三菱航空機は2019年9月6日、「(2019年7月に“リージョナルジェット”から“スペースジェット”に改名した)開発中の民間小型旅客機、“スペースジェットM100”について、米航空会社からの100機受注に向けた協議を始めた」と発表しました。

 “スペースジェット”の開発は5度延期が続いていて正式な受注を停止していたところでしたが、先行して商談を進める方向のようです。ちなみに名称の「スペース」は、「宇宙」という意味ではありません。「空間」を意味するもので、この名称変更には「広々とした客室や荷物スペース」をアピールする狙いがあるとのこと…。

 米国ではパイロット保護の労働規制が強く、地域間を飛ぶ小型機(リージョナルジェット、100席未満)の座席数には制限が設けられています。それは「76席以下」というのがひとつの基準。この規制は、中大型機の市場を小型機に奪われないための参入障壁。そんな米規制に対応した70席クラスの「M100」における大規模な受注協議は、これが初めてのこととなります。2024年に納入を開始することを目指すそうです。

 そんな日本の航空産業への躍進に胸を躍らせることもあれば…、クラシカルなアナログ航空機の存在にも心奪われるファンも多いことでしょう…。
 

アルバニアの歴史と大量のジェット機

 「アルバニア」は、南東ヨーロッパのバルカン半島にある国です(ギリシャとイタリアの間)。アドリア海とイオニア海に面しており、内陸部にはアルバニア アルプスが連なります。国の面積は小さいですが、城や遺跡が多く残されています。ちなみにヨーロッパで唯一、イスラム協力機構正規加盟国です。

 2016年にアルバニア政府は、「大量の1960年代ヴィンテージ戦闘機を競売にかける」と発表していました。しかしながらその後、同国の法律上の複雑な手続きに迫られということが起因し、購入予定者が決まっていたにも関わらず、これらの航空機遺産は販売されることはなかったのでした(そのおかげで…と言っては何ですが、所有者にわたることなく地下に格納されたままであるからこそ、我々はこの驚きのコレクションの存在を知り、さらに目にすることができたのです…)。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
In hidden mountain air base, Albania stores MiGs for sale
In hidden mountain air base, Albania stores MiGs for sale thumnail
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 このジェット機たちは、ジャデル空軍基地(Gjader Air Base)という冷戦時に建てられた地下の貯蔵施設の中に置かれています。中には、「ゾッ」とするような様相を呈しているものもあります。

 アルバニアでは1944年~1954年にかけて、「スターリン主義」を掲げるエンヴェル・ホッジャ(Enver Hoxha)が首相を務めていました。アルバニアで鎖国を行った、独裁者として知られる人物です。

 彼は非常に被害妄想の強い男で、地中海のとても小さな国土全域にわたって17万ものトーチカ(鉄筋コンクリート製の防御陣地を指す軍事用語)と、7000強もの大型地下施設を建設していたのです。ジャデル空軍基地は空からの攻撃に抵抗するという目的で建設されました。そのため戦闘機は山の中に潜み、ひとたび戦闘が始まった際にはいきなり飛び立つという戦略でいたわけです。

 そんなジャデル空軍基地の中には、およそ50機の旧式のジェット機があります。

 このコレクションには、1960年代の「MiG-17」やベトナム戦争時代の「MiG-19」に「F-7As」(MiG-21の中国製コピー機)も含まれています。

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 赤と黒の丸いマークが尾翼に描かれた鉄の塊の戦闘機は、アルバニア空軍の誇りでもあります。そして冷戦後には、このヴィンテージ戦闘機は飛行禁止となります…。そして今日においても、アルバニアはもうこの戦闘機を飛ばすことはありません。

 そこでアルバニア政府は、2016年にこれらのヴィンテージジェット機をオークションにかけ、推定48万5000ドルを調達しようと計画をしたのでした。このオークションセールに何が起きたのかは、明確にはわかっていません。ですが、法律上の面倒な手続きが一番の要因であるとされています。AFP通信によれば、飛行機のコレクターや飛行学校などが記載された購入予定リストも残っているそうです。

◇冷戦の終結

 冷戦の終結は、民間機関の手に多くのジェット機を解放しました。そしてこのアルバニアのジェット戦闘機は、おそらく世界のコレクター市場にとって眠ったままのヴィンテージ戦闘機の最後の供給元となるでしょう。

 これらのジャデル空軍基地に眠るジェット戦闘機たちは、荒らされてもおらず、ほぼ原型をとどめています。かなり良い状態である…と言っていいでしょう。金属の中には腐食の兆候を示しているものもあったり、場所によってはハードウェア、特にナビゲーションライトが欠けているものも見受けられますが…。

◇素晴らしかった「ジャデル空軍基地」の全容

 ジャデル空軍基地の地下施設は圧巻なもので、点検修理、燃料補給、そして戦闘用航空機を格納するために十分なほどの大きさ、約2000フィート(約609m)の長さを持つ壮大なトンネルでできている…と図面からは判断できます。少なくとも、当時はそうであったはずです。ですが1997年に、この基地は反対派や略奪する人によって襲撃されました。その後、電気の供給も止まり、手入れをする人もいなくなると、急速にこの地下基地は荒廃の一途をたどるのでした。

 いまでは、この施設のいくつかの備品は破壊されてしまっています。爆風を防ぐための鋼鉄のドアも、残念ながら落書きで覆われています。また、多い茂った植物や木々が、外界へと続く出口を塞いでしまっています。

 購入予定リストに記載されている方々が今後、このジェット戦闘機を手に入れることができるかどうかは不明です。なぜなら、比較的貧しい国であるはずのアルバニア政府ですが、このジェット戦闘機を販売して資金を得ようと躍起になっているようにも見えないので。

 もしもあなたが、「F-7A」や「MiG-19」の市場に携わっているとしたら(!?)…。または、ヴィンンテージジェット戦闘機ファンであったとしたら…。きっとここで買い物をしたいと思うに違いありません。

Source / Popular Mechanics
Translation / Kazuhiro Uchida 
※この翻訳は抄訳です。