アメリカ軍の24代空軍長官に、ヘザー・ウィルソン(Heather Wilson)氏が就任しました。そして2019年4月中旬、空軍が今後さらに科学技術の促進と配備に力を入れて行くことが、正式に発表されました。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。



 以下、ヘザー・ウィルソン空軍長官の見解からの要約となります。少々、恐怖感を覚えるかもしれません。


 歴史に目を向ければ往々にして、そこから真実が浮かび上がってきます。

 恐らくいま私(ウィルソン空軍長官)の声お聞きいただいている多くの人がこの世に生まれ落ちる以前である1940年代50年代において、アメリカ合衆国はその卓越した科学技術力によって、争いの多い世の中にあってもなお平和と安全を確保してきました。特に、当時の空軍が備えていた科学技術力は、やがて訪れることになったジェットエンジンや人工衛星、大陸間弾道ミサイル、宇宙開発、そしてグローバル・ネットワークといった今日の我々の持つ科学技術の発展に欠かせない礎を担っていました。

 そのことは私たちアメリカが、「いかにして今日に至るまでの急速な技術的進化を遂げてこられたのか」の説明にもなります。また同時に、現在のアメリカが直面しているロシア、中国と相対する覇権争いにおいても参考にすべき教訓と言えるでしょう。

 2019年4月、米空軍は今後の軍事力を更新させていくため、いかに科学技術の発展を加速させ、そのことによって他国に対する利益を保つことになるかを旨とした発表をしました。その戦略とは、我々の経てきた過去からの教訓に根差したものとなります。

 それは、「基礎的な部分を底上げしつつ、軍事に最新の科学力を導入してゆく」という内容です。産業分野および学問分野と国防とを結ぶ構造的な仕組みをつくり直し、新たな創造性と最先端の科学技術とを招き入れるのです。可能性の及ぶ限りの水準を目指し、他国の追随を完全に許さないレベルにまで技術力を引き上げる方針になります。

 軍事というものは、すぐに結びつくこともなそうなテクノロジーにまで必須項目のリストに加えてゆくもの…。ですがそれこそが、この新戦略における独創的な点と言えるでしょう。超音速技術や量子コンピュータの技術促進にレバレッジ(テコ入れ)を与え、今後の10年、そのさらに先の時代まで維持できる技術的リードを確立しようという考えになります。

 科学技術によって、世界中で何が起きているのかを瞬時に、妨害されることなく、把握できる能力を米軍が有することがその目的のひとつです。つまりは、ハッキングやサイバー攻撃などをも跳ね返すだけの盤石なシステムの開発が求めれることになるのです。つまりは相手国よりも高速に、テクノロジーとシステムを発展させる必要があるのです。相手国の追跡を無力化するだけの高度な兵器の開発も課題であり、広範囲を即座に網羅する能力を備えたシステムと兵器もまた必要となります。「グローバルな持続的認識」、「レジリエント情報流通」、「高速かつ効果的意思決定」、「複雑で予測不可能性な質量」、そして「破壊の速度と範囲および致死率」と言った表現が用いられることとなります。

 かつて採用された「X-1」有人航空機(ロケット機)や大陸間弾道ミサイル(ICBM)のような革新的新技術の開発と導入を今日において改めて促進するために、より高い競争力を科学技術者たちに求める環境づくりが用意されつつあります。過去の経験を改めて評価し直し、そして同時に現代から次の時代へと現実を推し進めるための重要なアプローチと位置づけているのです。「先端科学および最新テクノロジー、才能ある科学者や技術者に対し、アクセスする能力を相手国も有しており、それは今日のグローバル化した科学技術の結果である」と誰もが認識しています。

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Underwood Archives / Getty Images
1947年撮影、世界で初めて水平飛行で音速を突破した有人航空機「ベル X-1」。

 この現状を鑑みれば、より専門性の高い科学技術の導入と、そのことによる状況の刷新が急務であることは明らかではないでしょうか。状況を刷新することで、実用化を目指した新兵器の開発、実験の促進が促され、また採用された兵器の運用期間の長期化を可能にするのです。このような取り組みがいかに軍事産業に寄与し、また開発される兵器の管理に関わる時間およびコストの削減につながるかは、既に証明されています。

 軍事力に貢献する科学技術を生み出す人々にこそ、将来的な利益がもたらされることになるでしょう。

 国際競争を勝ち抜くための鍵はスピードであり、それゆえに私たちは、科学技術分野における構造改革を迅速に進める必要に迫られているのです。空軍内における科学技術の優先順位を引き上げるためにも、上層部に対する発言力が求められる件であり、技術部門のトップを筆頭とした組織づくりが待望されます。多くの大企業の技術部門トップにある人々についても、同様の役割が求められてゆくでしょう。

 必要となる緊急性を担保するために、「ヴァンガード(vanguard)」と呼ばれる研究プログラムが予定されています。制限ある時間内でのプロトタイプ制作や実験などを行い、1950~60年代の冷戦構造の中、急ピッチに開発された「X-1」や「センチュリー・シリーズ(アメリカ戦術航空軍団)」など、もはや過去の産物となった技術から飛躍的に進化した兵器の開発が、私たちの急務となっているのです。

 私たちに何が可能かは、歴史が裏づけています。いま、それをなさねばならぬときが訪れているのです。


 第24代空軍長官ヘザー・ウィルソン氏の言葉です。

Source / POPLAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。