[目次]
▽武知海青:LDH所属パフォーマーがDDTプロレスで白星デビュー
▽プロレス挑戦の決心「本気でやる以外に認めてもらう方法はない」
▽体脂肪は驚異の3%!試合が終わってもトレーニングをし続ける理由
▽THE RAMPAGEが進化できるかどうか岐路に立つツアー
2024年2月25日(日)、16人組ダンス&ボーカルグループTHE RAMPAGEのパフォーマーとして活躍する武知海青さんが、東京・後楽園ホールで行われたDDTプロレス*¹のイベントでプロレスデビュー*²。
この日、武知さんは上野勇希選手および勝俣瞬馬選手とチームを組み、6人タッグマッチに出場、見事勝利を収めました。試合ではドロップキックや飛びつき式フランケンシュタイナーで注目を集め、既存のTHE RAMPAGE ファンだけでなく、プロレスファンもその身体能力と技の美しさで魅了しました。
そんなプロレスデビュー戦を終え、現在はパフォーマーとして「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2024 "CyberHelix" RX-16」で日本各地をめぐる多忙な武知さんに「メンズヘルス日本版」がインタビュー。
プロレスファンがSNSで投稿していた絶賛の声は彼の耳に届いているのでしょうか――その強靭(きょうじん)なボディのつくり方やストイックに追い込める理由、そして異分野で活動する覚悟までお話をうかがいました。
*1:DDTプロレス 1997年設立の日本のプロレス団体で、ユニークなエンターテインメント性の高い試合スタイルが特徴です。コメディ要素や非伝統的な場所での試合も行う。“DDT”とはDramatic Dream Teamの略。
*2:武知海青デビュー戦「SPECIAL 6-MAN TAG MACH」
もともとダイナミックなダンスに定評がある武知さん。そのベースとなる鍛え抜かれた身体と運動能力を活かして演じたのが、2022年にAbemaで配信されたドラマ『覆面D』(現在はNetflixでも配信中)でのプロレスラー役でした。それが縁となりプロレスデビューにつながったわけですが、プロレスラーに求められるボディメイクは、パフォーマーのそれとは当然ながらアプローチがまるで異なるということ。
「パフォーマーとして必要なのは持続性で、プロレスは瞬発的なパワーがすごく重要なんです。例えるなら、プロレスは短歌的というか、パンパンパンという短いスパンで力の出し切る感じです。ツアーになると、1本の長編映画のようにパワーをつなげていくイメージになるんですけど…。例えたことで、余計わかりにくくなってしまったかもしれませんね(笑)。
とにかく試合までは瞬時に動けるように、ウエイトトレーニングに全振りしたトレーニングをしていました。ベンチプレスは140㎏、スクワットとデッドリフトについては、ジムにある重りを全部つけても足りないので、測定不能です(笑)。
あとは増量ですね。パフォーマーとしては77キロが理想なんですけど、85キロまで増量しました。筋肉の上に脂肪をのせてあげることで、激しいコンタクトでも骨と骨がぶつかりあわないようにして、自分も相手も(致命的なけがにまで至らないよう)守るようにするんです」
過酷な練習とトレーニングを続け、挑んだ初試合。タッグを組んだのは、人気と実力を兼ね備え選手がそろい、いま1番勢いのある団体のひとつDDTに所属する上野勇希選手と勝俣瞬馬選手でした。
「ドラマでお世話になり、生で初めてプロレスを観たのが上野選手。1人の男として、すごくカッコいい方です。勝俣選手とは、試合の前日が初顔合わせだったんです。僕が人見知りのせいで、その日はあまり喋(しゃべ)れず当日を迎えたんですけど、楽屋で緊張している僕に『大丈夫か』『困ったら俺たちが助けるから』って話しかけてくれて、リラックスさせてくださいました。お二人とも大先輩の選手ですけど、とても温かいお兄ちゃんです」
パフォーマーとして幾度となく大舞台を経験してきた武知さんでも、プロレスのリングは未知の世界。やはり、これまでになく緊張したようです。
