[目次]

▼ 筋肉は脂肪より重い?

▼ 体組成は健康全般にどのように影響するか?

▼ 健康的な体組成とは?

▼ 筋肉量および体脂肪率の計算方法は?

▼ 筋肉量を増やし、脂肪を減らす方法は?


日々努力を重ねながらもバスルームで体重計に乗ってみると、その数字が以前よりも上がっている。そんな落胆の瞬間を経験したことはありませんか? そして挫(くじ)けてしまう…。でも、まだ早いかもしれません。まずは体組成計を使用してみてください。

ワークアウトに励み、ヘルシーな食事を心がけていても、時には体重計が予想外の数値を示すこともあります。それは、体脂肪量は減っている一方で筋肉量が増えているから。それが数値で理解できるのが、この体組成計のいいところです。

ですがなぜ、脂肪を減ってきているのを実感していても、体重は増えるのでしょうか? それは筋肉が脂肪よりも密度が高く、同じ体積であればより重いからです。

ニューヨークのBespoke Treatmentsの理学療法士であるブレット・ワーナー*1氏は、「体重計だけが全てを物語るわけではない」と指摘しています。つまり、単純に体重の重い軽い…自身の身長にふさわしい体重を求めるだけではなく、体内の脂肪・筋肉・骨の割合--つまり、体組成の数値を知ることのほうが大切なのです。単純な体重の数値以上に、私たちの健康状態を推し量ることができるはずです。

脂肪と筋肉、および骨の密度はそれぞれ異なります。一般的に筋肉は脂肪よりも密度が高く、少ない体積でより多くの重さがあります。そのため、積極的に運動をして筋肉量を増やすと体脂肪率は下がるものの、体重が増加することがあるのです。

重要なのは体重の数値ではなく、健康的な体組成を目指すことと言えるでしょう。筋肉量の増加は代謝を高め、より健康的な身体をつくることにつながります。したがって、体重計の数字が少し増えたとしても、それが筋肉の増加によるものであれば、健康的な変化と言えるはずです。ですが、ちょっとわかりにくいかもしれません。なので、この問題について、専門家に説明してもらいましょう。

筋肉は脂肪より重い?

考える男性
Antonio_Diaz//Getty Images

小学校の理科の授業を思い出してみてください。1ポンド(約450グラム)のセメントと1ポンドの羽毛の質量は同じですが、体積は1ポンドの羽毛のほうが、はるかに大きくなります。これはセメントのほうが、羽毛よりも密度が高いからです。筋肉と脂肪に関しても同じことが当てはまります。ワーナー氏は次のように話しています。

「筋肉は脂肪よりも密度が高いので、同じ重さであれば、筋肉の体積は脂肪よりも小さくなります。このため、体脂肪率が低い人はスリムな外見でも体重が重くなり、体脂肪率が高い人のほうが体重は軽いということも起きるのです」

体重が増えると普通は気になるものですが、筋肉量の増加によって体重が増えているのなら、実際には良い傾向なのです。そのため、ただ体重だけを気にするのではなく、体組成について理解することが重要です。

体組成は健康全般に
どのように影響するか?

走っている男性
Tara Moore//Getty Images

筋肉組織が多いということは、基礎代謝(安静時の消費カロリー)が高いということになります。なぜなら、筋肉の活動を維持するためにはより多くのエネルギーが必要だからです。

加齢により筋肉量および筋力が低下する「サルコペニア」は30代から始まるとされる症状で、筋力やバランス感覚、関節の安定性の低下が起き、日常的な作業に支障が生じるようになります。こうした症状が進めば、自立した生活は難しくなるでしょう。ワーナー氏によると、除脂肪体重(LMB)の数値が高ければ高いほど、身体機能を長く維持できます。サルコペニアは自然に起こる現象で、回復するには意図的に筋力トレーニングを行うしかありません。

体脂肪率が高すぎると、糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中などの疾患のリスクが高まることはこれまでの研究でわかっています。また、私たちは体脂肪率を低くすることを目標にしがちですが、体脂肪率があまり低くなり過ぎると、エネルギーレベルや骨密度の低下、心臓疾患のリスクが生じることも忘れずに。

健康的な体組成とは?

「男性は体脂肪率14~24%、女性は20~30%を目標にするとよい」とワーナー氏は話します。

アスリートの場合はこれよりも少ないかもしれませんが、身体の正常な機能に必要な最低限の脂肪細胞を維持するためには、女性は10%、男性は5%を下回らないようにする必要があるとされています。

これは、体脂肪は単にエネルギーの貯蔵に役立つだけでなく、ホルモンのバランスの維持、体温の調節、内臓を保護するクッションの役割など、重要な生理的機能を持っているからです。

つまり体脂肪率が推奨値を下回ると、女性であれば月経不順など月経周期に影響を与えることがわかっています。男性の場合はテストステロンのレベルが低下し、性欲減退や筋肉量の減少、疲労感の増大などが起こり得るとされています。また、共通してエストロゲンの低下によって骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクを高めるとのこと。

筋肉量および体脂肪率の
計算方法は?

