【もくじ】
■免疫細胞の約70%が腸にある

 -善玉菌を増やし種類豊富な腸内フローラをつくる
 -腸内フローラとは?
■免疫力とは?

 -免疫力の仕組み・役割について
 -免疫力が下がる原因とは?
■免疫力を高める方法

 -腸内環境を整えて、腸内細菌を“善玉菌”優位にする
 -自律神経の乱れを整える
■「ビフィズス菌」や「乳酸菌」のはたらきの可能性を考察

 -ビフィズス菌の抗インフルエンザ効果
 -大腸菌から腸を守る乳酸菌とビフィズス菌
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 新型コロナウイルス感染症など、身体を守る方法として基本になるのは「手洗い」や「消毒」、そして「マスク着用」などの対策が効果的であると言われています。が、「免疫力を高めてウイルスに打ち勝つ」という方法も最善の手段であることもよく聞かれます。

 これまで、免疫力の向上に期待できる「ビタミンD」の栄養素をより多く摂取できる食べ物や飲み物を記事で紹介してきました。

 では、風邪や肺炎、インフルエンザなど…、さまざまな病気から身体を守るために、免疫の働きを良くするには日常生活においてどのようにすればいいのでしょうか。

 そこで改めて、「“免疫力”とは何か?」という基礎知識をふまえ、「ビオフェルミン製薬」の研究をもとに専門医に知見を得ました。日常生活を見直し、免疫力を高めて病気に打ち勝って快適な生活を目指すための対策を探ってみましょう。


現役の医師が記事を監修

今回の記事作成にあたり、江田クリニックの江田 証院長が監修協力をしています。

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◇PROFILE
江田クリニック / 江田 証(えだ あかし)院長
医学博士、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。自治医科大学にて救急部を含む内科全科を研修後、自治医科大学消化器内科に入局。自治医科大学消化器内科助手、宇都宮社会保険病院内科医長、下都賀総合病院消化器科臨床指導医を経て現職。 日本消化器病学会総会等の学会、 シンポジウムにて現在まで25回の講演。これまで米国消化器病学会(American Gastroenterological Association)にて5回(サンフランシスコ、アトランタ等)、ヨーロッパ消化器病学会(United European Gastroenterology Week)、アメリカボストンペプチド学会(International Symposium on Regulatory Peptides)にて2回の研究発表。


◇免疫細胞の約70%が腸にある

 細菌やウイルスなどの病原菌を撃退してくれるのが、身体に備わった免疫です。

 免疫システムを担っているのは免疫細胞ですが、腸にはこの免疫細胞の約70%が集ま っています。つまり腸は、免疫のカギとなる臓器です。

「腸内の善玉菌を増やし、種類豊富な腸内フローラをつくる」


 小腸の粘膜では細胞同士が手をつないだ状態で、病原菌などが体内に入り込まないようにバリアし、身体を守っています。しかし腸内環境がよい状態、つまり腸内フローラのバランスがよい状態に保たれていないとそのバリアが弱まり、有害なものが体内に入りやすくなってしまい、身体の不調や病気へとつながる傾向にあります。

 また、われわれは腸内に多くの種類の菌が存在する腸内フローラの「多様性」を目指すべきところになります。この多様性が失われた場合は腸粘膜のバリア機能が衰え、免疫力が低下すると言われています。よって、流行性の病気にかかりにくい身体の持ち主、さらには長寿の人の多くは、この腸内フローラのバランスがよい方が多いと考えられているのです。

 ヨーグルトや納豆などの発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれ、整腸効果が期待できます。さらに、その上で食物繊維を摂取することも大切なこととなります。便秘気味の人は特に、水溶性の食物繊維を意識して摂りましょう。水溶性食物繊維が多い食材には、納豆、インゲン豆、きな粉などの豆類に加え、ごぼう、かぼちゃなど根菜類やイモ類、さらに海藻類、果物などがあります。また、ライ麦パンや玄米など主食になる食材もあるので、日ごろの白米を大麦、玄米入りのご飯へと変える、またはパンは全粒粉パンやライ麦パンに変えるだけでも、水溶性の食物繊維の摂取量を増やすことができるのでしょう。

 ただし、 腸の知覚過敏とも言える過敏性腸症候群(IBS)と診断されている方の場合、発酵食品や食物繊維を摂るとかえって便秘や下痢の症状を悪化させてしまう場合もあります。特に高FODMAP(=オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールを示す)の食品を摂った場合、症状を悪化させてしまうこともあるので要注意です。

 さらに、摂りすぎに注意すべきは肉類です。

 高脂肪、高タンパクに偏(かたよ)った食事は、腸内フローラのバランスを崩す原因になる傾向にあります。便秘などの症状があり、食事 だけでの改善が難しい場合には、整腸剤やサプリメントを活用することもおすすめとなります。

「腸内フローラ」とは?

