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  • 今も続く、火星移住計画の研究
  • 展開される二つの仮説
  • 脚注

記事のポイント
  • 人類による近隣惑星の「テラフォーミング」(※編集注:惑星地球化計画。天体を改造し、定住できる環境に作り変えるという計画)の可能性が追求されていますが、はるか遠い惑星で高度な文明を持つエイリアンがすでにそれを行っていたとしたら、どうでしょう?
  • 「パンスペルミア」(※編集注:宇宙の生命体が何らかの方法で地球に運ばれてきたのが人類の起源とする仮説)あるいは「テラフォーミング」の概念では、「似通った生物学的特徴を持つ惑星は、宇宙に多数存在するだろう」と推察されています。
  • 「地球外生命体が存在する可能性が高まった」と言えるかもしれません。しかし、生命の起源にまつわる謎、そして系外惑星における大気調査の技術は、まだまだ確立されていないのが現状です。

今も続く、火星移住計画の研究

火星を「テラフォーミング(地球化)」する技術を人類が獲得できるとするならば、世紀の大事業が現実味を帯びてくるかもしれません。岩石に覆われた火星を移住可能な環境につくり替えるという研究は長い時間をかけて、大真面目に進められています。資本家たちがビジョンを語り、NASAが技術的な可能性を模索し、そして数多くのSF作家たちが(時に、それらの尻を叩くかのように)地球外惑星を舞台にした物語を紡いできました。

現実として、人類によるテラフォーミングの可能性は、まだフィクションや妄想の域を出るものでありません。しかし、「pre-print server arXiv*1」というインターネット上にアーカイブされている論文をひも解けば、「高度な文明を持つエイリアンによって、画期的アイデアがすでに実行に移されている」と考える研究者がいることも分かります。

「宇宙生物学の根幹をなす目的とは、地球外生命体の存在を突き止めることです。太陽系の外で生命体がいかにして生まれ、そして、どのような生命活動がその惑星で行われているのかを論ずるに足る仮説を立てなければなりません」と、その論文にはつづられています。

さらに…「この研究は、パンスペルミア*2とテラフォーミングの可能性について論じながら、惑星系間における生命の移動を探求するものです。異なる銀河系へと移住する生命にとって、惑星ごとの特徴および位置関係がどのような相関関係や機能を持ち得るのか? 不可知論的な、生命が存在することの証拠と考えられる指標となるデータを示すことを本稿の趣旨としています」とのこと。

展開される二つの仮説

地球外生命体を見つけ出そうとする試みにとって、大きな問題として立ちはだかるのが、単一のサンプルサイズしか人類は持ち得ていないということです。つまり、地球上の生態系についてしか、人類は多くを知り得ていないということです。

私たちは宇宙についてあまりにも無知であり、そのため異なる惑星や恒星系がどのように生命と結びつくものなのか? 仮説によってしか推論できないのです。そう、この論文の著者たちも述べているとおり、パンスペルミア説とテラフォメーション説という二種類の惑星植民地化の仮説に基づく論が展開されています。

パンスペルミア説とは生命の構成要素は全銀河系にあるとする説で、生存に適した環境的条件が満たされることで自(おの)ずと生命が宿るという前提に基づきます(微生物を乗せた小惑星が数十億年前に地球に衝突したという仮説も、パンスペルミアの一例です)。

テラフォーミング説の場合には、ある惑星に生まれた文明によって近隣の惑星が持つ科学的構造が生命維持に適した環境につくり替えられるという、より作為的な手段が必要となります。

ある研究論文*3では、ある恒星を周回する1000個の惑星がシミュレートされ、惑星の一つに宿った生命が他の惑星に拡散するための条件などが論じられています。他の惑星に到達した生命体が、その環境を自らのニーズに合わせてテラフォーミングする可能性について検討されていることに加え、パンスペルミア現象が銀河系全体に広がるためにはどのようなパターンが想定されるかについても分析されています。

生命維持の可能性を持つ惑星群であることを示すシグナルを推定しながら、生命誕生の起源である惑星の存在を突き止めようというのです。

「惑星個々の特徴を分類することでクラスター化し、それらの空間的な分布を調べることで生命の存在する可能性に基づく優先順位をつけ、それに応じて観測を行うという手法の実証」が、この研究の趣旨とされています。

地球外生命体の可能性を探る宇宙物理学者にとって、これは意味のある指標となり得る内容かもしれません。ですが、エイリアンのバイオシグネチャー(生物学的プロセスを経て生み出される分子)を見つけ出そうとする昔ながらの試みは、まだ数えきれないほどの壁を乗り越える必要があります。

太陽系外惑星の大気中に漂う分子レベルの粒子を検出することのできる望遠鏡が必要であることに加え、「生命とはそもそもどのように形づくられたものか?」という問題について人間の理解がいまだ遠く及ばないからなのです。

しかしいつか、惑星群の中に未知の共通点が見いだされるようなことがあれば、そのときは地球外生命体の存在とともに、生命の起源にまつわる何らかの証拠が発見されることになるのかもしれません。


脚注

*1:An Agnostic Biosignature Based on Modeling Panspermia and Terraformation

*2:Panspermia スウェーデンの物理化学者スバンテ=アレニウスが、「他の天体で発生した微生物の胞子のようなものが、隕石や彗星に付着して地上に飛来した」という仮説を最初に唱えたとされている。日本科学未来館公式サイト内、当該ページを参照

*2:NewScientist|Planets that look alike might be a sign of spacefaring aliens

Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics