[目次]

▼ トレーニング後の筋肉痛の原因

▼ 筋肉が痛くてもトレーニングすべきか?

▼ 筋肉痛でリフティングができないときにジムですべきこと

▼ 運動による痛みを避ける方法


1日5種類のワークアウトを、4日連続でこなしたとします。すると、大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋)は一歩ごとに震え、上腕二頭筋(力コブの筋肉)は熱くなり、さらに胸も痛めば、大臀筋(お尻にある筋肉)は慈悲を求めて(いわゆる「ケツ割れ」によって)悲鳴を上げることでしょう。

ニューヨークを拠点とするトレーナーでThe Irish Yank Society*1の創設者であり、認定パーソナルトレーナーのダニエル・マッケナ氏*2がオンラインフィットネス「Peloton」のインストラクターだった頃の話になります。

いつも普通にオフィスで一週間を過ごすものの、たまに他のインストラクターの代役を務めることもあったそうです。そんなときは5日連続で、さらには5つのワークアウトを撮影しなければならないこともあったそうです。そんなときのことを彼は、こう振り返ります。

「その後、リカバリーのために少なくとも2日は休養が必要でした」と…。

マッケナは仕事をさぼるわけにはいかず、そのときも痛みに耐えながらトレーニングをしなければなりませんでした。問題は、筋トレが仕事ではない皆さんも、そこまでして筋トレをすべきか? です。

たとえあなたが、そこまで高強度のトレーニングを行っていないとしても、その痛みに耐えながらトレーニングをしても、その効果を高めることはできるのでしょうか?

ベンチプレスをする男性
Solskin//Getty Images

サンディエゴのBespoke Treatments*3で理学療法士を務めるレナート・サンチェス氏(DPT, C.S.C.S.)*4は、「痛みに対して、一概に同じことを言えるわけではありません」と言います。つまり、トレーニングができるか、あるいはすべきかの答えは、「イエス」であることもあれば「ノー」であることもあるということになります。

「スクワット後、脚に少し違和感があったとしても、それがトレーニングによる適切な効果であるとしっかりと感じられているのなら、その違和感を乗り越えてトレーニングすることは問題ないでしょう」

競技スポーツのアスリートは、常にそうやってトレーニングをしなければなりません。ですが、それでこそその効果を得ながら、自身の運動能力が維持および高められているのです。が、「脚の筋肉痛が悪化につながるような場合、トレーニングを中止しなければなりません」と彼は言います。

『メンズヘルス』のフィットネスディレクターであるエベネザー・サミュエル氏(C.S.C.S.)*5も同じく、「痛みには、敬意を払う必要があります」と言います。

以下では、サミュエル、マッケナ、サンチェスが「どの程度の筋肉痛なのか?」「それでトレーニングが可能なのか?」「痛くてウエイトトレーニングができない場合はどうすればいいのか?」などを判断するのに役立つヒントを紹介。また、痛みによる最悪の事態を避けるためのアドバイスも伝えます。

トレーニング後の
筋肉痛の原因

肩が痛む男性
Staras//Getty Images

運動後1~2日で感じる筋肉痛は「遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness=以下、略称のDOMS)」と呼ばれ、一般的な筋肉痛として広く認識されています。これに対して、運動中や直後に生じる筋肉痛は「即発性筋肉痛」または「急性筋肉痛」と称され、筋肉の疲労や代謝物の蓄積によって発生するものになります。この痛みは通常、短期間で解消でき、DOMSのように長期間持続することはないということ。

また一方、筋肉の過剰な使用や怪我(けが)による筋肉痛はこれらとは異なり、「肉離れ」や「筋挫傷」と呼ばれるもので、物理的損傷や炎症に基づく筋肉の反応として分類されます。これには、筋繊維の微細な損傷や筋組織内の炎症反応が含まれ、治療や回復が必要な場合があります。

ここでフォーカスするには、一般的な筋肉痛である「DOMS」に関してです。筋肉は通常、ストレスがかかると筋肉はダメージを受けるものです。それをDOMSに関するある研究*6では、「ultrastructural lesions(超微細構造病変)」と呼んでいます。この言葉は筋トレ用語ではなく医学用語で、「電子顕微鏡を使用してのみ観察可能な、細胞や組織の非常に小さな構造上の異常」のこと。

