ボーイング737のドアプラグに関する問題

現地時間2024年1月6日(土)、「冗長化された安全機能(もしもの際のスペア機能)が逆に事故発生源となった」と分析されました。

アラスカ航空1282便がポートランド国際空港を離陸してから僅か6分後、通常使用されない中央キャビン非常口の窓付き扉に取り付けられていたプラグが外れ、ドアが吹き飛び、航空機は高度1万6000フィートで激しく減圧され、これにより緊急着陸が必要となりました。

幸いにも、そのドアの隣に座っている乗客はいませんでした。

ntsb investigates alaska airlines flight 1282 after section of plane blew off during flight
Handout//Getty Images
1月5日に発生したフライト1282にぽっかりと空いた穴は、その窓付きドアプラグが外れたことによるものです。隣接する座席の、明らかなねじれに注目してください。

機内に吹き荒れる嵐の中、ボーイング737MAX-9の操縦クルーは機体をポートランド上空で一周させ、20分後に171人の乗客と6人の操縦クルー全員は激しく揺さぶられながらも重傷を負わずに緊急着陸することができました。その際、気圧の変化による負傷をした人たちがいたほか、個人の品物やパイロットのヘッドセット、機内の一部(ヘッドレストを含む)が機外に吸い出されたということです。



音声記録装置の不具合の原因と影響

この異常な事故の正確な原因を特定しようとする事故調査官は、「失われた26 x 48インチ(約66 × 122cm)の不良ドアプラグを検査する機会がないかもしれない」と懸念していました。しかし、幸運なことにこの63ポンド(約29kg)のドアプラグは、オレゴン州シーダーヒルズのボブさんという教師の家の庭木に絡まって見つかりました。人がいなかったことは、不幸中の幸いと言えるでしょう。その存在は、日曜日の夕方に国家運輸安全委員会(NTSB)に報告されました。

さらに注目すべきことに(重要性は低いですが)、吸い出された2つの携帯電話も見つかったそうです。そのうちの1つはまだ、「飛行機モード」で機能していたとのこと。

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残念ながら、そのジェット機のコックピット音声記録装置は、故意でない過失と2時間の制限により保存されませんでした。このため、NTSB(国家運輸安全委員会)の委員長であるジェニファー・ホメンディによって、全てのジェット旅客機に25時間の記録装置が再設置するよう要請します。

プラグと機体の周囲のドアフレームは、何が原因であったかを特定するためにワシントンDCの研究所で文字通り顕微鏡の下で調査されています。

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問題とされる737 MAX-9バリアント機体

この特定の737 MAX-9ジェット(シリアル番号67501、識別番号N704AL)は、ほぼ新品同様であり、2022年10月31日にわずか2か月前に納入されたばかりでした。したがって、疑念はドアのプラグ製造業者である「Spirit Aerosystems(スピリット・エアロシステムズ)」および組み立て業者であるボーイング社それぞれに向けられました。ただし、アラスカ航空の整備士によってプラグが取り外され、再びボルトで取り付けられた可能性もあります。



翌日曜日、FAA(連邦航空局)はウィンドウプラグとが取り付けられた171機の737 MAX-9機を地上に停止する緊急の航空価値指令を発行し、これらが検査され、将来の事故のリスクを回避するための矯正措置が実施されるまで飛行を禁止することを命じました。具体的な対策は、ボーイングが1月8日(月)の朝に複数のオペレーターに送信したメッセージで詳細に説明されました。

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NTSB B-Roll - Alaska Airlines Flight 1282 Boeing 737-9 MAX
NTSB B-Roll - Alaska Airlines Flight 1282 Boeing 737-9 MAX thumnail
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興味深い視点のひとつは、N704ALが12月7日、1月3日、そして1月4日の3回、自動加圧失敗警告を受けたということです(3日の事件は飛行中に発生)。これらの警告は、機械的な警告システムが標準手順に従ってリセットされたときに再現されなかったものの、仮説上にはなりますが、「不安定なプラグであった可能性がかなり高い」と言えます。

事故機の写真と状況の概要

さらに興味深いことに、航空関連メディア「The Air Current」は8日(月)の午後には「ユナイテッド航空がその737 MAX 9機の少なくとも5機で、ボルトが緩んでいた」と報じています。また「Airline Weekly」の編集者であるエドワード・ラッセルはその後、緩んだボルトのいくつかの画像を共有しました。

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この出来事は、ボーイングの737 MAXジェットにとって新たな打撃となっています。このクラシックな双発の短距離旅客機の第4世代モデルは、1966年に製造が始まり、その歴史は半世紀以上の前にさかのぼります。ですが、この「MAX」の評判は2018年と2019年に発生した2つの致命的な墜落によって大きく損なわれました。

