女性の活躍を推進することは現代社会における必須の課題となってきている中、これまで頑なに男社会で押し通してきたのがメンズファッション。とりわけトラッドの世界である。確かに、トラッド愛好家の集いは野郎ばっかだし、某DCブランドのデザイナーから「トラッドは女性にもてない(笑)」と馬鹿にされたこともある(モテないのは服じゃなくスキルの問題)。そんな中、クラシックでベーシックな男性服に新風を吹き込む女性が現れた。「マディソンブルー」のディレクター、中山まりこさんである。

「私の大人になるためのステップはアイビーでした。子ども心に男の子のシャツに憧れてね。中学生のとき、貯めたお小遣いを握りしめて、当時青山にあったVANのアウトレットで黄色のボタンダウンシャツと赤いブレザーを買ったわ」と開口一番、中山さんはトラッドおじさんのハートをわしづかみにする青春思い出話を語ってくれた。で、それでそれで?

「服飾専門学校を出たあとは、男性スタイリストのアシスタントをやったんだけど、ここでの経験は大いにメンズファッションの勉強になった。でも、男性と服の話になると情報が多すぎて、うあ~っ、もうおなかいっぱい。勘弁して! となるね(笑)」――あ、耳が痛い…。男性はうんちくが大好きだからね。

「2014年に自分のブランドを立ち上げたときはメンズをやるつもりはなかったんだけど、私のおしゃれの原点であるメンズ仕立てのレディースのシャツを男性に着せてみたらサイズ感が絶妙だと好評で。つくり始めたのはそれからですね」

madisonblue
Hiroshi Watatani
ブランドの定番アイテムの一つである七分袖シャツ。映画『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーン演じるアン王女が、新聞記者から男性もののシャツを借り、袖をまくり上げて着用するシーンから着想を得てつくられたもの。生地は張りのあるタイプライター。ドレスシャツに使われる厚みのあるボタンをあえて採用するなど、細部にもこだわりが詰まっています。3万1900円(マディソンブルー/マディソンブルーTEL 03-6434-9133)

男の子のシャツに憧れた女性がつくった女の子のシャツに、今度は男の子が憧れる。ジェンダーレスとか流行りの言葉は使いたくないけど、それって互いの感性を認め合う素敵な関係ですね。あ、このツイードジャケットいいですね。ん!? 前ボタンと袖ボタンが付いてませんが。「気に入ったボタンがなかったから付けなくてもいいかなと(笑)。カーディガンみたいに羽織ればいいじゃない」――カーディガンにもボタンあるってば!

綿谷画伯がたどり着いた、
進化した今の
トラッドスタイルがこちら

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Hiroshi Watatani
綿谷画伯が特に気に入ったのが、こちらのガンクラブチェックのジャケット。一見するとクラシックなテイストのテーラードジャケットですが、前ボタンと袖ボタンを付けないことで軽やかな雰囲気に仕上がっています。中山さんいわく、「ボタンがないので袖をラフにまくるのもおすすめ」とのこと。13万4200円(マディソンブルー/マディソンブルーTEL 03-6434-9133)

●問い合わせ先/
マディソンブルー
TEL 03-6434-9133

(メンズクラブ2022年1月号より)
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