運動後に感じる一般的な筋肉痛であるDOMSは、筋トレなどのストレスで筋肉が微細なダメージを受けた結果です。このダメージを「超微細構造病変」と呼び、つまり電子顕微鏡でのみ観察可能な筋肉の細胞や組織の微小な損傷に対して、身体は免疫反応を引き起こし、炎症を通じて修復プロセスを開始するというわけです。

サンチェスはDOMS時も
適度な運動をすすめるが…

年齢や個人の体質にもよりますが、一般的にDOMSはハードなワークアウトの2~3日後にピークに達し、その後は日ごとに軽減していくとされています。そこでサンチェスは、「リカバリープロセスを早める方法のひとつは、患部の血液を動かすことです」と言います。

つまり痛む箇所に、新鮮で酸素を含んだ血液を流すことで、免疫細胞やプロセスがダメージの副産物(代謝産物と呼ばれます)を洗い流し、より早く修復することができるという考えです。

よってサンチェスに習うなら、筋肉痛を感じるときには身体を動かすことをおすすめします。それが血液を動かすことにつながるからです。

「散歩やジョギング、レクリエーション程度のスポーツなど、軽い有酸素運動はDOMSを早く解消するのに役立つでしょう」と、サンチェスは言います。

実際、筋肉が痛くても
トレーニングすべき?

injury
NoSystem images//Getty Images

「筋肉痛」といっても筋肉が少し痛い程度のものから、マーフ*7やマラソンのような壮大なセッションの後に手足が動かなくなるようなものまであります。サミュエルによれば、“トレーニングができないほど痛いかどうか?” を見極めるには、自分が何を感じているか?」ということと、「それが動きにどう影響するか?」ということが重要だと言います。

「その筋肉をフルレンジで動かしてみて、少し(痛みや違和感を)感じる場合は大丈夫でしょう。その手足の可動域をフルに使ってみて、つっぱりを感じるほどの痛みがある場合、それは“痛めすぎている状態”と言えます。筋肉を収縮させたり弛緩(しかん)させたりするメカニズムがほとんど鈍くなるようなレベルと言えるので、この場合はトレーニングをするべきではありません」

サンチェスも同意見で、次のように言います。

「痛みや不快感がフォームに影響するほど痛むなら、そのトレーニングやエクササイズをするべきではないということです。

つまりスクワットをしていて、大腿四頭筋が痛くていつもより前かがみになってしまったり、背中と上腕二頭筋が痛くて、ダンベルロウをするのに身体を大きく使ってしまったりするのなら、『そのトレーニングはするべきはでない』と身体が言っていると思ってください」

筋肉痛でリフティングが
できないときに
ジムですべきこととは?

フォームローラーを使う男性
Hirurg//Getty Images

「全身が痛いのなら、逆にソファで固まっていてもいけません」と、サミュエルは言います。これは前出のサンチェスのコメントにもあるように、筋肉が硬くなり、血流が悪くなる可能性があるからです。軽い運動は血流を促進し、痛みの軽減や回復を早めることが期待できるというわけです。

しかしながら、そこで無理も禁物です。Zone 2 cardio(ゾーン2程度(最大心拍数に対して60~70%の心拍ゾーン)の軽い有酸素運動)か、30分のウォーキングをするといいでしょう。「そうすることでダメージの副産物が浄化され、次第に痛みがやらぐよう導かれるでしょう」とサミュエルは説明します。

サンチェスによれば、「ストレッチや軽くダイナミックな動きは、血流をよくして痛みを早く和らげる効果も期待できと」いうことです。

「ストレッチ、フォームローラーによる自己筋膜リリース、軽いジョギング、簡単なサイクリング、レクリエーションスポーツをするのもいいでしょう。要は、全身に血流を行き渡らせて体温を上げるのです。そうすることで体内の悪いものを押し出し、良いものを取り込むというわけです」
preview for Daily Mobility: Foam Rolling the Right Way

身体の一部分が痛むものの、まだトレーニングをしたい場合、その部分に影響のない、あるいは関係しない筋肉に集中させるようにしましょう」とサミュエルは言います。例えば、激しいスクワットセッションで脚が痛いなら、上半身のトレーニングに集中するということになります。「ですが、そのトレーニングに使う手足と、その筋肉痛が動きにどのような影響を与えるか?も考えてください」と、彼は話します。

