏についての質問に対しての時間も割いてくれたのでした。

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Kidwiler Collection(Diamond Images/Getty Images)
背番号32番のボールを持って走る選手がジム・ブラウン。1964年11月15日、対デトロイト・ライオンズ戦にて。


Esquire編集部(以下、Esquire):ミズーリ州ファーガソンやボルチモア、ニューヨークなどで、警察の黒人への武力行使に対する抗議に始まる『Black Lives Matter(黒人の命だって大切だ)』運動の一連として2016年9月、サンディエゴでのNFLプレシーズンゲームで「サンフランシスコ49ers」のQBコリン・キャパニックはアメリカ国歌の斉唱中に両腕を組んでひざまずき、人種の不平等と警察の暴力に対して抗議を続けました。これが話題となり、あなたは「コリンの抗議に対し支持するが、自分だったらあのように国旗と国歌を軽視するようなことはしない」と言いましたね。あなたなら、どうしましたか? 若者たちにとって、自分の声で社会に訴えるために最良の方法は何だと思いますか?

ジム・ブラウン(以下、ブラウン):私はゼネラリストでも、哲学者でもありません。ですから、他の人から指図されるのをただ座って待つようなことはせず、自分の信じた道に従うだけです。

 あなたが言っている若者たちは、生きている時代も違うし、この国の社会状況について、私とは理解が異なります。

 私がコリンについて、いい加減なことを言うのは少々おかしいかもしれません。なぜなら、私はこれまでの人生で自分が信じること、つまり経済の発展、自由、平等、そして全人類にとっての正義のために取り組んできたのですから。我々には「Amer-I-Can(アメ・アイ・キャン)」(私には生産し、達成し、繁栄する能力があるという意味)という組織があります。過去25年間で、アフリカ系アメリカ人が経営する400社以上の会社を助けてきました。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
LeBron James Pays Tribute to Jim Brown Pregame
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 そのため私は、若者たちが意味を理解するのを座ってただ待っているのではありません。彼らが一般大衆に向けて発信するときに、メディアが大きな役割を果たしているのは明らかです。それでコリンは『タイム』誌に載り話題になったのです。でも、「アメ・アイ・キャン」は話題性を作ることではなく、行動することなのです。

ファッションは黒人社会において、とても重要な産業である

ブラウン:私が話しているのは今どきのアスリートが膝まづいたからといって、「これは昨日今日始まったことではない」ということです。でも、この状況や差別は、我々にとっては生活の一部なのです。

 この国でアフリカ系アメリカ人として生きていたら、第二種市民権や人種隔離文化が何を意味するかおわかりかと思います。

 マーティン・ルーサー・キング、ジェシー・ジャクソン、ネルソン・マンデラほど、強くアピールしてきた人は他にいないと思うのです。我々がより良く生きられるように、道を開いてきてくれた先代を軽視すべきではありません。コリンには、アメリカ人なら誰でもそうであるように、意見を表明したり、投票したり、国民として許されているすべてのことをする権利があります。私もそのことには賛成です。

 でも、国歌や国旗のこととなると、それは「ノー」です。私には国歌や国旗を軽視することはできません。私はアメリカ国民であり、納税者であり、権利を欲します。私の家族のなかでも意見は様々ですが、家族を軽視したりはしません。この国には国軍があり、この国のために戦い、この国のために命を落とす兵士がいるのです。だから、国歌が流れたときに膝まづいたり、ということは、あまりにも単純化されすぎてしまったので軽視できたのだと感じるのです。私自身は、そんなやり方は好きではありません。

 この先も同感することはないでしょう。でも、それはこのやり方をする人たちとは関係ないことです。彼らには、そうする権利があるのですから。


Esquire:1968年に行われたアレックス・ヘイリーとのインタビューで、アフリカ系アメリカ人社会の経済力向上について、また、公民権運動後もその目標になかなか辿りつけないことについて多く語っていましたが、この点において進展はあったと思いますか? 

ブラウン:公民権運動は、感情に支配された運動でした。そして、感情により導かれました。アフリカ系アメリカ人として、我々のほとんどは奴隷としてこの地にやってきました。そして、教育を受けることは許されませんでした。多くのアフリカ系アメリカ人は、隠れて自分で勉強していました。

 でも、自分が何者なのかということに苦しみました。それは人種について、多くの誤解を生んだからです。もしアメリカ人になるのなら、もし税金を払うのなら、権利が欲しいと誰もが思うことでしょう。資本主義とは何か?

