ここ最近は暖かい日が続き、冬がそろそろ終わるように思う人も多いのではないでしょうか。なにしろ、もうじき4月。各地で桜が見ごろを迎え始め、ついに春が訪れたようです。

そろそろダウンジャケットをしまって、デニムジャケットが活躍する時期です。何枚も着込まなくても、オープンテラス席で座っていられる日もそう遠くないでしょう…。そんなワクワクした心地にさせる時期でもあります。

そうとあれば、「マニフェスティング(政治の世界で言う“Manifest=明らかにする”という言葉に由来する≒顕在化・実現化)」または「Fake it till you make it.(格言であり、“理想の姿を装っていれば、いずれ実現する”という意)」とでも呼ぶべきアプローチで準備をしましょう。つまり、実際よりも早めに暖かい気候に向けた服装をしていれば、その服装に適した気候になる…ということです。

デビッド・ベッカムも、こうしたマインドセットのようです。2月末、パリでホテルから出てきたところを目撃された彼は、最近よく見かけていた黒のテーラリングに対するアンチテーゼとも言えるコーディネートを見せてくれました。

気温6度のパリで47歳の彼が着ていたのは、バーントオレンジ(“焦げた”ように濃いオレンジ)のスーツとティールブルー(ティール=小鴨のことで、その羽の色である濃い青緑色)のロールネックにプラムカラー(深みのあるジューシーな赤紫)のマフラーを合わせ、スリッポンに至るまでロロ・ピアーナ(Loro Piana)でそろえたルックでした。

おそらくベルベットと思われる起毛感のあるスーツの素材等、温かみを感じさせるファブリックで構成されたコーディネートではありましたが、そこには元サッカースターの彼ならではの堂々たるエレガンスが明確に存在しながら、「これなら自分も着ることができる!」と思わせてくれるような親和性のあるワードローブです。そしてさらには、重くダークな服装から脱するシーズンの幕開けを告げるものと言えるでしょう。

デビッド・ベッカム
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冬になると服が黒やグレーに偏りがちになってしまうのは、自然なことでしょう。特に、クリスマス後の憂鬱な時期にはなおさらです。ですが、暖かくなって外で活動しやすくなり、日光を浴びることでビタミンDの生成も増えれば、幸せホルモンとも言われるセロトニンの分泌も盛んになるので、明るい気持ちにふさわしいカラーを取り入れるのにぴったりの季節だと思います。

ベッカムの選んだこのオレンジカラーは、春らしいパステルカラーというよりも、むしろ秋らしい色合いにも思えます。ですが、このカラーは2022年に披露された23年春夏コレクションショーで注目を浴びたカラーです。ベッカムと同じ英国ブランドのアーデム(ERDEM)によって、愛らしく牧歌的なコレクションの一部、ツイルスーツをこのカラーで発表しています。またブリオーニは、ダブルブレストジャケットにこのカラーを取り入れ、ヴィンテージ感をたっぷりに演出しました。

もし、こうしたミカン色が苦手なら、ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)のリラックス感のあるパープルのサテンスタイル 、もしくはアミ(AMI PARIS)の新緑を思わせるグリーンのダブルブレストジャケットはいかがでしょうか。

言うなら、イギリスの定番チョコレートであるキャドバリーのイースターエッグの箱からインスピレーションを得たような、豊かな色彩のテーラリングであれば間違いないでしょう。ただし、まだ寒さがぶり返す可能性もなきにしもあらずです。念のため、保温性のあるインナーの出番も考慮しておくべきです。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です