もはや言うまでもありませんが、睡眠は必要不可欠なものです。

ノースウェスタン・メディスン・セントラル・デュパージュ病院のクルジート・ギル医師(主な専門分野:睡眠医学)は、「身体は睡眠中に再生を促す神経ホルモンを分泌し、記憶は整理され、さらに神経系のバランスを元に戻すなど重要なことを行っていることがさまざまな研究で報告されています。これらはすべて、記憶力や心臓と脳の健康維持のためにも大切なことなのです」と言います。

多くの専門家の意見を平均して言えば、「成人には毎晩、7〜9時間の睡眠をとるべきでしょう」と推奨されています。それを受けてCDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、「成人の3人に1人は、十分な睡眠をとることはできています」と発表されています。ですが、ここに希望の光もあります。それは…ニューヨーク大学総合てんかんセンターおよび睡眠センター のメディカル・ディレクターおよびアメリカ睡眠医学会のフェローを務め、ニューヨーク大学グロスマン医学部の准教授でもあるアルキビアデス・J・ロドリゲス医師(てんかん、および睡眠医学の専門医)によるコメントです。彼は、「私たちの大半は、7〜7.5時間の睡眠でも問題なく機能するはずです」と言います。

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ちなみに猫は平均して、1日16〜17時間程度の睡眠時間を必要とするとのこと。成猫は14時間程度眠るそうですが、生後5カ月未満の子猫や高齢期の猫になると、日に20時間以上寝ることもあるそうです。

とは言え、私たちが必要とする睡眠時間は、人によって異なることもわかっています。睡眠医学の専門家としてMen’s Health USのアドバイザーでもあるW・クリス・ウィンター医師は、「中には、睡眠の量が不十分な場合でも問題がないという人たちもいます」と加えます。ウィンター医師によれば、「そんな方々は、“horsepower gene”なる遺伝子を持っていると考えら、これはナルコレプシー(居眠り病)の病因となる遺伝子の変異体である可能性もあることが報告されています。この“horsepower gene”を持っていると考えられる人は、『7時間の睡眠は必要』と言われていながらも、わずか4.5時間ほどの睡眠でも問題なく活動することができる」と言います。※これについては、のちほど説明します。

その一方でギル医師は、「あまり睡眠をとらなくても平気」と思っている人たちについて、「症状を認識していなくても、パフォーマンスレベルと集中力は低下しているはず」と指摘します。

短期的には、注意力と気分を左右することになる可能性もあります。「慢性的な睡眠不足は免疫機能の低下、ホルモンバランスの不均衡、記憶や認知機能の低下を引き起こす可能性があります」と、ギル医師は説明します。ちなみにアメリカ睡眠医学会では、睡眠不足が3カ月以上続く場合を「慢性」とみなしているそうです。

少ない睡眠で問題ない人は
本当にいるのでしょうか?

統計学において、他の値から大きく外れた値というものは何事にもあるもの。「ショートスリーパー」と自負する人たちがそれで、毎晩6時間未満の睡眠であっても身体に問題が起こらないでいる…短時間睡眠体質の人々、健康への影響なしに毎晩6時間未満の活動できる人々がその例です。

ナポレオン
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居眠りする皇帝ナポレオンを描いた、1921年に完成したとされる絵画。作者は不明。ナポレオンは、「3~4時間しか睡眠をとらなかった」という伝説もありますが、ナポレオンの個人秘書として11年間寝食を共にしていたルイ・アントワーヌ・フォヴレ・ド・ブーリエンヌの回顧録には、「実は7時間はとっていた」とつづられています。また、「ナポレオンは居眠りも好んでしていた」とのこと。

2009年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、睡眠に影響を及ぼす遺伝子変異「DEC2」を発見しました。そして、それを持っている人は1日の睡眠時間は平均して6時間強(正確には6.25時間)であったのに対し、この遺伝子の突然変異体を持っていない人は8時間強の平均睡眠時間だったという結果を報告しています。さらに2019年、この10年間にもわたって実施した研究の結果、ショートスリープに関連する別の遺伝子変異「ADRB1」も発見されました。

被検者として、およそ100ペアの双子を中心として行われた別の研究では、この遺伝子変異による現象によって、ノンレム睡眠(深い眠りで脳も身体も休んでいる状態ではありますが、筋肉は完全には弛緩してはいない状態)が維持されることも報告されています。さらに、「不眠に対する抵抗力も提供する」という結果も出たことを発表しています。

本当に必要な睡眠時間を知るには?

実際、多くの人が「そんな少ない睡眠では、何もできない!」と訴えるでしょう。自分を、「ごくわずかな睡眠でも大丈夫」という幸運な人だとは思わないはずです。ですが実際、ショートスリーパーはごくわずか(おそらく人口の1%)ですが存在しています。あなたのオフィスにも、数人はいるかもしれません(例えばエスクァイア日本版編集長は、自身を「ショートスリーパー」だと言います)。つまり、ほとんどの人は健康のため、十分な睡眠が必須ということになるのです。

ですが、それぞれの人が正確に「何時間の睡眠が必要なのか?」を具体的に明らかにするための特定のテストなどはありません。ですが、前出のギル医師はこう言います。「自然に眠たくなったときに寝て、自然に目覚めたときに起きること…特に休みの日にはそうすることで、自分の身体が持つ自然な概日リズム(体内時計)を評価するとともに、睡眠に関するさまざまな情報と照らし合わせて決定を下すことができるでしょう」とのこと。

「それは一晩だけというわけではありませんよ。その決定は、今後は一貫して行う必要があります」と、同じく前出のロドリゲス医師は付け加えて説明します。そんな彼は、毎日午後9時30分~午後10時の間にはベッドにもぐりこみ、毎朝午前5時には起床するということです。そして、目覚まし時計の必要もないようです。

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必要な休息を確実に取るための方法としてギル医師は、「就寝と起床の時刻を明確に定め、そこから15分以上のズレがないように」と、厳密な睡眠/覚醒スケジュールを設定することをすすめています。

また、ぐっすり眠るためのルーティンとして、就寝時刻の少なくとも2時間前に電子機器(スマートフォンやタブレット、パソコン、テレビなど)の電源を切ることなど、つまりは、先達たちが言い伝えてきてくれた古典的な躾(しつけ)を実行すればいいのです。さらに理想的には、(できれば毎日)運動することを習慣化することも目指してください。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From Men's Health.com