新型コロナウイルスによって、世界をひっくり返しました。また一方で、「到達するであろうゴールまでの道のりが早まっただけ」という意見もありますが…。

 2020年7月29日現在、世界的におよそ65万人以上の方々がこのウイルスによる感染症によって悲しくも命を落とすこととなり、多くの地域で今もなお感染者数の増加が続いている状況です。一向に収束の気配も終息の兆しを見せないこのパンデミックにより、これまでの日常は大きく姿を変えました。そんな中、動物が暮らす自然界においても、同様に大きな変化が表れ始めています。

 両岸にイスタンブールの街が広がるトルコのボスポラス海峡では、イルカの群れが海岸のすぐ近くまで姿を現し、のびのびと泳いでいるのです。BBCによると、本来このボスポラス海峡はタンカーや貨物船、民間船などが頻繁に行き交い、世界でも有数の混雑した水路として知られています。ところが、世界的に広がったロックダウンによって、水路の交通量が激減。そんなわけで現在、この地はイルカたちにとって絶好の遊び場となっているとのことなのです。

 人の活動が減少したおかげで、都市部にまで動物が入り込んでくるこの現象は、世界の他の地域でも見受けられます。東欧のアルバニアでは、ピンクフラミンゴの個体数が約1000羽も増加しており、国の西部の海岸線に多くの鳥が群がる姿が目撃されています。また、南アフリカのクルーガー国立公園では、誇り高きライオンの群れが通常はあまり訪れないような場所でも目撃されているという報告があります。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 そして研究者たちは、この現象を説明するための新たな用語として、「アンスロポーズ(anthropause)」という言葉を考案しました。オンラインメディアの「Nature Ecology & Evolution」に掲載された論文で研究者たちは、「パンデミックの間に見えてきた、人間たちの移動力の低下を説明するための造語」と述べながら、こう解説しています。

私たちは、人々が一連のロックダウン期間のことを「Great Pause(偉大なる一時停止)」と呼び始めたことに気づきました。ですが科学上においても、より正確な意味合いを持った用語のほうが役に立つだろうと感じた次第です。そこで私たち科学者のチームから、「anthropause(アンスロポーズ)」という新語を提案いたします。人間の活動…特に、旅行を中心とした現代の人間の活動が世界的に大きく減速していることを具体的に指しています。anthropology(人類学)という言葉がありますが、短縮するためその接頭辞であり「human」の意味を持つ、「anthropo-」を使用ベースにさせていただきました。そこに最後のpoの韻を踏ませるカタチで、「pause」を加えたことになります。

 「人間との交流が減る」ということは、必ずしも自然界に生きる全ての動物にとって良いこととは限りません。タイのマカク(哺乳綱霊長目オナガザル科に含まれるサル)はある意味、暴徒化しているようです。

 例えばタイ中部にありロッブリー(Lopburi)という町では…。英国のニュースサイト「Daily Mail」によれば、「サルが増え過ぎてしまい、手に負えない状態となっている」という報道もあります。「数は6000頭へと倍増し、人間との共存はほぼ限界に達しつつある」とのこと。 いつもは観光客でにぎわい、多くの方がバナナなどのエサを与えてくれていた日常が、ここで一変して食べ物に困る状態が続いているのです。そしてその結果、凶暴化した行動も目につくようになってきたというわけです。

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 日本はどうでしょう…。奈良では、マナーの良さで有名な奈良公園のシカが、おやつをくれる観光客が激減した影響によって、普段は出没しない道を歩き回るようになったということです。

 「ニューヨークタイムズ」紙によると、「奈良公園に生息する1000頭超の鹿は、自分の活動範囲の外に出ることはほとんどない。しかしながら、ここ数カ月でその境界線を越える̪̪シカも現れ始めている」とつづられています。

奈良の鹿
TOMOHIRO OHSUMI//Getty Images

 新型コロナウイルス感染症によるこのパンデミックによって、自然界にも「小さい」とは決して言えない変化が訪れているわけです。サイのような絶滅危惧種においては、「目を光らせている監視がいないと、密猟や迫害のリスクが高まる」と研究者の間で懸念はささやかれてもいます。

 また、新型コロナウイルスがもたらした現在までのこの期間は、「21世紀における人間と野生動物の共存のあり方について、重要なことを示唆しているかもしれない」 と語りながら、これを絶好の機会と考える研究者も少なくありません。

 研究者たちはこの期間を、「21世紀の人間と野生生物の相互作用に関して、重要な洞察できるときである」と語っています。 その内容とは、「新型コロナウイルス感染症拡大によるパンデミックで生じた人間の行動制限の影響によって、その変化が生まれた区域内における動物の生態変化のデータが収集でき、その行動制限がなされる前と後で、それがどのような変化があったのか?を、細かく時間帯も分けて収集できるという…極めて詳細なデータから研究できる貴重な時間」と、解説しています。

 「そのような一連の研究を重ねることで、野生動物の生息地を大きく変えたり、傷つけたりすることなく、彼らと共存するためのより良い方法を見つけることができるのです」と研究チームはこの最悪とも言える期間を、ポジティブに受け止めてもいます。

Source / POPULAR MECHANICS
Translate / Esquire JP
この翻訳は抄訳です。