 それがどんな自由をもたらすのかについて考えたときに、家族を養う、子供の面倒を見る、最高の教育を受ける、自由と平等と正義を勝ち取るために努力するという観点から、より良い生活が可能となるアフリカ系アメリカ人社会の発展にこそ興味があるのです。この国の資本主義社会における経済を理解しなければ、常に誰かからの供給をあてにするしかありません。

 だから、私は当時行っていた、歌ったり行進したりするような活動は、今は信じていません。我々はニグロ・インジャスティス・エコノミック・ユニオン(のちにブラック・エコノミック・インジャスティス・ユニオンに変更)を発足し、400社以上の黒人による企業に影響を与えました。

 金持ちで悪評高いアスリートもいました。国内最高の学校でMBAを取得し、ビジネスを理解する若者もいました。そして、我々は自分たちの地域社会でビジネスを生み出すこと、投票権を行使し、政治制度に参加することに力を注いできたのです。でも、私は経済の発展が絶対的に必要だと考えていたのです。

 なぜなら、それを理解しないと、決して前に進むことはできないからです。ユダヤ人社会が、その原則で自由を得たように我々もそれに見習えば、先に進めるだろうと思っているのです。

Esquire:1968年のインタビューのことになりますが…。その頃、映画でのキャリアをスタートされましたね。当時、「アフリカ系アメリカ人の俳優にはステレオタイプの役が多く、影響力のあるストーリーの中心に置かれるような役柄があまりない」と感じると言われていましたが、その点についてハリウッドは前進したとお考えですか? 

ブラウン:それはどうでしょう。今の割合と、50年前の割合を比べる統計値はありません。50年前ならアフリカ系アメリカ人には絶対に不可能だった配役が、今ではあります。

 当時なかったチャンスが、今ではあると思います。でも、貧困層にどれほどのチャンスがあるのでしょうか。女性のチャンスはそれほど向上したのでしょうか? この国があるべき姿に進める道は、まだまだあると思います。テレビを見ると、必ずアフリカ系アメリカ人の顔が様々なキャスティングで登場しています。

 そして、ステレオタイプではない人間がいます。以前はできなかったことですが、一定の分野には入り込むことができたのだと思います。


◇アメリカの選挙制度について物申す!

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このように、アフリカ系アメリカ人の元アメフト選手でも、ハリウッドデビューすることができたのです。

Esquire:ルーツ・オブ・ファイトとのパートナーシップは、服やスポーツ用品が目的ですが、あなたのアスリートとしてのストーリー、または関係している他のアスリートとのストーリーを語る目的もあるかと思いますが、いかがですか。

ブラウン:ファッション自体も産業ですが、セレブリティに重ねてより大きな影響を持たせることができるのです。

 でも、ルーツ・オブ・ファイトでは、ファッションを声明の場にすることに非常に気を遣っています。モハメッド・アリがいて、彼のファイターとしての華麗さや誠実性を描いたジャケットを持っていると、彼のレガシーやこの運動の一部だった誰かのレガシーに結び付けるでしょう。

 過去を見て将来を考えます。それが商業的だからではなく、服であるというだけではない、何か次元の高いものを考えるところに価値があると考えるのです。

Esquire:モハメッド・アリやカリーム・アブドゥル・ジャバーなど、あなたと同世代の素晴らしいアスリートとは、特にスポーツを超えた共通の経験から兄弟愛のような絆で結ばれているような気がしますが、いかがですか? 

