イタリアファッション界の重要人物のひとり、アレッサンドロ・デラクア率いる「N21 / ヌメロ ヴェントゥーノ」。品の良さが漂うシャープなテーラリングに繊細な感覚を乗せたコレクションは、所有できるラグジュアリーとして大人の魅惑的な姿に寄り添います。

今回そんなウェアに袖を通すのは、1990年代~2000年代のサッカー界の象徴であり、創造性あふれるプレースタイルを持つアーティストの称号“ファンタジスタ”として世界中を魅了した元プロフットボーラーのアレッサンドロ・デル・ピエロ。当時、世界最強リーグと誉れ高きしセリエAで優勝を飾ること6度。UEFAチャンピオンズリーグ制覇、同大会得点を獲得、そしてFIFAワールドカップ優勝。主要大会のほぼすべての優勝トロフィを掲げたと言っても過言ではない、正真正銘のフットボール界のレジェンドです。

そんなデル・ピエロとイタリアンエレガンスが邂逅(かいこう)。一方はピッチの上で、もう一方はファッション界において、アーティスト同士が引きつけ合う魅惑的な瞬間を追いました。

アレッサンドロ・デル・ピエロ
Makoto Nakagawa(CUBISM)
知性と品格を漂わせるヌメロ ヴェントゥーノのサックスブルーのダブルカラーシャツ。パンツと共にグラデーションで表現し、大人の余裕を感じさせるべくベルトレスで仕上げる。ダブルカラーシャツ7万5900円、パンツ7万8100円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)
アレッサンドロ・デル・ピエロ
Makoto Nakagawa(CUBISM)
カジュアルなスタイルだからこそ、一点を際立たせることでそのステートメントはより鋭利な表現となる。ロゴアイテムを使用するなら、これくらい割り切ったほうが大人には確実にハマる。抜け感を出す白いインナーもお忘れなく。コート17万500円、スウェット6万500円、Tシャツ4万9500円、パンツ6万500円、スニーカー9万7900円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)
アレッサンドロ・デル・ピエロ
Makoto Nakagawa(CUBISM)
豊かな起毛感で男のたたずまいを優しく飾ってくれるレオパード柄のジャケット。これ1枚で十分アイキャッチとなるアイテムなので、その存在感を生かし、シンプルな印象かつ素材感の近しいパンツでコーディネート。ジャケットはぜひ襟を立てて、裏地のブラックを際立たせた着こなしを。全体のイメージを引き締めつつ、颯爽とした印象を楽しみたい。ジャケット14万3000円、Tシャツ3万8500円、パンツ6万3800円、スニーカー9万7900円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)
アレッサンドロ・デル・ピエロ
Makoto Nakagawa(CUBISM)
一見無難にも見えるジャケットは、素材次第でラグジュアリーに転がる…飾らない大人を飾る。そんなリラックス気分に浸る休日にこそ楽しみたいスタイル。シャツブルゾン9万7900円、Tシャツ4万9500円、パンツ7万8100円、スニーカー9万7900円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)
アレッサンドロ・デルピエロさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
寒い時期に頼れるアイテムといえばロングコート。そこに好感度高く大人を漂わせるなら、これくらいリラックスした気分でコートを纏いたい。品ある男の落ち着きを思わせるキャメルカラーが絶妙。日常にも嘘のないエレガンスを求める大人に向けて。コート19万8000円、ニット7万1500円、Tシャツ4万9500円、パンツ5万3900円、スニーカー9万7900円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)
アレッサンドロ・デル・ピエロ
Makoto Nakagawa(CUBISM)
ネイビージャケットに白シャツという黄金ルールに基づいたコーディネート。研ぎ澄まされたジャケットのシルエットとその美しさが、全体に緊張感をもたらし、無造作に見せて実は計算し尽くされた大人のスタイル。ほどよいドレッシーさのあるこんなジャケットが1枚あれば、重宝することは言うまでもない。ジャケット14万3000円、シャツ3万6300円、パンツ10万7800円、スニーカー9万7900円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/N21 表参道 03-3746-0021)

なめらかな着心地に
気分が高まります

Esquire:今日着ていただいた「N21 / ヌメロ ヴェントゥーノ 」はいかがでしたか?

