バスケットボールからフットボール、野球から陸上競技まで、どれをとっても中心となるのは若々しいスター選手たちです。「フィールドを制するのなら、脂の乗った20代から30代のうちが華…」と、一般的には言われてきました。

 30歳を過ぎる頃からスポーツ選手としての身体能力は、徐々に減退していくのが一般的に言われていることでしょう。悲しいかな、運動能力の向上は有限なものであり、爆発的な筋力や俊敏性、身体的強度などは、いわゆる「野球脳」や「バスケットボールIQ」などと呼ばれる“頭脳”や、剛速球を投げるのに必要な“感覚”などと比べて、いち早く衰えてしまうものだから、言えるでしょう。

 ところが昨今では、30代になってなお中心選手として君臨し続けるアスリートが増えており、それどころか40代でも、トップクラスの領域で競技生活を続けるスポーツ選手が数多く現れています。

 タンパベイ・バッカニアーズのクォーターバックであるトム・ブレイディ選手現時点43歳は、50歳までプレーすることを宣言していますし、ロサンゼルス・レイカーズのスーパースターであるレブロン・ジェームズ選手(現時点36歳)は、30代後半に入ってもなおNBAを席巻し続けています。

 テニス界のトップスターの座に依然留まるセリーナ・ウィリアムズ選手(現時点39歳)はもうすぐ40歳になりますし、未だ大波を物ともしないサーファーのケリー・スレーターはもう49歳という年齢です。

いったい彼等は、どのようにその地位を保ち続けているのでしょうか。

GOAT(Greatest of All Time)と
呼ばれるアスリートは
いかに最高峰の肉体を
維持しているのか

 背景にあるのは、スポーツ科学の存在です。その進歩の助けを借りて、30代後半を超えてもなお活躍することが可能になっていると言っていいでしょう。そんなわけで今回は、スポーツ科学に通じたトップ・トレーナーたちに話を訊き、皆さんのピークを長続きさせるための効果的な方法を学んでいきたいと思います。

▼レブロン・ジェームズの衰えない爆発力の秘密

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 レブロン・ジェームズ選手は2021年12月30日で37歳になりますが、身体の粘弾性弾と爆発性とに重点を置いて鍛えているため、未だに衰え知らずの活躍を見せています。そこで、バスケットボール・トレーナーであるポール・ファブリッツ氏(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)がおすすめするレブロン選手と同じ方向性のトレーニングメニューを実践することで、あなた自身もその維持に励みましょう。

■弾力性を鍛えるトレーニング

 加速や減速をするのに必要なのが、筋粘弾性です。これは年齢とともに低下していきます。加齢していくアスリートにおすすめのトレーニングが、衝撃を抑えた縄跳びです。

 右脚飛び、左脚飛びに、ローテーション系を加えても良いでしょう。大切なのは高く飛ぶことではく、「リズミカルに弾むような感覚」だとファブリッツ氏は言います。1分間飛んで、1分間の休憩。これは1日3~4セット行います。

■爆発力を鍛えるトレーニング

 関節に大きな負荷のかかるパワー系トレーニングの代わりに、全身を使うメディシンボール投げを取り入れてみましょう。

 立った状態で10kg弱のメディシンボールを胸に抱え、しゃがみ込むようにボールを地面へと下ろしていきます。そして上に向けてパワーを爆発させるよう、できるだけ高くボールを投げ上げます。

 3レップを5セット、これを週に3回行います。

▼トム・ブレイディは、なぜ衰えを見せないのか?

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 43歳のトム・ブレイディですが、NFLでプレーする21シーズンのうち、実に10回のスーパーボウル出場を果たし、うち7回優勝を飾っています。

 最高のパフォーマンスを維持する秘訣は、いったいどこにあるのでしょうか。

 それは、長年トレーニングをともにしているコーチであり、オリジナルブランド「TB12」の共同創業者でもあるアレックス・ゲレロ氏と、日々行っているフォームローリング、およびダイナミックなボディワーク、そして激しい衝撃に負けない身体づくりに欠かすことのできない機能的体幹トレーニングの成果と言えるでしょう。

 では、以下のトレーニング3種を1セットし、これを4セット行ってください。

■ゴムバンド(エクササイズバンド)を使った「パロフ リバース ランジ」

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 ゴムバンド(エクササイズバンド)を持って立ち、腕をまっすぐに伸ばした状態から、足を引いてランジポジションを取ります。また元の姿勢に戻ります。片足10回ずつを目指してください。