ブラウン:まったくその通りです。モハメッド・アリの徴兵に対する立場を支持するためにカリームが我々とサミットに立ったとき、カリームは私たちの中で一番若かったのです。

 彼はスターの座に、のし上がるというところでした。彼がそこに立つリスクというのは、信じられないほどのものだったことでしょう。なぜなら、彼のキャリアをすべて失うことになったかもしれなかったからです。

 そこに立つことにより、スポンサー契約も失いかねません。選手契約も失いかねません。ファンだって観たいのは、そこに立っている姿ではなく、スポーツ界で契約してコート上でプレイしている姿なのですから…。

 そこには個人同志の、兄弟愛があることが理解していただけますね。世代は違いますが、レイ・ルイスとも兄弟愛で結ばれているのです。私はカリームが活動家だということもあり、今でも彼が大好きです。

 互いに尊敬し合い、プレイするフィールドを超えた関係となっています。他にも素晴らしいアスリートがいて、彼らもコートやフィールドを超えた世界でも活躍しています。同じ考えをもった同志であり、彼ら自身や後輩たちのために永遠に立ち上がり続ける人たちなのです。

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モハメド・アリ(写真左)との2ショットを行ったジム・ブラウン。人気スポーツのレジェンド同士が並ぶと、誰もが興奮してしまうものです。


Esquire:最近のインタビューで、ヒラリー・クリントン氏を支持していましたが、今は次期大統領のドナルド・トランプ氏に期待していると言っていましたね。彼は改革することができる人だと思いますが、慎重になる責任もあると話していましたね。その後、トランプ氏の組閣人事は議論を呼んでいます。そんななか、あなたは今でも希望を持っていますか? それとも今では心配なのですか?

ブラウン:彼がやろうとしていることは、必ずしも私は認めていませんし、私の言っていることはそういうことではありません。

 トランプ氏はかなり乱暴な物言いをするし、かなり危険な存在でもあるのです。でも、それが第一線にいるはずのなかった多くの人たちを、第一線に誘い出す可能性もあります。私はもうすでに始まっていると思います。

 つまり、彼は少し怠けている人、物事を当然のことと考える人の目を覚まさせて、彼の実施表明への反対勢力に参加するようにしむける効果もあると思うのです。状況が不利に働くことも、もちろんあるでしょうが、それにより目が覚まされ、自分が十分果たしていなかったことについて、気づかされることも絶対あると思うのです。

 また一方で、もしかすると彼は実は信頼性の高い人物で、すこぶる頭の切れる政治家なのかもしれない…という可能性もあるのです。いままでの行動は、すべて大統領になるための戦略であって、大統領になったら今までより保守的になる…。そうなれば、彼は彼を選んだ人たちの代表ではなく、アメリカ国民を代表する、理解ある大統領になるのです。

国民の目を覚まさせる可能性も、また、自分の目を覚ます可能性もあるのです。

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ホワイトの上下が似合う、全盛期のジム・ブラウン。

Esquire:つまり、今までは関わる必要がない、または関わりたくないと考えていた人たちを、これを機に巻き込まなくては…という思いにさせる可能性が大いにあるというわけですね?

ブラウン:今国民は、この選挙のやり方自体に反対する声を上げていると思います。すでに投票制度を見て、選挙人制度に疑問を呈しています。

 私も、それがなぜ必要なのかわかりません。なぜ、一般投票だけで十分ではないのでしょうか。一般投票で勝てない人がアメリカの大統領になれる制度を見て、いったい一般投票は考慮されているのか?と疑問すら抱いています。考慮されなければいけない、とは思っているのですけれどね。



Esquire:国が分断されていることに、懸念を感じますか?

ブラウン:国というのは、最悪の状態になったとき分断されます。我々個人としては振り出しに戻り、自分をどう表現していくのかや、他人に対する寛容について考えなければなりません。

 必要なのは、精神的な変化に近いものです。なぜなら、それ以外だったら、おそらく核戦争-人類絶滅につながる恐れがあるからです。我々の国には、核爆弾を発射できる力がありますね。いくつかの国では、耳障りでうぬぼれの強いリーダーが存在すれば、不穏な空気が流れるでしょう。

 例を挙げてみましょうか――私は決して起きてはいけないことだと思っていますが、現に警官が市民を殺す事件が起きていています。私が観たビデオでは、警察が一線を超えているように観えます。

 それは適正な行為でしょうか。しかしその一方で、市民が警官を撃つ事件もあるのです。そんな状況に警官が陥る可能性が高ければ、事態は複雑になる一方ではないでしょうか。

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背番号32番のボールを持って走る選手がジム・ブラウン。1960年、対フィラデルフィア・イーグルス戦にて。

ブラウン:果たして、これはどこへとつながっていくのでしょう?

