ここ最近の洗練されたホラー映画のブームの影響により、賞レースでしばしば無視されてきたこのジャンルにも、過去5年で数々の傑作が誕生してきました。
アリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』、あるいはジェニファー・ケント監督の『ババドック 暗闇の魔物』のような作品は、我々にホラー映画の狙いを再確認させてくれたのです。それは、「ホラーというジャンルは真剣なメッセージを不気味な音楽や流血などの演出によって、いかに効果的に伝えられるか」ということです。
今回紹介する8本の傑作ホラー映画は、「ジャンプスケア(突然の大きな音と映像の変化で観る人を驚かせる手法)」のようなテクニックや、「暗い地下室へと続く気味の悪い階段」のような設定に頼らず、より独創的に恐怖を呼び起こしてくれる作品の数々です。
そして何より最高なのは、今すぐ自宅のテレビやパソコン、そしてスマホなどでこのホラー映画を鑑賞できることです(ただし、Netflixのメンバーになりますが…)。
『キャビン』(2013年)
『ジェラルドのゲーム』(2017年)
Netflixが、スティーブン・キングによる1992年の同名小説を映画化した本作。ある夫婦のアブノーマルなプレイが、とんでもない方向に進んでしまう様子を描いたサイコスリラー作品になります。
映画の中には怪物こそ登場しないものの、人気ホラー映画監督として知られるマイク・フラナガンが過激に仕上げた、恐ろしいシナリオであることは間違いありません。
『シャイニング』(1980年)
スティーブン・キング原作小説「シャイニング」を、名匠スタンリー・キューブリック監督が実写化したホラー映画の金字塔です。
主人公のジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、オーバールック・ホテルの管理人の仕事に就くため、妻ウェンディ(シェリー・デュヴァル)と息子ダニー(ダニー・ロイド)と共に移住します。巨大なホテルに住むことになり、嬉しくなったジャックたちでしたが…。
その建物は、前の管理人が自殺したといういわく付きの建物であることが判明します。そんな中、不思議な超能力「シャイニング」を持つダニーは、オーバールック・ホテルでさまざまな超常現象を目撃するのでした…。
ジャックは建物の不気味な力に影響され、妻と子どもを殺しに斧をもって追いかけまわします。その印象的なシーンについては、今でも多くの映画ファンの記憶の中に残っていることでしょう。
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『アメリカン・サイコ』(2001年)
ブレット・イーストン・エリスの同名小説を原作とした、「モダン」とも言えるホラー映画です。
このスタイリッシュでぞっとする映画の中で、クリスチャン・ベールは筋骨隆々で身なりもよく、物腰柔らかで社会的にも成功した連続殺人鬼のパトリック・ベイトマンを演じています。
本作にはブラックユーモアが散りばめられ、不気味なベールの笑顔が異常者の頭の中を、リアルに覗き込んだかのような体験をもたらすでしょう。
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『ゲット・アウト』(2017年)
本作には、トラウマになるような視覚的な怖さは多くありません。ですが、違った意味でのホラー映画となっています。人種差別とコミュニティ形成の怖さが際立つ物語となっており、最後の謎解きまで目を離すことのできない作品です。
第90回アカデミー賞では4部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞)にノミネートされ、脚本賞を受賞しました。
ニューヨークで写真家として活動しているクリス(ダニエル・カルーヤ)は、週末に恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれます。ローズの家族に歓迎されるのですが、黒人の使用人がいることに違和感を覚えるのでした…。
翌日、パーティーに出席したクリスは、白人が多く集う中で一人の黒人男性を見つけます。古風な格好をした彼を撮影すると、その男は「出て行け!」と凄まじい勢いでクリスに詰め寄るのでした…。
男はなぜ「出て行け!」と叫んだのか? そして、なぜ彼は昔の時代の洋服を着ているのか? 作品を観終わったときに、それらの謎が全て回収されるわけです。
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『クラウン』(2014年)
ピエロは、ホラー映画にとって欠かすことのできない存在です。ホラー映画のピエロと言えば、「IT/イット」シリーズのペニーワイズが挙げられることでしょう。しかし今回は、もう一人の不気味なピエロが登場する『クラウン』を紹介します。
息子の誕生日に、クラウン(道化師)の衣装を着て祝った父ケント(アンディ・パワーズ)。しかし、衣装が脱げずに、やがてその衣装が肌の一部になり始めていることに気づきます。そしてケントは、子どもたちをむさぼり喰う悪魔クロインにとり憑かれてしまっていく…という物語になります。
夜に鑑賞したら、なかなかのトラウマになりますので、注意して鑑賞していただければと思います。夢の中に、ピエロが出てこないことを願うばかりです。
『死霊館』(2013年)
ジェームズ・ワン監督が2013年に手がけた作品が、この『死霊館』です。ある人形に7歳のアナベルが憑依(ひょうい)しているという不気味な設定で、大ヒットホラー映画の仲間入りを果たした「死霊館」シリーズの第1作目です。
その後、『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)と『死霊館のシスター』(2018年)が公開され、さらにはスピンオフ作品までが登場しました。2000年代のホラー映画シリーズの代表と言っても過言ではありません。
米ロードアイランド州に建つ一軒家に、ある家族が引っ越してきます。古ぼけてはいるが広々とした夢のマイホームに沸き立つ一家でしたが、奇妙な現象が次々と発生します。
そうして一家は、心霊学者のウォーレン夫妻に助けを求めます。周囲の土地を調べると、恐るべき血ぬられた歴史が明らかになり、夫妻は一家を救おうと館に巣食う邪悪なものに立ち向かうという物語になっています。
奇妙な現象はもちろん怖いのですが、それ以上に私たちの心を震わせるのは、不気味な館の外観と内観です。くれぐれも古めかしい館には、細心の注意を払うべき…そう思わせる映画です。
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Source /Esquire UK
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。