「入場するまでは、『これまでやってきたことを一発勝負で出し切れるのか?』という緊張、不安、そしてプレッシャー…いろんな感情がグワァ~ッと押し寄せてきましたね。でも、カーテンが開いた瞬間にスイッチが入って、そこからは全く怖さも感じず、『僕の持つ全てをぶつけてやろう!』と前向きになれました」
実は今回の衣装は、入場時に羽織っていたフェザーのついたマントにインスパイアされています。そう聞くと、武知さんはとても喜んでくれました。
「アーティストとして、目に見える部分はすごく大事だと思っていて、コスチュームにはこだわりを詰め込みました。マントは、ライオンのたてがみのイメージでつくっていただいたんです。僕は柔道もやっているんですけど、戦うときはライオンのようにありたくて、帯には“獅子奮迅”という文字を刺しゅうしているんです」
試合ではパフォーマーらしく、華やかにダイナミックな技を決めた一方、相手からの攻撃をモロに受ける場面も。ですが、苦しみながらも力強いまなざしで相手を捉えニヤリ…。痛みが闘争心に火をつけ、戦うことを心の底から楽しんでいるかのような勝負師の顔に一変します。そして勝利で試合を終え、マイクを持って最初に出た言葉は「プロレス最高!」でした。
「試合では練習でもできなかったくらい、高い打点のドロップキックが出せて! あれは100点以上の出来でしたね。実は、攻撃を受けるほうの練習はあまりしていなくて、本番でたくさんもらったんですけど、こちらがいい技を出せば相手はもっといい技を出して真剣に向かってきてくれる――そんな互いを高め合うような感覚があって、攻撃されたことで一気に火がつきましたね。どんどん熱が上がっていって、『もっと来いよ』みたいな。
『マイクパフォーマンスがある』なんて聞いていなかったんですよ。なので、何を話すか全然考えていなくて。それでも、あの言葉がまず出たってことは、それが僕の本心で、見に来てくださった方々に一番伝えたかったことなんでしょうね。
プロレスは技そのものだけでなく、相手の技を受け止める姿勢であったり、選手それぞれのストーリーも含めたりしたうえでトータルで美しいスポーツ。やっぱり、プロレス最高です!」
そもそも、現役のアーティストがプロレスに挑戦することは、異例中の異例。大谷翔平選手の二刀流が当初は批判されていたように、日本にはまだ、一つの道を地道に究めることのほうが評価されがちな風潮も日本には残ります。それでも、武知さんはプロレスのリングに立つことを選びました。
「僕は末っ子でお姉ちゃんに守られて育ってきたので、自分から何かをしたいというタイプではなく、ずっと安定を選んできたんです。でも、THE RAMPAGEに入ってから、自分らしい表現ができないことにだんだんと苦しくなって…」
グループにおける自分の個性とは何だろうか?――そう葛藤していたときに、身体能力を存分に活かせる仕事に出合いました。
「悩んでいた時期の2019年に、肉体系の番組で総合優勝という結果を残せたことが自信になって、『この身体が、自分の看板になるんだ』と初めて手応えを感じたんです。それからはチャレンジすることを大切にしていて、2022年は柔道で黒帯を取ったんですけど、2023年は何も踏み出せず…。そのことが自分の中でずっと引っ掛かっている中で、プロレスのお話をいただきました。柔道もプロレスも、エンターテインメントとは違う土俵に乗り込むからには、本気でやる以外に認めてもらえる方法はないですね。何も言わせないくらいのスキルと熱い想いがないと。
プロレスへの挑戦は、けがをしてライブに出られなくなるんじゃないか? とか、心配してくださるコメントもたくさんいただきましたし、もちろん批判も覚悟していました。『それでもチャレンジしたいか?』と自問自答した結果が、『したい』だったんですよね。
きっと皆さんも、年齢を理由に諦めてしまったり、前例がないから無理だと思い込んでしまったりして、一歩を踏み出す勇気が持てないことってあると思うんです。そういう方々が会場の1000人のうちのたった一人であっても、戦う僕を観て、新しい一歩を踏み出して、後悔のない人生へと歩み出してくれたら…僕は本望です」