 みんなが武装し、銃暴力の力で問題を解決する、19世紀の開拓時代における西部劇のような状況を生み出すのでしょうか。

 私たちは自尊心と他人の尊重を精神的に理解しなければなりません。そしてそれは、自分たちや市民に対する態度を考えるべきこと。誰もができる、個人個人の力で乗り越えらる問題なのです。

 精神的世界、と言っても牧師や教会のことではなく、どのように振る舞うか、精神的な誠実さが大切だと考えています。先日の選挙で見えた政治制度について、私には、これが世界でベストなものだとは決して思えないのです。私たちが自尊心もち、常に他人へ敬意を払うよう振る舞えば、そしてそれが何十億回もコピーされれば…、人間としてあるべき姿となって、生きられるはずなのです。

 しかし資本主義が、国や金を支配する企業のためのものとなり、ホームレスや貧困層ができてくる。そして中間層が縮んでいく…、この現状は決して良い兆候ではありませんね。

今、アメリカで足りないこととは、一体何か!?

Esquire:富の不平等が人々の怒りに油を注いでいると思いますか? それとも、それは機会の不平等による問題なのでしょうか?

ブラウン:仕事を例にとってみましょう。Amer-I-Can(アメ・アイ・キャン)では、建設会社と一緒に仕事をしています。建設業界では、時給の良い仕事でしょうか? 最低時給30ドルです。

 ですが、他の業界では、もっと高い時給も存在しているです。…ですが、我々の制度を見れば、その答えは「イエス!」。

 優れた業務習慣があり、勤務期間が長いなどの条件次第で誰でもが成功できるのです。しかしながら大衆の立場に立てば社会主義が禁句となり、自助努力ばかりが話題になり、そして貧困層への投資がなければ、うまくいかないでしょう。

 国民は希望がもてなくなるので、良い環境設定とは言えませんね。人々にはまともな生活ができて、違う人生を達成できるという希望をもたせてほしいはずです…。それが、良い生活を希望するということなのです。それがなければ、何が起きてもおかしくない社会となるのですから。


Esquire:キャリアの絶頂でフットボールから引退されましたが、当時は今のように頭部損傷による危険性についてまで、知るよしもなかったでしょうが、深刻な怪我があなたのキャリアを狂わせることを恐れていましたか? また、最近では早く引退することを選ぶ選手たちについて、どう思いますか?

ブラウン:アメフトは荒っぽいスポーツです。そして、それが魅力の一つでもあるのです。

 私は9年間プレーを続けて、重篤な怪我を1回もしなかったので幸運でした。最悪でも手首の骨を折ったぐらいです。NFLやオーナー、また組合が選手の安全を考えているのだと思います。私が現役だった頃に合法だったことが、今では違反になったものもあります。

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Esquire:2012年、当時まだアメフトに関連する頭部損傷について研究中だったため、自分のお子さんたちにフットボールをさせるか、まだ言えないと話していました。その後、何か変わりましたか?

ブラウン:昔はプレイ中、ブロックやタックルにより頭を打って、その時のプレイが思い出せないという選手がいれば、フィールドから外に出し、指を2本または3本立てて、「何本に見えるか?」と聞いたものでした。

 きちんと答えられれば、また試合の現場、フィールド上に戻していました。

 今では、頭がスッキリするまで選手を座らせるなど、リーグが一定の予防措置を取っているので、そういうことはあり得ませんね。選手の健康を守る方向に進んでいると思います。これは正当に評価したいと思います。

 脳震盪については、ある程度まだはっきりしていない部分もある状況であるのは事実です。何が許され、何が許されないかという問題について、NFLは転換期にあるのだと思います。

 そのため、もし私の息子が「アメフトをしたい」と言ったら、そのリスクについてきちんと教えなければいけないでしょう。選手の立場でもあったので、その点は利点だと思います。でも、決してプレイすることをやめさせようとはしないでしょう。

 息子がプレイするチームとも話をして、最良の環境でプレイできるような方針が整備されていることを確認したいとも思います。最高のフットボールをプレイすることを考えつつ、ある種のマッチョな考え方の犠牲にならないよう、そこははっきりさせたいと思いますね。

Source / ESQUIRE US
Translation / Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。