_RULE 001
黒いサングラスはどんな服にも合うが、とりわけブラックスーツとの相性は格別
_RULE 002
スリムなラペルには、スリムなネクタイを。結び方はウィンザーノットではなく、フォアインハンドノットにすること
_THE SHARP SUIT
シャープなスーツ
スーツの着こなし術を学びたいのなら、映画『レザボア・ドッグス』（1992年）は必見。コードネームで呼び合う登場人物たちがまとうのは、ブラックスーツにプレスを利かせた白シャツ、それから黒ネクタイ…。こんなシンプルな装いなのに、ただならぬ印象を与える。
映画自体30年以上前のものだが、着こなしのルールは今でも通用する。変わったことと言えば、フィット感だろうか。自分の中にある反逆の精神を表現したいのなら、スーツをきちんと仕立てて無駄なものは省き可能な限りシャープに装うこと。
体にフィットさせればさせるほど、実は自由に動けるものなのだ。
_RULE 003
ソフトな生地を使ったスーツは、ネクタイやドレスシューズを合わせることで、よりクラシックな印象に。逆にカジュアルに着こなしたいなら、柄シャツと上品なスニーカーを合わせよう。ただし、ダッドスニーカーだけは避ける
_THE SOFT SUIT
ソフトスーツ
軽量で、（特に肩まわりの）構造をミニマルに仕上げた、こんなスーツが追求するのは、最大限の快適さ。ナポリのテーラリングに着想を得て、ミラノの一流デザイナーたちが取り上げたソフトスーツは、ほどよく肩の力を抜いた正装をかなえてくれる。
ソフトスーツのコンセプトの真逆をいくタイトな装いが主流になった時期もあったが、最近ではその傾向もやわらいできた。プリーツで余裕をもたせたパンツや、やや大きめにカットした胸まわりが、体の動きを促す。
大人のためのサマー・イベントに理想的な装いとして選択肢に入れたい。
_RULE 004
ネクタイをつける気がしない？ それなら、フォーマルなドレスシャツを着よう
_RULE 005
テーラリングには、揺るぎない真実がひとつある。それは、「フィット感がすべて」ということ
_RULE 006
このようなスーツに合わせていいのはスニーカーではなく、レザーのグルカサンダルだ
_THE CLASSIC SUIT
クラシックスーツ
その昔、これがスーツの定番だった。職場でもパーティでも、こうした着こなしが求められたのだ。時代に合わせて形を変えてきたものの、そもそものインスピレーション源だったサヴィル・ロウ的テーラリングの特徴は、今でも認めることができる。
フルかハーフのキャンバス芯にベント、高いアームホール、それから構築的なショルダー…。すべて、着る人間の身体的コンプレックスをうまく隠すために編み出された仕掛けだ。
人々の好みがカジュアルな方向に移行した今、あえてかつての定番をまとい、周囲の視線を集めてはいかがだろうか。
フランネルのスーツを着こなしている紳士を、街中で見かけることがなくなって久しくないだろうか。そもそもスーツ自体ここ15年ほどの間に、存在感をひそめてしまっている。
会社に行くために毎日ネクタイをつけ、ジャケットに腕を通すこともそう多くないだろう。現在は、自らの意思でスーツを着こなす時代と言える。なぜなら、スーツは見た目だけではなく、ふるまいもすっかり変えてしまうのだから。
そしてたまには、思いきり正装して楽しむのもいいものだから…。昔ながらの着こなしは時代にそぐわないかもしれないが、覚えていてほしい決まりごともいくつかある。これから紹介するルールをガイドラインと捉えてくれてもいいし、あえて破ってもらっても構わない。
ただし、スーツを粋に着こなしたいのなら、正統な着こなしの知識は身につけておいたほうがいい。それをぜひ実践してほしい。
_RULE 007
良いスーツはあらゆる罪を隠してくれる
_RULE 008
袖に関しては、（ランウェイでモデルが着ているものがどうであれ）手の甲が隠れるほど長いものはおすすめできない
_RULE 009
幅が広い裾のパンツには、ラウンドトゥを合わせよう。チェルシーブーツやカウボーイブーツなどポインテッドトゥのシューズは避けるべき
_THE OVERSIZE SUIT
オーバーサイズスーツ
職業によっては、スーツを着ることが珍しい現在。多くの人にとって、スーツに投資する目的はパーティや特別なイベントで魅力的に装うことかもしれない。
つまり近年のパリ、ミラノ、ニューヨークなどのランウェイで頻繁に見かけるオーバーサイズスーツが、いま投資対象としてふさわしいということ。大ぶりなプロポーションにパッドの入ったショルダー、それから余裕たっぷりのパンツ。まさに、体にフィットしたスーツとは対照的なオーラを放つだろう。
これこそ、このスーツの神髄。とはいえ、“なんでもあり”というわけではない。ショルダー部分が肩から落ちてはいけないし、パンツが大きすぎるのもいただけない。
_RULE 010
スプレッドカラーや薄手のシルク地のネクタイといったクラシックなスタイルは、
フォーマルな印象を強めてくれる。
_RULE 011
セットとしてデザインされていないものを、合わせないこと。
「十分似ている」は、決して「十分」ではないのだ。
_THE UN-SUIT
アン・スーツ（無構造スーツ）
“スーツにネクタイ”は、自分のイメージと合わないとお考えだろうか。
そんな読者はこのスーツを見てほしい。最近、ハイファッションブランドのデザイナー、それからテーラーも、カジュアルにアレンジしたスーツを続々と発表している。必要とされる上品さを保ちつつ、より快適な着心地を実現しているのだ。その秘密は、チョアジャケットなどワークウエアに着想を得たジャケット。
パンツのフィット感やデザインはさまざまだが、重要なのはジャケットとパンツの色と生地をそろえること。そうでなければ、無構造とはいえ“スーツ”とは呼べないから。
[Staff]
Styling / Andrea Rios
Grooming / Roberto Alvarado Jr. using mac cosmetics
Tailoring / Lucy Payne
Model / Joe West at Marilyn
Photographs / Ryan Slack
Text / Nick Sullivan & Jonathan Evans
Translation / Chihiro Yamashita
※『エスクァイア・ザ・ビッグ・ブラック・ブック』SPRING/ SUMMER 2024（2024年4月15日発売）より転載。掲載内容は発売日時点の情報です。価格の変更や売り切れの場合がありますので、最新情報については問い合わせ先よりご確認ください。