アーティスト活動とプロレスを両立させることがたやすくないことは想像に難くありません。それでも、やはり武知さんの次なるチャレンジが見たくなります。
「初試合は想像以上にいい評価をいただけたんですけど、僕にとってはあれが最低ライン。また出させていただくことがあれば、新しい技に挑戦したいですし、次は自分がフィニッシュを取りたいですね」
憧れはスポーツエンターテインメントの最高峰と言われる、アメリカのWWE*³でも愛されたオカダ・カズチカ選手。
「打点の高いドロップキックをはじめとする迫力の技の数々に、ドシッとした貫禄ある姿、エンターテインメントとしての楽しませ方などなど、オカダ選手から学ぶことがたくさんあります」
*3:WWE 「World Wrestling Entertainment」の略で、1950年代に設立されたアメリカのプロレス団体。全世界で最も有名かつ成功しているプロレスのプロモーションとされる。プロレスの試合だけでなく、ストーリーラインやキャラクターが織り交ぜられたエンターテインメントとして世界的人気を誇る。
この日の撮影は、試合の約1カ月後。実は、4月6日(土)から始まるツアーに向けてすでに脂肪を落とした状態で、体脂肪は驚異の3%! パフォーマーとしての理想である77キロまでウエイトダウン済みです。なぜ、そんな短期間でウエイトコントロールが可能なのでしょう。
「クリーンな脂肪のつけ方をすると、落ちやすいんです。マーガリンとか人工的なものではなく、MCTオイル*⁴やオリーブオイル、アーモンドとか自然由来のものから脂質を摂っていました」
試合を終えたらすぐに、パフォーマーとして最高の自分になるためのボディメイクにギアチェンジ。「その夜くらいは、勝利の美酒に酔ってもいいのでは」と思ってしまいますが…。
「もちろん喜びましたよ。でも、終わった瞬間に、僕にとってあの試合はもう過去。常に先を見て、次の目標のために動きたくなるんです。
僕のベースはTHE RAMPAGEの武知海青であり、THE RAMPAGEのメンバーや『僕が生きる存在』とまで言ってくれるファンの人がいます。メンバーの顔に泥を塗るわけにはいかないですし、僕を信じてくださる皆さんの心を折らないためにも、アーティスト活動もプロレスも生半可な気持ちではできないんです。『負けました、すみません』では済まされないという覚悟で、死に物狂いでやらないと」
そして、真っすぐな目つきでこう続けます。
「『1日だけなら』って甘えると、『あのとき、ちゃんとやっていれば…』って必ず後悔するのがわかるんです。『昨日食べちゃったな』『トレーニングさぼっちゃったな』と思いながら、いくら口で『頑張っています』と言ったところで、想いは絶対に伝わらないんですよね。自分に恥じることはしたくないですし、自分自身に絶対に嘘はつきたくないんです」
挑戦を続けるために常にストイックに追い込んでいて、苦しくならないのだろうか? そう尋ねると、朗らかな笑顔で「いいえ、幸せです」と言います。
「努力して手にした喜びをみんなと分かち合うことが、僕の一番の幸せで生きがいなんですよね。弱音を吐くようなら、この職業が向いていないということです。でも、僕は楽しめている。だから、きっとこれが天職だと思います」
現在、ツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2024 "CyberHelix" RX-16」の真っ最中。さまざまなボーイズグループが世界中でしのぎを削る現在、「このツアーがグループにとって、勝負どころです」と力がこもります。
「ライブのチケットは決して安くはないですし、お金も時間もかけて会場に来てくださる皆さんに対して、『後悔させない空間にしなくちゃ』って、メンバー一同いつも話すんですけど、僕としてはこのツアーは、THE RAMPAGEがさらなる進化がどうできるかの分岐点だと捉えています。