 ひと言で「腸内フローラ」と言いますが、この言葉をイメージできていない方も少なくないでしょう。そこで簡単に説明しましょう。

 私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しており、その数はおよそ1000種で100~1000兆個、重さにすると約1~2キログラムと言われています。それらは特に小腸から大腸にかけて生息しており、これらのさまざまな細菌がバランスをとりながら、腸内環境を良い状態にしています。

 そして、それを顕微鏡で腸の中の様子を覗くと、それらはまるで植物が群生している「お花畑(flora)」のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれるようになったとのこと。そして「腸内フローラ」は健康に関わる、以下の3つの役割を担っています。

  1. 消化できない食べ物を身体に良い栄養物質へつくり変える
  2. 腸内の免疫細胞を活性化し(バリア機能を向上させ)、病原菌などから身体を守る
  3. 「腸内フローラのバランス」を保ち、健康を維持する

■免疫と密接に関係があり、注目されているのがビフィズス菌

 インフルエンザ感染症の予防法として、ビフィズス菌の一種である「Bifidobacterium longum MM-2(以下、ロンガム菌 MM-2)」の経口投与により、 NK細胞(ナチュラルキラー細胞=自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の1種であり、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要な存在)など全身の自然免疫を活性化させインフルエンザウイルスの増殖が抑えられることがマウス感染モデルを用いた研究結果として、「腸内細菌学雑誌 28巻 2号 2014」で発表されています。

 さらに「ロンガム菌 MM-2」は、NK細胞を活性化させて身体全体の免疫力を底上げすることから、「MM-2がインフルエンザウイルス以外の感染症に対しても効果を示す可能性が高く、広く感染症を予防するのにも効果的ではないか?」と考えられます。

 いずれにせよ、まだマウスでの研究結果であることは否めませんが、「ロンガム菌 MM-2」など免疫活性化作用が期待できる乳酸菌やビフィズス菌を日常的に摂取することは、「多くの人々にとっても健康増進へと導くの要因となるのではないか?」と多くの期待がなされています。

 私たちは誰一人として、同じ「腸内フローラ」を持っている人はいません。腸内フローラが違えば、その腸内フローラに合う食品も異なると言えるのです。偏った食事や間違ったダイエットでも、腸内フローラは乱れてしまうでしょう。そのため、自分の腸内環境に合った食事法を手に入れることが必要となるのです。
 

◇免疫力とは?

 では、そもそも免疫とは何なのか、基礎知識を学びましょう。

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【1】免疫力の仕組み・役割について

 免疫力は、身体を病気から守る大切な防御機能です。呼吸や食べ物を介して、身体の中には細菌やウイルスなどの病原体、さらに花粉などの異物が侵入しようとします。このウイルスや細菌などの病原体が体外から体内へ侵入するのを防いだり、体内で生じるがん細胞を攻撃して死滅させたりするなど、幅広い守備範囲で体を病気から防いでくれます。

 ところが、何らかの原因によって免疫力が低下したり、免疫反応に異常が起きたりすると感染症にかかりやすくなったり、アレルギーやリウマチ、動脈硬化などさまざまな病気が生じやすくなります。

 風邪をひく、よくインフルエンザにかかる、 癌(がん)が発生するリスクが高まるということは、この免疫力が弱まっているためと言えるのです。

【2】免疫力が下がる原因とは?