体重計とメジャー
Peter Dazeley//Getty Images

残念ながら、「体脂肪率を家庭で正確に測定するための信頼性の高い方法はない」と言われています。それには、医療機関や専門スタジオで体組成スキャンを受ける必要があります。

測定方法にはいくつかの種類がありまずが、精度には差があります。最も一般的とされているのは、生体電気インピーダンス法(BIA)により体成分分析装置「InBody」で測定するか、自宅用の体組成計を利用します。ただ、BIAスキャンは広く普及していますが、かなり不正確ということです*2。電流を利用して体内のさまざまな物質を特定する仕組みで、多くのジムで採用されているのはBIA機器です。

皮下脂肪キャリパーは、最も古いと言われている測定手段の一つです。この検査では、皮下脂肪をつまんで測定し、それを計算式に当てはめて体脂肪率を出します。技術的には自宅でも可能(キャリパー自体は比較的安価で入手しやすい)ですが、この測定法を行うには、人体解剖学についての深い理解と多くの練習が必要です。

正確な測定方法で知られている検査スキャン法は他にもあります。ですが、正確な方法になるほど、検査費用は高くなります。二重エネルギーX線吸収法、静水圧体組成分析法、高精度体脂肪測定装置(BOD POD)による測定は、いずれも精度の高い検査方法です。さまざまな医院や特定の医療クリニック、専門的なウェルネス・センターで実施されています。保険の適用範囲にもよりますが、これらの検査は医師の処方せんがあれば保険が適用されることもあります。

筋肉量を増やし
脂肪を減らす方法は?

お腹まわりを測る男性
DragonImages//Getty Images

あなたの現在の体組成の状態によって脂肪を減らすか、筋肉を増やすかのいずれか(または両方)が必要になります。米NSCA(National Strength and Conditioning Association)発行の機関誌『ストレングス・アンド・コンディショニング・ジャーナル』が2020年に発表したメタデータ分析*3によると、「脂肪量を減らすと、同時に筋肉量を増やすことが可能」ということが示唆されています。が、この研究は若いアスリートを対象に行われたものであり、それ以外の人々には当てはまらないかもしれません。

また、メンズヘルスのアドバイザリーメンバーであり、認定ストレングス&コンディショニングスペシャリストのリー・ボイス氏*4は、「一度に両方を行うことは必ずしも最適な結果をもたらすものではなく、変化のスピードが遅くなる可能性がある」とも指摘しています。

ボイス氏による最も効果的なアプローチは、「体脂肪を減らすことよりも、筋肉をつけることを優先すること」とのこと。筋肉をつけるための習慣は、いずれにしても脂肪燃焼を助ける一定の生理学的反応を伴う可能性があるからです。それでは、実践のためのヒントをいくつかご紹介しましょう。

bodybuilding and weight lifting
Virojt Changyencham//Getty Images

◇ 筋肉量を増やすコツ

筋肉量を増やすには、主に筋力トレーニングとタンパク質の摂取という2つのアプローチが必要です。

ただ筋繊維を増やすには、十分なタンパク質の摂取が必要です。タンパク質は主要栄養素で、複数の身体機能を補助します。本当に筋肉を増強するためには、目標体重1kg当たり少なくとも1.2~1.6gのタンパク質を摂りたいところです。

体重約75キロの人なら、約120グラムが理想です。これを達成するためには、毎食少なくとも30グラムのタンパク質を摂取し、1日に少なくとも2回の間食で20グラムのタンパク質を摂取することを目標にしましょう。お気に入りのプロテインパウダーを見つけて、スムージーに入れたり、間食として摂取したりするなど習慣にしましょう。

◇脂肪を減らすコツ

実際に脂肪を減らすのは難しいですが、理論的には単純です。摂取カロリーよりも消費カロリーを多くすればよいだけです。

つまり、有意義なカロリー摂取が必要だということです。タンパク質をしっかり摂れば、筋肉がつくだけでなく満腹感も長続きするため一日の食事量も減り、間食も減らすことができるでしょう。

ジムでは全身を使った複合的なエクササイズを優先すると、筋肉がつきやすくなり、運動中の消費カロリーも増えます。Beyond Numbers Performance*5のパーソナルトレーナー、カート・エリス氏*6は『メンズヘルス』誌の取材に対し、「デッドリフトの動きは多くの筋肉を使います。筋肥大反応を引き出すには、かなりの量の筋肉を動員する必要があるからです」と語っています。筋肉の動員を増やすということは、その動きをするのに身体がより多くのエネルギーを必要とするということであり、消費カロリーも増えます。なんで、デッドリフトはおすすめとなります。

ジム以外でも、毎日多くの運動を取り入れる方法を見つけましょう。職場でウォーキング・ミーティングをしたり、自転車で食料品の買い物に行ったりするのも一案です。そして、アクティブな友人に注目しましょう。

ソファでテレビを観るのではなく、一緒にランニングに行く人を見つけることが大切です。身体を動かすということはそれだけカロリーを消費するということであり、他の人を巻き込むことで、実行せざるを得ない状況になるというわけです。

[脚注]

*1:ブレット・ワーナー氏のインスタグラム

*2:アメリカ国立医学図書館のデータベース「PubMed」で公開されている「Accuracy of Smart Scales on Weight and Body Composition: Observational Study」を参照

*3:『ストレングス・アンド・コンディショニング・ジャーナル』に掲載されている「Body Recomposition: Can Trained Individuals Build Muscle and Lose Fat at the Same Time?」を参照

*4:リー・ボイス氏のインスタグラム

*5:Beyond Numbers Performanceの公式サイト

*6:カート・エリス氏のインスタグラム

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Translation / Keiko Tanaka
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health US