ドバイに現れた謎のドーム

 アラブ首長国連邦(UAE)が、オルダス・ハクスリー(『Brave New World / すばらしい新世界』等の著者)の小説を地で行くような計画を明らかにしました。火星での暮らしを疑似体験できる新都市を建設するというこの計画は、人間によって地球が回復不能なほどめちゃくちゃな状態となり、われわれが火星への移住を余儀なくされる事態に陥った場合に備えたものになるといいます。

 いまのところ「火星科学都市("Mars Science City”)」と呼ばれているこのプロジェクトは、総工費1億ポンド(約151億円)を投じて総面積190万平方フィートの人工都市を新たに建設するというもの…。この新都市のなかには食品、エネルギー、水資源、農業関連の試験、そして未来の食に関する安全保障について、それぞれ研究を行う施設が建てられる計画だと伝えられています。

 ドバイの首長でUAEの副大統領と首相も兼務するムハンマド・ビン・ラシド・マクトムと、アブダビ首長国のムハンマド・アブダビ皇太子が音頭をとって建設を始める新都市には、宇宙博物館や国内の砂漠から運んだ砂も含まれる予定とのこと。

 ただし、この新都市で人間が実際に生活することは、今のところ想定されていないのです。 

宇宙進出の先駆者としてのプライドを示すUAE

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 ムハンマド・ビン・ラシド・マクトムはこの計画の全容を説明した声明の中で、「この新プロジェクトは科学の発展を促す世界的な動きに対して、UAEが先導者として貢献するための次の一歩といえる。われわれは人類による宇宙進出への取り組みに他の国々が参加し、貢献するための模範を示すと同時に、他国に対する動機付けを提供することを目指していく」と述べています。

 人類による最初の火星入植地のプロトタイプとなる新都市は、全体が3つのハイテクドームで構成されます。UAE政府はこの新都市に世界中から最も優秀な科学者を集め、同国政府と人類の発展に役立つ協働の取り組みを進める考えです。

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 この計画に関するUAEの意図はいずれも素晴らしいものに思えますが、ただし、読者の皆さんはしばらく様子を見たほうがいいでしょう。つまり、人間を肉食のゾンビに変えてしまう珍しいウィルスが大流行する可能性や、あるいはカリスマ的だが正気とはとても思えない専制君主によって、このプロジェクト全体が支配される可能性はないとも言い切れないのですから。

 その見極めがつくまでは、少し待ったほうがいいですね。


From ESQUIRE UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。