■「相撲スクワット」から「ローテーション プレス」

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 ゴムバンド(エクササイズバンド)を片手に持った状態で、スクワットを行います。

 身体を上げながら軸足をピボット(固定)し、上体をひねりながら腕を突き出します。また、元の姿勢へと戻り、動作を繰り返します。片側で10回行ったら、左右を替えてもう10回。

■「スプリットスタンス ハイ」から「ローチョップ」

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 頭より高い位置にゴムバンド(エクササイズバンド)を設置し、ランジの姿勢で構えます。

 頭上右側でハンドルバンドを持った両手を左下まで下ろし、また元の位置へと戻します。片側10回ずつ、計20回です。

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▼ケリー・スレーターのバランス感覚と安定性の秘密

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 サーファーとして、チャンピオンの栄冠を11度も獲得しているケリー・スレーターは、現在49歳。まるで猫のような絶妙のバランス感覚を武器に、未だ20代のライバルたちを圧倒しています。

 ここでは、トレーニング界の鬼才ドリュー・モーコス氏が提唱する以下のメソッドを参考にしていきましょう。

 他の身体能力と同様、「バランス感覚もまた加齢とともに衰えていくものである」と、世界のトップサーファーのトレーニングをサポートするモーコス氏は言います。しかし、うれしい報(しら)せもあります。バランス感覚は無自覚的に備わっている部分が多く、つまり、ちょっとしたコツをつかむことで大きな効果が表れやすいのです。

 「バランスを司るのは、目と内耳、そして末端神経です」、とモーコス氏。さらに安定した体幹と、しっかりと筋力の左右バランスが整った腰もまた、重要な役割を果たします。

 腰の片側が不安定であれば人は本能的にそこをカバーするため、反対側へと傾いて動作を行うもの。つまり、そこで負荷の偏りが生じることで、転倒やケガへ導く要因となるのです。そこでバランス感覚を鍛えるため、「毎朝、ふかふかの枕やクッションを用意してください。そして、歯磨きやスタンディングデスクでの作業といった日常的な立ち作業を、その上で片足立ちで行うようにしてください」というのが、モーコス氏のアドバイスです。

■「ヒップドロップ」

 また、一日を通じて気づいたときには、次の方法で「ヒップドロップ」を行うことによって、腰の安定性をさらに高めることが期待できます。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Low back exercise - hip raise, hip hitch, hip drop.
Low back exercise - hip raise, hip hitch, hip drop. thumnail
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 段差もしくは厚手の本などの上に右足で立ち、左脚はそのまま宙に浮かせます。右脚をまっすぐに伸ばした姿勢で左側の腰を下げたのち、できるだけ高く持ち上げてください。これが1レップです。

 良い姿勢を保つことを意識しながら、できるだけ回数を行います。この運動による負荷が、股関節右側に感じられるのではないでしょうか。左右の足を入れ替え、繰り返し行ってください。

▼セリーナ・ウィリアムズの爆発力の秘訣

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 39歳になったセリーナ・ウィリアムズですが、グランドスラムのタイトルをシングルスで23回も獲得という比類なき実績を誇ります。

 LAテニス・コーチング・アカデミー(LA Tennis Coaching Academy)のオーナーであり、元ATP(男子プロテニス協会=Association of Tennis Professionals)の所属選手でもあるカクパー・アウシアン氏は、「その実績を支えたのは、セリーナの完璧なフットワークと輝かしいパワーとが織りなす最高のコンビネーションのおかげです」と言います。

 屈強な体格ばかりが注目されがちですが、それはセリーナの一部にしか過ぎません。

 「グラウンドストロークの際の身体の回転力こそが、あの驚異的パワーの秘訣です」と、アウシアン氏は指摘します。筋力が必要なことに間違いはありませんが、セリーナ選手のように腰と上半身を回転させながらラケットを振り抜く技術は、ベンチプレスなどで鍛えられるものではありません。そこでアウシアン氏がおすすめるのが、次のトレーニングメニューです。

■「バードドッグ」― 体幹強化におすすめの筋トレ

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 腕立て伏せの姿勢になります。左手と右足を床からゆっくりと、できるだけ持ち上げて2拍数えます。次に元の姿勢へと戻し、左右の手足を入れ替えて同様に行います。

 これを繰り返し60秒間続けます。これを2~3セット行ないましょう。

■「スケーター ジャンプ

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 足を大きく開いて立った姿勢から、スピードスケートを行うように左右の足で交互にジャンプを繰り返します。左右に大きく幅を取ってジャンプし、ソフトな着地を心掛けましょう。これを20秒ずつ、3回行います。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。