デル・ピエロ:身体に吸いつくようなフィット感に驚きました。それと、生地のクオリティの高さですね。カジュアルであれフォーマルであれ、大人は素材の良さにこだわりたいものですが、今日着た服はどれも上質感がありました。デザインは基本的にどれもリアルクローズでしたが、とにかくラインが美しいので、服に任せるだけで簡単に着飾ることができそうです。テイストも街中で映えそうなもの、スポーティなものなど幅が広い。それでいてモノのつくりと質がいいから、大人が着ることに説得力を感じました。気分も高まりますね。

Esquire:母国イタリアであらゆるタイトルを獲得した後、あなたはオーストラリアでプレーしました。その後インドへ渡り、2014年に現役を引退。現在はコメンテーターの仕事を中心に世界中で活躍されていますが、引退後の今の暮らしで最も力を注いでいることは?

デル・ピエロ:生活の中心は、自分の子どもたちですね。12歳、14歳、16歳、ちょうど思春期の3人の子どもたちです。親として子どもを育てる毎日は挑戦の連続ですし、責任も伴う。難しいことばかりですが、その挑戦ひとつひとつがとても楽しいですし、やりがいを感じています。子どもたちと一緒に過ごす日々は、時間がたつのもとても早いですね。正直、今あなたに話しながら「わぉ! 上の子はもう16歳なんだよな」と改めて思ってしまいました。

Esquire:私(筆者)個人の意見としてですが、サッカーにおいてあなたの右に出る人はいませんでした。どんな状況でも心憎いほどに落ち着き払ったプレーで、私たちをいつも楽しませてくれました。そんなあなたにとって…、子育てでもっとも難しいと感じることは何でしょうか?

デル・ピエロ:難しい質問ですね。わが家は男の子も女の子もいるので、それぞれ感じることは違いますし、ちょうど思春期でもあるので何事も一筋縄ではいかないのですが。強いて挙げるとすれば、8年間暮らしたロサンゼルスから去年ヨーロッパに戻ってきたことが最も難しかったかもしれません。

私はまだしも、子どもたちにとっては国をまたいだ移住はとても大きな変化です。彼らはLAで育ちました。当然そこで身に着けた生活習慣があるし、友人も大勢いるわけです。西海岸から離れることは、親としてとてもつらく難しい決断でした。だから、この経験を乗り越えてくれた子どもたちは、本当に偉いと思います。彼らにとってこの経験がただ辛いだけのものではなく、前に進むための糧になっていると信じています。

Esquire:仕事の面においては?

デル・ピエロ:今は、さまざまな挑戦をしています。私をここまで連れてきてくれたカルチョ、つまりフットボールの指導者としてのライセンスを取得するために動きつつ、コメンテーターや投資家としてスタートアップ企業の応援も行っています。LAではレストランも出店しています。もちろんイタリア料理のお店で、楽しくも素晴らしい経験です。

それと、フットボールのアンバサダーとして世界各国のイベントを巡るのがとても好きですね。新たな国、新たな土地、新たな人たちに出会える貴重な経験です。今回もこうやって、日本にまた戻ってくることができましたから。今の私には、新たなことに挑戦したり学ぶための時間があるので、吸収できることはすべて吸収して、今できることをしっかりやっていきたいです。


■PROFILE

portrait of juventus fc captain, alessandro del piero
©EDGE SRL

アレッサンドロ・デル・ピエロ/1974年11月19日生まれ。イタリア・ヴェネト州出身。地元のチーム・パドヴァを経て、1993-94シーズンにイタリア屈指の人気チームユヴェントスへ移籍。ロベルト・バッジョの移籍に伴いエースナンバーの10を背負いチームの顔として活躍。艶やかなプレースタイルと創造性豊かなキラーパス、通称デル・ピエロゾーンと呼ばれるゴール斜め45度の位置からのシュート決定率の高さから、“ファンタジスタ”として世界中のフットボールファンを魅了する。当時世界最強リーグと呼ばれていたセリエAにおいて6度の優勝を飾るとともに、欧州ナンバーワンを決めるUEFAチャンピオンズリーグでも優勝。イタリア代表としては1998年、2002年、2006年と3大会のワールドカップに出場、2006年のドイツ大会でW杯制覇。2012年にはオーストラリアのシドニーFCへ移籍。2年間活躍した後、2014年にインドのデリー・ディナモスへ移籍。同年現役生活にピリオドを打つ。現在はサッカー解説者やアンバサダーとして活躍するかたわら、実業家としての一面も持つ。

alessandro delpiero
©EDGE SRL

失敗から何を学び、
どう成長するか。
その過程に美学がある

Esquire:あなたは13歳で親元を離れ、ヴェネト州パドヴァのユースチームに入り、2014年にインドの首都にあるクラブでユニホームを脱ぎました。それは26年間にもわたる長く壮大な航海でした。歓喜や困難を前にするあなたの姿を私たちも目撃していますが、フットボールがデル・ピエロという1人の男性に授けてくれたものは何でしょうか?