これらの事故は、強引すぎる新しい飛行制御システムと、そのシステムに関するパイロットへの不十分な解説が重なって起こり、その結果、競合するエアバスA320neoが先行して販売されることとなったのです。



最近では、アラスカ航空の出来事にも関連しますが…新しい「737 MAX」の納入は非常に時間のかかる修正が必要な、ドリリング(穴あけ加工)の誤りにより遅れています。このような問題に加え、2012年5月にトラブルを起こした「KC-46Aペガサス」給油機を含む問題から、「これはボーイングの組織的問題であり、企業体質に原因があるのでは」という批評家もいます。

737のウィンドウプラグの問題は?

ストレッチされた(機体が伸びた)「737 MAX-9」のバリアント(同型別バージョン)は、サービス中の3つの旅客搭載「737 MAX」モデルの中で最大で、最大座席数は221人に拡大しています(ただし、最大航続距離がいくぶん犠牲になります)。さらに大きな「737 MAX-10」構成(最大230席)と小さな「MAX 7」モデル(最大172席まで)が、いずれも2024年に就航予定となっています。

52nd international paris air show  day one
Frederic Stevens//Getty Images
737 MAX 9 at 2017 Paris air show--the largest of the fourth-generation MAX series of 737s until the 737 MAX 10 enters service this year.

規制では、190人以上を搭乗させる航空機は、胴体の中間キャビン左右各サイドに予備の非常口ドア(横にヒンジがついたものではなく垂直に折りたたまれるもの)を備えることが求められています。

しかし一部の航空会社は、「MAX-9」モデルに190席超を搭載せず重量を削減し、かつ乗客により多くの脚部スペースを提供するため、追加のドアを避けることがあります。コンフィギュレーションベースライン(製品運用基準となる一定の基本的構成情報)に従って標準構成分厚いドアを備えてしまえば、この種の航空機は、予備のための扉のせいで、最大175人しか乗せられなくなってしまいます。

ですが代替オプションとして、スリムでハンドルのないドアプラグ(※)にすれば、隣にフルサイズの窓を備えることができます。このオプションは、「MAX-9」のサブバリアント(派生型)に固有のもので、再構成(アレンジ)するコストは非常に高いのですが、最大座席数を189に戻すことができます。ただし、非活性のドアよりも再構成にコストがかかります。

(非活性とは言え)ドアのプラグは整備中には、開閉可能であるように設計されています。したがってプラグの下端には、2つのヒンジと援助バネがあり、フレームの上端にはドアを押し出して下方に折りたたむためのローラートラックがあります。 

※ 壁に埋め込まれたように組み込まれた機構。非常口にすることも可能で、窓付きのものもあるため通常の壁と一体化する。プラグドアとも。



とは言え、ドアプラグは通常のフライトオペレーション中には、開けられることはありません。そのため、4本のボルトで固定されています:つまり、上部フレームに挿入された2つの固定ボルトがローラーガイドを拘束し、ヒンジを垂直に底フレームに固定する2つのアレスターボルトがあります。プラグのフレームの両側にわたる12個のストップフィッティング(圧力機構内蔵型の継手)とパッドは、フレーム全体にわたって圧力を再分配するのに役立ちます。

「737」の操縦経験もある元パイロットで、「737型」機管理マネージャー兼危機管理専門家のクリス・ブレイディが収めた下の映像は、上記の機構の詳細を映し出していますのでご覧ください。

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737 Mid-Cabin Emergency Exit Doors - Plug Option
737 Mid-Cabin Emergency Exit Doors - Plug Option thumnail
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CEOも認めた“過ち” 

事故後の航空機内外の写真を見ると、プラグが比較的きれいに外れており、胴体自体が破れたり、底部のヒンジが歪んだりしていないことがわかります。

他の航空会社の複数の航空機で見つかった部品のゆるみは、ボーイングとスピリット・エアロシステムズによる制御機構に問題がある可能性をますます示唆することになりました。

プラグのさまざまなボルトやフィッティングが外部の圧力に対して外向きに引っ張られやすくなる原因を解明することは、これらの企業にとっては不快な追求でしょう。ですが、それは致命的な事故の後になされる質問ほどは不快ではありません。

「Bloomberg」などによれば、その後ボーイング社のデーブ・カルフーンCEOは過誤を認め、「一歩一歩あらゆる面で完全なる透明性を確保し、全力で取り組む」と発言しました。

現在の調査に基づいて得られた洞察と行われた改革によって、将来の事故を防ぐ助けになることを期待します。

Edit&Translation: Keiichi Koyama

From: Popular Mechanics