「上腕二頭筋が痛むなら、背中のトレーニングはしないほうがいいでしょう。なぜなら痛む上腕二頭筋を補うようにすれば、身体の動き方も変わるからです。筋肉痛がひどい場合は、その日は連動する部分に関わる動きはしないようにするといいでしょう」

運動による痛みを
避ける方法

ストレッチをする男性
aldomurillo//Getty Images

◇ウォームアップ

「これは、ダイナミックストレッチ*8のルーティンに数分かけることを指すだけでなく、ワークアウトへ入りやすくすることも含まれます」とサンチェスは言います。すなわち、いきなり全てのウエイトをバーに取り付けるのではなく、何セットかかけて徐々に重くして最も重いウエイトまで上げていくようにしょう。そうすることで、筋肉に次第に血液が行きわたるようになり、そこで筋肉も徐々に温まります。すると、大きなウエイトアップによるダメージの軽減、さらに痛みの軽減も期待できます。

◇睡眠を優先する

マッケナによれば、1週間に5日間5種目のトレーニングに取り組むときの最大の疲労対策は、この「睡眠」だったということです。どのような状況であれ、そのような量をこなすべきではありませんが、「休養を優先させることはあなたのトレーニングプランにとって重要かつ効果的であることに変わりはない」ということになるでしょう。筋肉痛を避け、早く和らげるにはリカバリーの時間を大切にすることが第一。

「そのためには、毎晩7~8時間の睡眠をとることが最良の道となるでしょう」と、彼は断言します。

◇刺激を混ぜる

サンチェスによると、彼の理学療法の実践に来るクライアントの中には、毎日運動して同じエクササイズを繰り返し、週に6回または7回も同じ動作を行う人もいるそうですが、これは持続可能(または賢明)なものとは言えません。

「もしあなたが頻繁にトレーニングしないと気がすまないタイプのなら、バリエーション豊かに行うことです」と、彼は言います。それには1日おきに上半身と下半身の動きを交互に行ったり、少なくとも毎日違うエクササイズを行うことで、前日鍛えた筋肉に対して回復の時間をつくってあげてください。

◇時間をかけて一貫したトレーニングを続ける

DOMSの主な原因のひとつとして、そのトレーニングに対して初心者であることが挙げられます。サンチェスによると、トレーニングを始めたばかりだったり、しばらくジムから遠ざかっていたりすると、より多くのストレスや負担が筋肉にかかり、痛みも強くなる可能性が高いということ。

トレーニングに一貫性を持つことで、時間が経つにつれて感じる筋肉痛の度合いを減らすことが望めます。この背景には、定期的な運動によって身体が徐々に適応し、筋肉が強化されるという考えに基づいています。そうして筋肉がトレーニングの負荷に慣れ、回復力の向上も望めるため、痛みを感じる頻度や程度が徐々に減少していくはずです。

[脚注]

*1:The Irish Yank Societyのアプリ紹介ページ

*2:ダニエル・マッケンナ氏のインスタグラム

*3:Bespoke Treatmentsの公式サイト

*4:レナート・サンチェス氏のインスタグラム

*5:エベネザー・サミュエル氏のインスタグラム

*6:アメリカ国立医学図書館のデータベース「PubMed」で公開されている「Advances in Delayed-Onset Muscle Soreness (DOMS): Part I: Pathogenesis and Diagnostics」を参照

*7:Murph 日常生活において繰り返し行う動作をベースとした、画期的なトレーニング方法であるCrossFIT(クロスフィット)の中でも特に有名なワークアウトが「Murph(マーフ)」で、1マイル走、100回プルアップ、200回プッシュアップ、300回スクワット、そして再び1マイル走を含むチャレンジ。この運動は高い体力を要求され、筋力と持久力の両方を試すためのもの。名前の由来は、2005年6月28日にアフガニスタンで戦死した米軍ネイビーシールズMichael Murphy(海軍中尉)が毎朝こなしていたワークアウトメニューということから「Murph」と命名したとのこと。

*8:Dynamic stretching 身体を動かしながら筋肉を伸ばすアクティブなストレッチのこと。ジョギングやアームスイングなどの動的な動きを取り入れたストレッチングで、筋肉を温め、柔軟性を高めると同時に、運動に必要な筋肉の範囲を広げることを目的としている。

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Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US