2021年3月16日(火)、米ジョージア州アトランタ校外のスパ施設などで銃撃事件が相次いで発生しました。死亡した8人のうち6人がアジア系女性であったことを受け、翌日にはNFLアトランタ・ファルコンズでプレーする韓国人キッカー、ヨンフェ・ク(Younghoe Koo)選手が、あらゆるヘイトクライムに対する抗議の声明を出しています。

 「アトランタで起きた事件に深く心を痛めています。調査結果はこれからであり、まだ確かなことは言えませんが、ここ数年あらゆる人種に対するヘイトクライムが増加しており、今こそこの問題に対する取り組みが必要であると強く感じます」と、26歳のク選手は自身のインスタグラムに投稿をしています。

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 その後、逮捕された21歳のロバート・アーロン・ロング容疑者は単独で行動したとみられています。

 ジョージア州チェロキー郡保安官事務所は記者会見で、容疑者が犯行を認めたとした上で、「まだ早い段階ですが、容疑者は人種が動機でないと主張」と発表しています。容疑者は自身に「セックス依存症」があるとし、標的となったマッサージ店を「抹消したい誘惑のひとつ」とみなしていたと説明したということです。

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RAW VIDEO: Officials give update on deadly spa shootings in Atlanta, Cherokee County
RAW VIDEO: Officials give update on deadly spa shootings in Atlanta, Cherokee County thumnail
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 一方で当局は、「容疑者の動機はまだ断定していない」と強調もしています。容疑者がフロリダ州までクルマで移動し、さらなる銃撃を計画していたとみられることも明らかにしています。

 ジョー・バイデン大統領は同年3月19日、訪問先のアトランタで「全米で憎悪や暴力が隠されてきました。沈黙は共犯です、声を上げていきます」と呼びかけました。

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 そんな中、さらなる悲劇として、非常にショッキングな映像がSNSで公開されます。

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 同年3月29日、ニューヨーク市マンハッタンのミッドタウンで、大柄な男性が65歳のアジア系女性に対する暴行事件が起きました。男性が差別的な言葉を発しながら女性を蹴り、踏みつけている様子がとらえられています。

 そこでニューヨーク市警は、監視下にあった仮釈放中のブランドン・エリオット容疑者(38歳)を逮捕したことを公表。人種差別に基づく憎悪犯罪(ヘイトクライム)として、重暴行の容疑がかかっています。

 さらに監視カメラは、暴行現場を目撃していたはずの高級マンションの警備員が、止めようとしなかったこともとらえています。この建物を管理しているブロドスキー・オーガニゼーションは同年3月30日の発表文で、労働組合と共に調査した上でその警備員を停職処分としたことを明らかにしています。そして、「あらゆる形態の差別や人種差別、外国人排斥、アジア系米国人コミュニティーに対する暴力を非難する」と表明しています。

 バイデン大統領は同日(同年3月30日)、被害者への支援や取り締まりの強化といった追加対策を打ち出しました。

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 追加対策は新型コロナウイルス対策の予算を活用するとされ、「私たちは、アジア系への暴力の増加に黙っているわけにはいかないのです。アジア系への攻撃は米国の価値観に反し、やめさせなければならない」と指摘しています。

◇ク・ヨンフェ選手の経歴とバックグランド

 韓国のソウル出身のク選手は、12歳でニュージャージー州リッジウッドに移住したのち、2017年にAFC西地区に所属するロサンゼルス・チャージャーズにドラフト外で入団し、デビュー。NFL史上4人目の韓国系アメリカ人選手となりました。

 2019年シーズン後半にNFC南地区に所属するアトランタ・ファルコンズに移籍すると、リーグ屈指のプレースキッカーとして活躍し、その名を上げます。そして2020年シーズンも継続して活躍したク選手は、自身初となる2021年1月開催予定であったプロボウル(NFLのオールスターゲーム/AFC-NFC Pro Bowl)に選出されも、残念ながらこのパンデミックによって中止に…。晴れの舞台は踏むことができませんでした。

「問題を無視することでは、解決は図れない」

 上にも掲載している、2021年3月18日にク選手によるインスタグラムの投稿は、直前に起きたアトランタ地域の凶悪事件だけでなく、コロナ禍によるパンデミックが1年以上も続く中で起きている、アジア系住民に対するヘイトクライムの急増という社会的背景全体を受けて行われています。

 そしてそこには、自身が経験した人種差別と共に、これから社会が進むべき道についての想いがつづられているのでした…。そのキャプションの後半には、こう記されています。

 「…アジア系アメリカ人として、私もしばしば悪意あるジョークや罵声を投げかけられてきました。そこで私は自分のすべきことに集中することで、そのような雑音を無視するよう心がけてきたのです。ここで私が、正しい答えを示せるというわけではありません。ですが、これは解決しなければならない問題であり、無視することでは解決など図れるはずなどないということも、これまで以上に強く実感しています。この1つの投稿で、問題が解決しないこともわかっています。ですがここでわたしは、すべての人に対するヘイトクライムについての認識を高めることに役立てることができるなら…そう願っています」。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。