健全な土壌を築く農業が
気候変動問題の
解決への一歩になる

気候変動の問題に対して、世界各国が多種多様な取り組みを進めていることはご存じの人も多いはず。人類の歴史上、それほどまで深刻な問題となっていることは否めません。

その気候変動の主たる原因となっているものには、「発電、工業、輸送業などそれぞれの産業の動力源で化石燃料を燃焼し、温室効果ガスを排出する」といったことが挙げられますが、中でも(意外かもしれませんが…)顕著なのが農業や林業で、世界全体の(二酸化炭素やメタンなど、大気中の熱を吸収する性質のあるガス=GHG<Greenhouse Gas>)温室効果ガス排出量のうち、なんと4分の1を占めるため、「環境に与えるインパクトが少ない」産業ではないことも皆さん認識しておいたほうがいいでしょう。

そこでいま関心を集めているものの一つ、「リジェネラティブ農業」に注目してみたいと思いますそれは、「再生させる(こと)」を意味する「リジェネラティブ(regenerative)」を冠していてその名のとおり、土壌の健康状態を回復させることを目指す農業のことになります。不耕起栽培(土を耕さずに農作物を栽培する方法)や有機肥料・堆肥・カバークロップ(農作物を作らない期間に土壌浸食の防止や雑草の抑制などのために栽培される作物)の活用など、土壌の有機物を増加させるアプローチをとる農法です。

日本では「環境再生型農業」とも呼ばれて知られていますが、「健全な土壌は炭素を地中に吸収(隔離)するため、リジェネラティブ農業は気候変動の対策に有効」と考えられていることから、「主に欧米を中心にリジェネラティブ農業が世界で急速に広まりつつある」とされています。

そんな中で、有機農業に基づいたリジェネラティブ農業を推進している企業の一つが、アウトドア企業のパタゴニアです。同社は以前より地球を守ることに注力しており、1996年より自社で使うコットンをすべてオーガニックコットンに切り替え、2017年には複数のブランドとともにリジェネラティブ・オーガニック認証プログラムを立ち上げました。現在はリジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットンを使用した製品を、実際に販売するにまで至っています。

ロゴ
Patagonia

リジェネラティブ・オーガニックは、有機栽培を前提として土壌を健康な状態に回復させることに重きを置き、さらには動物福祉を尊重し、農家の生活を向上させることも目的。よって通常のオーガニック農法やリジェネラティブ農法より、全体論的で厳格な基準が定められています。パタゴニアによれば、そんな状況でも「現在は2700以上の農家が、パタゴニアのリジェネラティブ・オーガニック認証プロジェクトに参加している」ということです。

カンファレンスで
日本で実践可能な方法を
ともに考える

グローバルに広まりつつあるリジェネラティブ農業を、日本ではどうしたら実践していけるのでしょうか? 4月13日(木)に開催される「リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス」は、まさにそんな疑問や現状の課題を考える機会になるはず。「日本でも議論の輪を広げ、アクションを進めていくことが重要」という考えから、日本の気候風土に適した環境再生型かつ有機農業について、可能性を探るものになっています。

「リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス」には、リジェネラティブ・オーガニックの認証制度を監督する「リジェネラティブ・オーガニック・アライアンス」の代表 エリザベス・ウィットロー氏が登壇します。そして、その組織の創設からリジェネラティブ・オーガニックを推進するナチュラルソープブランド「ドクターブロナー」のゲロ・レソン氏、パタゴニア日本支社の近藤勝宏氏らによって、リジェネラティブ・オーガニックの取り組みが語られます。さらに国内の専門家が、環境を再生する農業の議論と実践を日本国内で広げていくために、日本の気候風土の特性、それに基づくリジェネラティブ・オーガニック農法の課題や可能性などについて話す講演も用意。

このカンファレンスは生産実践者はもちろんのこと、リジェネラティブ・オーガニックについて知りたい人やアパレル企業や食品会社など、農産物を取り扱う事業に関わる人などにとっても学びの場となり、理解を深める機会となるはず。オンラインで視聴可能なので、気になる人はチェックしてみてはいかがでしょうか。

◇「リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス」開催概要
日時:4月13日(木)10:00〜16:00
参加費:無料 ※要参加申込
参加方法:オンライン視聴 ※参加申込者に限り、後日、期間限定のアーカイブ配信を予定
申込締切:4月10日(月)18:00まで
参加申し込みはこちらから