どんどん新しいグループが出てきて、2017年にデビューした僕らはもう若手ではないですし、どうしてもずっと右肩上がりというわけにはいかないんですよね。だからこそ、このライブツアーは“THE RAMPAGEならではのよさ”を伝えることが大事だし、“これからも応援したいと思っていただけるか”どうか、勝負だなと…。それでも、“変わらないよさ”もあると思うんです。THE RAMPAGEの3人ボーカル&13人パフォーマーというこの体制は昔から変わらない、そしてこれからも大切にしたい“よさ”であり“強み”だと考えています」
ツアー中の5月には、16人のスポーツ男子が熱き戦いを繰り広げる『最強スポーツ男子頂上決戦』(TBS系5月3日よる6時30分~放送予定)の放送も控え、昨年の覇者である武知さんには大きなプレッシャーがのしかかります。
「激しい戦いの連続なのでけがのリスクがありますし、本心では、万全の状態でライブに臨みたいんです。でも、前回王者が出ずに“逃げた”って思われるが嫌なんで…。出ると決めた以上は、これで負けたなら仕方ないと思えるまで、前回以上の身体に仕上げて臨みます。この番組におけるライバルは、前回の自分--自分しか見えてないです」
*4:MCTオイル Medium Chain Triglycerides(中鎖脂肪酸オイル)の略で、ココナッツオイルやパーム核油から抽出される中鎖脂肪酸を主成分とする油。消化・吸収が速く、エネルギー源として直接利用されやすいため、ダイエットやスポーツのパフォーマンス向上、ケトジェニックダイエットの支援に利用されている。
武知海青さんが「Esquire(エスクァイア日本版)」
公式YouTubeチャンネルに登場!
アスリートやアーティストの肉体をつくるトレーニングに欠かせない5つのアイテムを紹介する「メンズヘルス日本版」の新企画に武知さんが登場します。愛用スニーカーからトレーニングベルト、パワーグリップなど、こだわりのつまったトレーニンググッズがラインアップ。また、減量中の食事ルールやここぞという試合の際にお守りがわりとして肌身離さず持ち歩くモノ、LDH独自のトレーニングルールなどを伝授してくれました。
「Esquire(エスクァイア日本版)」公式YouTubeチャンネルはこちら
ライブツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2024 "CyberHelix" RX-16」を開催中
2024年、世界に変革をもたらすために進化を遂げたTHE RAMPAGEが、16人のDNAを融合させ新たなエンターテインメントの創造へパフォーマンスを通じて未来へメッセージを発信。
武知海青/1998年2月4日生まれ、兵庫県出身、総勢16名からなるTHE RAMPAGEのパフォーマー。2014年に開催した「EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION」にて候補メンバーとして選出。同年9月に開催した新木場STUDIO COASTでの武者修行ファイナルで、正式メンバーとなる。2017年1月25日、1st SINGLE「Lightning」でメジャーデビュー。ジャンルとしては、KRUMP/Jazzを得意とする。2019年には、「SUMMER STYLE AWARD 2019 ROOKIE CHALLENGE CUP」のスタイリッシュガイ部門で総合優勝を獲得。2022年に出演した配信ドラマ「覆面D」にてプロレスラー役を演じたことをきっかけに、2024年2月25日に後楽園ホールで行われたDDTプロレスリング主催「Into The Fight 2024」でプロレスデビューし、初勝利を飾った。
Instagram @kaisei_takechi_official
Photograph / Toki
Videograph / Kazune Yahikozawa
Styling / Hiromi Toki
Hair & Make-up / Aki
Text / Sakiko Koizumi
Edit / Minako Shitara(Esquire)
cooperation / Hotel Indigo Tokyo Shibuya