 免疫の仕組みによって、ウイルスや細菌などの病原体から身体を守っています。しかし、現代人の生活では免疫の仕組みが正しく働かない要因が増えています。

 免疫力低下の原因はさまざまですが、主なものとしては 次のようなものが挙げられます。

  1. ウイルス・病原菌などの外的要因
  2. 加齢
  3. 睡眠不足などの生活習慣
  4. 偏った食生活
  5. 運動不足
  6. ストレス

◇免疫力を高める方法

 免疫力を高める2つの有効手段をご紹介します。

【免疫力を高める1】腸内環境を整えて、腸内細菌を“善玉菌”優位にする

 腸内環境は長い期間をかけて、自身の食習慣や生活習慣によってつくられるものです。便通だけではなくメンタルヘルスや肌の調子など、身体のさまざまなところに影響を与えるとする研究もあります。

 腸内細菌には、人体に良い影響を与える善玉菌と悪い影響を与える悪玉菌、どちらでもない日和見菌(ひよりみきん)があり、生活習慣や食生活の影響を受けて それぞれ数を増やしたり減らしたりしています。

  • 善玉菌とは
    …ビフィズス菌や乳酸菌など。善玉菌がつくる酸により、腸内環境が酸性側に保たれることで悪玉菌の増殖を防ぎ、様々な病気のもとになる物質が発生しないようにする役割を担っています。
  • 悪玉菌とは
    …代表的なものはウェルシュ菌やブドウ球菌など。腸内の環境をアルカリ側にして有害物質を増やします。
  • 日和見菌とは
    …腸内で優勢な菌を味方する特徴があります。善玉菌が多い腸内環境では特に悪さをしませんが、悪玉菌が増えてくると悪玉菌の味方になります。

 ただし悪玉菌と言っても、消化・吸収を助けたり免疫機能を高めたりと、身体の健康を維持するために必要な役割も果たしています。つまり、「腸内環境が“よい”状態とは、多種多様でバランスよく腸内細菌が存在していること」です。

 腸内細菌が善玉菌優位であれば消化を助けてくれたり、ビタミンやホルモンの一部をつくってくれたりする共生関係を保ち、そのことにより免疫力が高まることがわかっています。

■ 毎日の食生活で「腸内フローラ」を整える

 肉類や魚介類、卵、乳製品などに含まれている動物性たんぱく質や脂質の多い食事に偏ってしまうと、「悪玉菌が増える原因」になります。

 しかしながら、その悪玉菌を増やす食品を摂らないということは、実際問題として難しいことでしょう。厳しい制限は、食事の楽しみを半減させてしまいます。腸内に多くの種類の菌が存在する「多様性」というのも、整った「腸内フローラ」の重要なポイントのひとつでもあります。なので、いろいろな食品を楽しんで食べることは腸内細菌の多様性を高めるため、「腸内フローラ」にも良い影響をもたらしてくれるのです。

 つまり、「腸内フローラ」を整える(=腸活)ために大切なことは、善玉菌を増やすものを積極的に摂ることとなります。食生活の面でもバランスのいい食事を摂り、適度に運動することで、肥満防止にも気をつけるようにしましょう。

■善玉菌を含むもの × 善玉菌のエサとなるものを一緒に摂る

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 理想的な「腸内フローラ」へと整えるためには、善玉菌を摂ることばかりではなく、善玉菌のエサとなるものも合わせて摂ることも大切です。よりよい効果を期待できます。

 身体に良い善玉菌を含むものをプロバイオティクス、その善玉菌の栄養源となるものをプレバイオティクス、そして両方を合わせて摂ることをシンバイオティクスと呼びます。善玉菌とエサをセットで摂ることで、より効果的に「腸内フローラ」を整え、健康を促進すると言われているのが現状です。

  • 発酵食品
    …乳酸菌やビフィズス菌、酵母菌、麹菌などの善玉菌が含まれています。継続的に食べるとより効果的だとされています。塩分が多い食品もあるのでご注意ください。
    例:ヨーグルト、ぬか漬け、納豆、キムチ、味噌、チーズ
  • 整腸剤
    …さまざまな種類の乳酸菌やビフィズス菌が凝縮されており、効果的に「腸内フローラ」を整え、 便秘や軟便を改善します。

【免疫力を高める2】自律神経の乱れを整える

 「自律とは、他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動する」神経系統であり、心臓や血圧、消化管、発汗、ホルモン分泌など自分の意思では調節できない系統です。

 この自律神経は、2系統で調節されています。

 活動しているときに活発な「交感神経」とリラックスをつかさどる「副交感神経」があり、身体のリズムを保ってくれています。

 実は、腸の働きをコントロールしているのは自律神経ということ。交感神経と副交感神経がそれぞれ優勢になることによって腸の弛緩・収縮が行われるため、自律神経のバランスが乱れると腸の動きも乱れ、便秘になったりお腹をこわしてしまう可能性があります。

 人は活発に活動している時間が長いと、「交感神経が優勢になりやすい上、加齢とともに副交感神経の働きが低下する」という研究報告もあります。この交感・副交感神経の一方が緊張し続けると 、いずれの場合も免疫力が落ちるという研究結果が導き出されているのも事実です。

 なので、適度な緊張(日中は交感神経優位)とリラックス(夜間は副交感神経優位)というメリハリが必要だと考えらています。 そのためにはしっかり休息すること、リフレッシュのために適度な運動をすることなど、十分な睡眠と疲れ・ストレスの解消が欠かせないと言えるでしょう。
 

■睡眠不足の解消

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 眠っている間は副交感神経が優勢になるため、睡眠不足になると自律神経の乱れに直結し、腸の動きも乱れがちになります。交感神経の影響が強くなると、寝つきが悪くなったり睡眠の質が低下するという悪循環に陥ってしまうことも…。

 睡眠時間を長くとるだけでなく、就寝前からリラックスを意識し、お気に入りの寝具などで心地よく眠れる状態をつくっておくことも効果的となるでしょう。
 

■疲れ・ストレスの解消

 自律神経を乱れさせる原因には、身体と心の疲労も大きく関わっています。

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 スマートフォンの見過ぎによる眼精疲労(※本記事をスマホでご覧いただいている読者の皆さま、申し訳ございません…)、働きすぎ、ストレスなどによる精神的な疲労は不眠などにもつながり、自律神経に悪影響を及ぼします。

 ストレスを発散する方法を探したり、深呼吸をしたり、全身の力を抜いてリラックスできる休息時間を意識的につくるよう心がけましょう。
 

◇「ビフィズス菌」や「乳酸菌」のはたらきの可能性を考察

 プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)には、病原菌と戦う免疫細胞を活性化させる働きがあります。乳酸菌やビフィズス菌によって感染から身体を守り、強く健康な身体づくりへと導いてくれます。

【1】ビフィズス菌の抗インフルエンザ効果

 ビオフェルミン製薬株式会社神戸研究所が行った実験で、A型インフルエンザウイルスに感染させたマウスにビフィズス菌の一種である「B ifidobacterium longum MM-2」を継続投与したところ、インフルエンザウイルス感染にともなう生存率および症状スコアの改善など、抗インフルエンザ効果が結果として見られました。

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ビオフェルミン製薬
A)生存率、 B)症状スコア 「インフルエンザウイルス感染後 12 日間の症状解析」

 また、肺および脾臓(ひぞう)由来のNK活性が増強し、さらに、NK細胞の活性化因子である「Th1サイトカイン(細胞内病原体の感染防御に関与 する細胞)の遺伝子発現を誘導していた結果も…。

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「肺および脾臓由来NK細胞の活性」出典:自然免疫の賦活化を介した「Bifidobacterium longum MM-2」の抗インフルエンザ効果(Medical Science Digest 2015年41巻4月号)

 このように、脾臓および肺のNK 細胞の活性化など、全身の自然免疫の賦活化(ふかつか)を介して、インフルエンザウイルスの増殖が抑えられること結果が導き出されたのでした。

【2】大腸菌から腸を守る乳酸菌とビフィズス菌

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病原性大腸菌に破壊された絨毛
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乳酸菌とビフィズス菌摂取により正常に活動を続けている絨毛 出典:本間道ら:学術映画『腸絨毛と細菌」制作・アイカム1970 ベニス・パドバ国際科学・教育映画祭 医学部門第一位賞 銀牛頭賞


 マウスに病原性大腸菌を投与すると、腸の内壁にある絨毛(じゅうもう)が破壊されますが、2種の乳酸菌(「フェ ーカリス菌 129 B10 3B」、「アシドフィルス菌 KS 13」)と「ビフィズス菌 G9 1」を摂取しておくと、そのダメージもなく正常な状態を保つという結果も出ています。
 

◇まとめ

 「免疫」の基礎知識から、腸を守ってくれることが大いに期待できる「乳酸菌」「ビフィズス菌」のことがより一層理解できたでしょうか。日常のちょっとしたことに意識を向け、それを少し変えるだけで、この“免疫力”というものの向上が期待できるわけです。

 あなたも日常生活を見直し、丈夫な身体を維持するために免疫力を高めるよう努め、病気知らずな心身ともに快適な生活を目指していきましょう。

Cooperation / 大正製薬