007」ファン待望の最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が現在、世界中で公開されています。ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが本作で見納めになるということもあり、多くの人々から注目を集めています。

そんな本作の見どころのひとつが、やはり「007」が乗るボンドカーでないでしょうか。予告編を見た際には、すぐさまアストンマーティン「DB5」が目に入ってきたことでしょう。最新バージョンでも機関銃はさく裂…。しかも、いつもよりエキサイティングです。機関銃そのものも進化していて、搭載場所はウィンカーからヘッドライト下へ。さらに、短銃身から回転式多銃身機銃へと進化しています。相変わらず、ボンドカーの仕様には驚かされます。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』最新予告
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カーメディア「CAR AND DRIVER」は、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の劇場公開される数カ月前(『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の英公開日は、2021年9月30日)に、イギリスのシルバーストン・サーキットで「アストンマーティン」の数々のボンドカーを試運転する機会を設けました。

そこで、「その乗り心地はどうだったか?」というと…。オリジナルの「DB5」のほうはまるで、お堀から這い出るかのような乗り心地であるのに対して、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のスタントカーのほうの乗り心地の良さには驚愕(きょうがく)しました。ティモシー・ダルトン時代(1987年の『007 リビング・デイライツ』 と1989年の 『007 消されたライセンス』)の「V8ヴァンテージ」も、それほど良くはありませんでした。が、最新作に登場する「DB5」は公道仕様ではないのにも関わらず、素晴らしい乗り心地だったのです。

実際、このカーボンファイバー製の映画用の「DB5」は、史上最高の「アストンマーティン」と言って過言ではありません。搭載する直列6気筒エンジンを起動させると、運転席はスタッカートの効いたエンジン音によって必要以上に感覚は刺激され、まるでオーガズムの世界へと誘ってくれるかのようです。

また、ステアリングは軽快かつ正確で、実に運転が楽しくなります。オルガン式ペダルセットは、まるバレエのステップのように小気味よく正確に伝わるのが実感できます。また、6速マニュアルトランスミッションにおいては、名外科医が施す切開手術のようにパックリとしたシフトチェンジを可能にしてくれます。

ホイールベースはオリジナルモデルと同様、98インチのスチール製スペースフレームを中心に構成するこのモデル。全体の重量はわずか約2200ポンド(約1トン)で、タイヤもエイボン製の「205/70R-15」で十分なのです。

aston martin db5 stunt car
Max Earey//Car and Driver

このエンジンについては、具体的に言及されていません。ですが、「直列6気筒で、約300馬力を繰り出す自然吸気エンジン」という説明がなされています。そのスペックから推測し、「このエンジンは、2001~2006年の『E46型M3』に搭載されていたBMWの3.2リッター直列6気筒(S54)エンジンではないか?」という仮説を立てると、これに関して誰も否定はしませんでした。

この「DB5」のスタントカーはレスポンス(反応や応答)が極めて鋭く、異常なほどよく整備されているため、さまざまなコーナーをドリフト走行したくなるほどです。また、スロットルレスポンスを鈍らせるターボを搭載していないため、エンジンのパワーはレオスタット(可変抵抗器)のように滑らかに変化します。

つまりこのスタントカーは、「映画用小道具に過ぎない…」とも言えるクルマに抱く期待を、はるかに上回るものだったのです。ワイヤーを巻きつけたジャンク車でもなければ、一芸に秀でたポニー(馬)でもありません。ドライバーに直接働きかけるような美徳を体現しており、その本質が純粋であればあるほど、クルマの価値は高まるということを思い出させてくれます。

そんなアストンマーティン「DB5」のさらなる活躍は、ぜひ本編で鑑賞ください。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は現在、全国の映画館で公開中です。

Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。

From: Car and Driver