2019年5月下旬、ラスベガスの地下開発において、イーロン・マスク氏が2016年に設立したトンネル掘削会社ボーリング・カンパニーが携わることが正式に決まりました。

 これはアメリカきってのギャンブル都市であるラスベガスが、ラスベガス・コンベンション・センター(会議場)利用客の地下輸送システムの設計・建設・運営に関する独占契約の交渉相手にイーロン・マスク氏を選んだということになります…。

 「ループ」と呼ばれる輸送システムの契約は、4860万ドル(約52億6000万円)相当となります。しかし、ボーリング・カンパニーのつくる「ループ」がどのような姿形になるかはまだ決まっていません。

 「ラスベガスは、混雑緩和の方法をここ何十年も模索してきました」と、ラスベガス観光局(LVCVA)のCEOスティーブ・ヒル氏は「ラスベガス・サン」紙のインタビューに答えています。続けて、ヒル氏はこう話します。

 「このプロジェクトは利用者にとって便利なものになりますが、それだけではありません。画期的で最終的には、低価格なシステムになる予定です。観光の中心地だけでなく、コミュニティー全体にとって混雑問題を緩和するという大きな可能性を秘めているのです」とのこと。

 そうしてボーリング・カンパニーの提案は、LVCVA取締役会の支持を集め、賛成票13に反対票1という圧倒的な結果となり、採用されることとなったわけです。

 反対票を入れたのは、キャロリン・グッドマン市長のみ。5月初めには、同社の経験の浅さを懸念するコメントをしていました。LVCVAは承認したものの、グッドマン市長の懸念は、米国民が感じていることでもあるでしょう。

 さらに同社は、メリーランド州とシカゴ州にもプロジェクトを提案していましたが、スペースXやテスラなどの他の企業では避けることができたであろう、政治的な駆け引き環境アセスメントといったタイプの問題が立ちはだかる結果となりました。

 「ループ」にはトンネルが建設され、自動運転電気車両(AEV)と呼ばれるテスラ・モデルXに変更を加えた車両が移動するカタチとなります。資料によれば、AEVの立席乗車人数は16人で、最高速度約250キロ/hとのこと…。

 「プロジェクトが完成させられるのか、注目されています。というのも、他の機関も再現できるモデルができるかもしれないからです」と、カリフォルニア大学交通学研究所のフアン・マトゥーテ副所長は「ブルームバーグ」にコメントしています。

 2018年、ラスベガス・コンベンション・センターでは拡張工事が始まりました。5.6万平方メートルの新しい賃借可の展示スペースを含む、37万平方メートルの敷地が追加される予定です。センターに拡張されるウィング部分は、現在地の道を挟んだ反対側になります。

 ボーリング・カンパニーの「ループ」は、2つの建物をつなぐ必要があります。現在、この建物間を歩こうとすると約15分かかる距離なのです。これを「1分に短縮できるようになる」と、ボーリング・カンパニーはコメントしています

boring company las vegas map proposals
The Boring Company
ボーリング・カンパニーは、ループのデザインを3パターン提案しています。

 さらに、これはイーロン・マスク氏の会社です。彼がこのプロジェクトを小さくまとめるわけがありません。

 ボーリング・カンパニーの公式サイトに掲載されている専用のプロジェクトページの中で、将来的な拡張についてこう述べられています。

 「サービスはマッカラン国際空港、ラスベガス・ストリップのホテル、ラスベガスのダウンタウン、ラスベガス・スタジアム、そして長期的には、ロサンゼルスへサービスを拡張する」と…。これが実現すれば、435キロメートルものルートになるのです。

 しかし、2018年ロサンゼルスで行われたデモンストレーションでは、同社の元々の提案よりも、近未来感のない現実的な姿にがっかりした声も多かったようで、同社は下がってしまった期待をここで盛り返す必要があります。

 とは言えイーロン・マスク氏は、イメージ改善に成功した前例はしっかりと持っています…。

 2016年12月、マスク氏が最初に掘削事業を始めることをTwitterで発表した際、多くの人が冗談かと思っていました。しかしこのたび、数百万ドル規模の事業を初受注したわけです。このプロジェクトがどう動いていくのか? その他の関連会社同様、今後の動向が見逃せないことは確かでしょう。

From POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。