デル・ピエロ:「情熱をささげる」ということ。そして「間違えて、学び、そこから再起する」ということに尽きると思います。フットボールに負ける日もあれば勝つ日もあるように、子どもでも大人でも、うまくいく日もあれば、そうではない日もあります。大切なのは、うまくいかなかったことじゃない。失敗から何を学び、どう成長していくか。この過程にこそ、人間としての美学があるんです。私の場合、その成長という果実をもたらしてくれたのがフットボールであり、成長の意味を教えてくれたのもフットボールでした。

Esquire:あなたは、フットボーラーとして誰もがうらやむような輝かしいキャリアを描いてきたわけですが、現役時代に抱き続けてきた、成功の糧になるような信念があれば教えてください。

デル・ピエロ:戦うこと、勝つこと、より良くなること。特に挑戦することを常に大事にしてきました。私自身、競争することが好きで、たとえ友人と楽しむ卓球ですら勝ちにこだわるほど。いくら才能にあふれていたとしても、人にはどうしても弱い部分があるわけです。そこをただ残念に思うのではなく、常に改善していくことを意識していました。

Esquire:プロフットボーラーを引退した現在はいかがですか? どのような言葉や哲学を大事にされていますか?

デル・ピエロ:まず自分自身が大切にしているのは「知ること」です。好奇心を持って自分自身の目で実際に物事を観察し体験する。そういったマインドセットのもとで得られる感情や感覚をとても大切にしています。

今はインターネットで情報を引き出せる時代ですが、その情報に左右されるのではなく自分の好きなことにしっかりと時間を注ぐこと。大事なことは、それほど遠くに行かなくても、身近な場所にあるものです。「好きこそものの上手なれ」、とはよく言ったもので、好きなことを突き詰めていけば上達しますし、それがかけがえないものとして残るはずです。

この考えは現役時代、子どもの頃から少しずつ変化してはいますが、核の部分は何一つ変わっていません。私は子どもの頃から好奇心旺盛で、どんなことに対しても「知りたい」という気持ちを強く抱く人間でした。人生は学びの連続です。20歳、30歳、40歳、その時々の考えを自分の人生に反映させながら、知見を広げていく。「知る」ということで人は成長していくわけですから、大切なその根幹をブラさずに、時代に合わせて柔軟に物事をとらえるようにしていました。

portrait of alessandro delpiero
©EDGE SRL

情熱、努力、学ぶこと。
そこに少しの運もね(笑)

Esquire:今日こうしてお話をうかがっている私自身もそうですが、幼いころからデル・ピエロ選手のプレーを見て育ち、そして影響を受けながら育った子どもたちが今や大人となり、ビジネスの第一線で活躍しています。そんな方々に今だから贈る言葉はありますか?

デル・ピエロ:応援していただき、ありがとうございます。そして私からも、皆さんが今やっていることの健闘を祈ります。皆それぞれ進む道は違いますが、どんな道であっても大切なことは、情熱を持つこと、努力をすること、そして学ぶことです。時にはそこに少しの幸運も必要かもしれません。

たとえどれだけ情熱を持って人生を歩んでいたとしても、間違いを起こしてしまうこともあるでしょう。私だってそうです。でも、そんなことは問題じゃないんです。打ちひしがれて、非力な自分責めて、無力さに涙が止まらない夜を過ごしたとしても、日はまた昇ります。また別の新しい日がやってくるのです。くよくよせず少しずつでも前に進んでいけばいいんです。

Esquire:本日はありがとうございました。私自身、小学生の頃からTVであなたを応援し、時にはゲームでもプレーしていたほど、デル・ピエロ選手に影響を受けて育ってきました。貴重なお話を頂き、とても感動しています。

デル・ピエロ:こちらこそ! 感情というものは人間が持ちうる中で最も大事なもの。だから自分も現役時代にゴールを決めたり外したりしたときはいつも、ファンの皆に伝わるように、感情を大きく表現していたんですよ(笑)


●お問い合わせ先
ヌメロ ヴェントゥーノ 表参道
TEL 03-3746-0021

Photo:Makoto Nakagawa(CUMISM)
Styling:Kazumi Horiguchi
Hair:Jun Goto(ota office)
Interview & Text:Shane Saito
Edit:Ryutaro Hayashi(Esquire)