• 米国宇宙軍は2021年6月13日(日)、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から新たな「宇宙領域認識(Space Domain Awareness)」衛星を打ち上げました。
  • この衛星はノースロップ・グラマン社製「ペガサス XL」ロケットによって軌道へと投入されましたが、それ以前にこのロケット自体は「L-1011(ロッキード・マーティンのジェット旅客機)」に搭載され、高度約1万2000万メートル上空まで運ばれたのち切り離されました。
  • 今回のミッションは発射台なしでの迅速な衛星打ち上げを目指す、宇宙軍の試みの一環です。

 米国宇宙軍は米国時間2021年6月13日(日)、カリフォルニア州南部の海岸沿いに位置するヴァンデンバーグ宇宙軍基地から新たな情報収集衛星を打ち上げました。この謎めいた衛星は、宇宙軍の壮大な計画の一端に過ぎません。

 「Tactically Responsive Launch 2(戦略対応型打ち上げ)」あるいは「TacRL-2」と名づけられた今回のミッション。この衛星はノースロップ・グラマンの空中発射ロケット「ペガサスXL」によって軌道へと投入されました。「ペガサスXL」自体は地上から発射されたわけではありません。航空機に搭載され、空中まで運ばれる有翼型ロケットになります。そして、その上空への輸送にはロッキード・マーティン社製の旅客機「L-1011 トライスター」(通称:スターゲイザー)が使用されました。

 このミッションは、従来の発射台を使用せずに宇宙への打ち上げ機能を分散し、短期間でのミッション遂行を目指す宇宙軍の試みの一環になります。

 米国には専用のロケット発射施設が少なく、カリフォルニア州とフロリダ州にいくつかあるのみです。これらの施設は大規模な戦争の際には真っ先に狙われ、破壊工作やミサイル攻撃の標的になる可能性があります。そして、このような一連の攻撃が成功した場合、米国の打ち上げは数週間あるいは数カ月単位で遅れる可能性があり、新たな軍事衛星の展開が阻害されかねません。そこでミッション「TacRL-2」が目指すは、このような大規模で攻撃を受けやすい施設への宇宙軍の依存度を下げることなのです。

宇宙領域認識衛星、米国宇宙軍、衛星、宇宙、海外
Getty Images
ノースロップ・グラマン社が1980年代後半に開発した「ペガサス」ロケット。もともとはNASAの「B-52」テスト航空機によって打ち上げられていました。特定の宇宙基地への依存から脱却する必要性が高まる中で、この独自のロケットシステムが再び注目を集めています。

 「ペガサスXL」の打ち上げでは通常、一般の滑走路から離陸する「スターゲイザー」を使用し、この航空機が高度約1万2000万メートルまで上昇して「ペガサス」ロケットを切り離して発射させます。高高度での発射となるため「ペガサス」には、最初の打ち上げ段階での機能が不要となり、小規模かつコンパクトなシステムが実現できるわけです。「ペガサスXL」は最大積載量約450kgで地球低軌道へ投入できる上、航空機を活用して打ち上げるため、宇宙軍は利用可能なあらゆる空港から打ち上げを実施できる可能性を擁しています。

 ジェイ・レイモンド米宇宙軍作戦部長によれば、「TacRL-2」の第2の目的は宇宙関連のプロジェクトや打ち上げの実施を迅速化することにあったようです。通常、衛星の製造には24~60カ月がかかります。ですが、今回の衛星はわずか11カ月で製造されました。また、宇宙軍が「ペガサスXL」を運用するノースロップ・グラマン社と契約を交わしてから打ち上げまでにかかった時間も、わずか4カ月です。通常、このようなプロセスには数年がかかるものです。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 「NASA SpaceFlight.com」によれば、今回のミッションで打ち上げられたのは「技術実証のためにつくられた小型衛星だ」と言います。この衛星については、宇宙軍が「宇宙領域認識」を念頭に市販の部品で製作したこと以外はほとんど知られていません。

 「宇宙領域認識」は一般的に、宇宙ゴミから潜在敵国の衛星まで宇宙空間にある人工物の発見・カタログ化・監視などに関わる概念。…となると、この「TacRL-2」で打ち上げられた衛星には、他の衛星を監視する機能が備わっているという可能性もあります。

Source /POPULAR MECHANICS
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です