2019年8月初め、タイタニックやジョン・F・ケネディが第二次世界大戦中に乗っていた魚雷艇などを発見した深海探検家のロバート・バラード氏が、新たなミッションに乗り出しました。それは未だ真相が解明されていない、アメリア・イアハート氏の失踪した飛行機10-Eエレクトラの捜索です。

1937年7月2日、イアハート氏はナビゲータのフレッド・ヌーナン氏とともに、ホノルルの約2740キロ南西を太平洋に浮かぶハウランド島へと向かって飛行していました。

世界一周飛行を目指して出発してから6週間が経ち、移動距離は3万2000キロを超えていました。それまでにイアハート氏は、女性パイロットとして初めて単独大西洋横断飛行を成功させ、さらにハワイからアメリカ本土への単独飛行も世界で初めて成功させています。このように、これまで数々の偉業を成し遂げた彼女は、さらなる挑戦を求めて世界一周飛行への出発を決めたのでした…。

アメリア・イアハート氏とナビゲータのフレッド・ヌーナン氏
Getty Images
アメリア・イアハート氏とナビゲータのフレッド・ヌーナン氏。

しかしイアハート氏とヌーナン氏は、ハウランド島にたどり着くことはできませんでした。飛行中にエレクトラの燃料も使い切り、高度はどんどん降下していく中、海上に着陸できる場所も見つけることもできなかったのでしょうう。そんな内容の無線を最後に、この二人の消息は途絶えたのでした。しかし遺体は発見できず…彼女らの身に何が起こったのか? その答えは未だに解明されてはいません。

現在のところ一番濃厚となる説が、「エレクトラは燃料切れになってハウランド島の近くに墜落し、海の何百メートルも深くに沈んだもの」と考えられています。少なくともアメリカ政府の見解はそのようです。

しかし2人は、ハウランド島の350海里(およそ648キロメートル)ほど南東にあるガードナー島を囲む環礁島である、「ニクマロロ島に着陸したのではないか」と考えている人たちもいます。遭難したと思われる日から続く数晩にかけて、この島から遭難無線通信が入っていたためです。

2019年の8月、1カ月にわたりバラード氏とオーシャン・エクスプロレーション・トラストのアリソン・ファンディス氏は、ニクマロロ島沖の海域を捜索。『ナショナルジオグラフィック』の考古学者たちは飛行機の残骸が残っていないか? と、島内をくまなく探しました。

探索中に『ナショナルジオグラフィック』は、イアハート氏とヌーナン氏がニクマロロ島付近についた着陸した場合、2人の身に何が起こったのか次のような仮説を発表していました。

「ヌーナン氏は死亡し、(操縦していた飛行機)エレクトラは流され、イアハート氏は島で数週間生きていたのではないか?」というのです。しかし島にいる生物は、この島特有の長さ約1メートルのヤシガニだけです。そしてイアハート氏が亡くなったあと、遺体はこのカニが食べてしまった可能性が高い…というものです。

1940年に、イギリスの入植者たちが島で頭蓋骨を含む13の骨を発見しています。発見後に送られた電報には、「アメリア・イアハートのものかもしれない」と書かれていました。調査の結果、医師は「この骨を背の低いヨーロッパ男性のものである」と判断しましたが、人類学者の中にはこの結論に異論を唱える人もいます。

しかし、本当にこの13の骨がイアハート氏のものであったならば、人体にあるはずの残りの193本はどこに行ってしまったのでしょうか?

そこでカニ説の登場です。

『ナショナルジオグラフィック』の報告書によると、骨を発見したイギリス人たちは「ヤシガニが多くの骨を撒き散らしていた」と話していたようなのです。

この説を証明するため、歴史的航空機の発見を目指す国際グループTIGHARは、豚の死骸をカニに与えてみました。するとカニは、豚の体に群がり肉をほとんど食べ尽くした後、いくつかの骨を最長18メートルも離れたところまで移動させていたのです。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

「『カニは骨を移動させる』ということがわかりました」と、TIGHARのトム・キング氏は『ナショナルジオグラフィック』にコメントしています。

バラード氏とチームは2019年8月下旬に、(操縦していた飛行機)エレクトラを見つけることなくニクマロロ島を後にします。島の水深およそ732メートルまで全域的に目視検査を行っていますが、飛行機の残骸は見つからなかったとのことなのです。しかしこの探索は、まだ終わっているわけではありません。

ナショナルジオグラフィック』の考古学者フレデリック・ヒーバート氏率いるチームは、「キリバス共和国の博物館Te Umwanibong Museumにある、1940年に発見された頭蓋骨の一部がイアハート氏のものではないか!?」という説を唱えています。そして法医学人類学者たちは、「この骨は成人女性のものだ」という見解を述べています。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

これに対しサウスフロリダ大学のエリン・キマール氏は、「イアハート氏のものかどうかは断定できません」と言います。さらに…「しかし、現在まで見つかったすべての証拠が、この博物館にある頭蓋骨がイアハート氏のものと示唆しているとも言えるのです」と続けます。つまり、完全否定することはできないということ。そこでチームは、数カ月中に頭蓋骨を復元しDNAテストを実施する予定となっています。

とは言え、「アメリア・イアハート氏の身に何が起こったのか?」を詳細に解明される可能性は低いでしょう。カニに食べられてしまったのか!? はたまた同じく姿を消した伝説のハイジャック犯D.B.クーパー(1971年に行方不明に)と、2019年秋公開予定の『アイリッシュマン』で描かれている当時の全米トラック運転組合委員長を務めたジミー・ホッファ(1975年に行方不明に)とともに、メキシコのビーチで酒でも飲んでいたのでしょうか…。しかし失踪から80年経った今でも、イアハート氏は多くの人の注目を集めています

では最後に、イアハート氏の名言を…。

“The most difficult thing is the decision to act, the rest is merely tenacity”

「最も難しいことは『行動すること』を決めること、あとは執念深くやることだけ」

From POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。