未来の時を刻むリシャール・ミル

 スピードを感じることとは、アドレナリンが分泌されるようなスリリングな体感だけでなく、実は、知的興奮に近い体験かもしれません――。

 2021年5月12日(日本時間)に全世界に向けて発表されたマクラーレン「スピードテール」とコラボしたリシャール・ミルの新作「RM 40-01 オートマティック トゥールビヨン マクラーレン スピードテール(以後、「RM 40-01 スピードテール」)」には、ヴェロシティ体験の刷新があり、未知なる時間感覚との邂逅(かいこう)が存在します。

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
マクラーレン「スピードテール」は1070馬力のハイブリッドパワートレインを搭載し、これまでのマクラーレンにとって最速のロードカー。このクルマの開発において展開された、マクラーレンの空気力学に対する絶え間ない探究が、リシャール・ミルの「RM 40-01 スピードテール」の設計の出発点となりました。

 これまで、他のクルマブランドと時計ブランドによるコラボレーションは星の数ほど行われてきました。しかし、今回届いたリシャール・ミルとマクラーレンのコラボという知らせは、片やレーシングカー&ハイパーカーに、片やエクストリームなスポーツウォッチに特化した、本物のコンストラクター同士によるプロダクト。このようなコラボは、これまでわずか2例しか存在しません。

 その2例とは…、1つ目は、2017年発表の「RM 50-03 トゥールビヨン スプリットセコンドクロノグラフ ウルトラライト マクラーレンF1」です。これはストラップまで含めて、重量わずか38gのスプリットセコンドクロノグラフになります。続いて2つ目となるのが2018年発表された2作目、「RM 11-03 フライバッククロノグラフ マクラーレン」です。こちらはマクラーレンのアルティメットシリーズ(ロードゴーイングモデルの最高峰シリーズ)である「マクラーレン セナ」の登場を機に、世界限定500本で同じシリアルナンバーを刻み入れることができるエクスクルーシブ仕立てであり、実車のオーナーに優先販売されました。

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
ムーブメント「CRMT4」には、自社製トゥールビヨンでは初となるパワーリザーブ表示、オーバーサイズデイト、ファンクションセレクターという3つの複雑機構を搭載。フォルム自体は「スピードテール」同様に、ティアドロップを模しています。ベゼルの刻み目はボンネットの吸気口を、プッシュボタンはフロントホイール後部にある排気口を思わせるつくりです。

 そして今回発表されたのが、コラボモデルの第3弾となる「RM 40-01 スピードテール」です。このモデルは「マクラーレン セナ」と同じく、マクラーレンのアルティメットシリーズの1台である「スピードテール」に基づき、実車と同じ名が与えられた時計となります。

 従来の2本のコラボモデルが、マクラーレンのF1マシンやニューモデルという過去と現在が軸だったのに対して、この「RM 40-01 スピードテール」は、実車と同じエンジニアリング哲学を持った1つのプロジェクトとしてゼロから開発に着手したものになります。開発期間は実に膨大で、ケースのために約2800時間、ムーブメントには約8600時間もの時間が費やされたということ。

 そこに搭載している「CRMT4キャリバー」は、リシャール・ミルが完全インハウスで設計開発した自動巻きトゥールビヨンムーブメントで、初となるパワーリザーブ表示、オーバーサイズデイト、ファンクションセレクターを搭載しています。つまり、通常のラインナップとは別枠という点で、リシャール・ミルにとって「RM 40-01 スピードテール」は、まさしくマクラーレンで言うところのアルティメットシリーズに相当する1本と言えるのです。

アートとサイエンスの融合で誕生したハイパーGT、マクラーレン「スピードテール」

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
自然界に存在するフォルムからインスピレーションを受け、空力学的に最も効率的なティアドロップ形フォルムを採用している「スピードテール」は、流線形ハイパースーパーカーの真骨頂と言えます。

 ご存知の方も多いかもしれませんが、マクラーレン「スピードテール」とは、V8ツインターボに電気モーターを組み合わせたハイブリッドのハイパーGTです。最高出力1070ps、最高速度は402km/h、300km/hに達するまでの加速時間は、12.8秒という驚異的なスペックを誇ります。全世界106台限定となり、かつ日本円で約2.5億円と言われていたにも関わらず、即完売を記録しました。

 ただし、490km/hや500km/hをうたう市販車もある現在、「スピードテール」最大の魅力は、絶対値的なトップスピードではありません。それは上から見ても横から見ても翼断面形状に近く、後方へ滑らかに空気を流し去る水滴型をしたキャビンとボディにあります。そこで具現化されたスリムなボディのデザインやアイコニックなロングテールもすべて、機能を追求した結果としての優美さに他なりません。「スピードテール」はその水滴型の外観から、空気を切り裂くウェッジシェイプを過去のものとし、400km/h超を危険と隣り合わせの領域ではなく、うっとりとしてしまう恍惚(こうこつ)な体験へと根本的に変えてしまったのです。

 そのために誂(あつら)えられた車内空間は、ドライバー自身が中央に着座するという完全シンメトリーな3座のコクピットで仕上げられています。左右両脇のやや後方寄りにパッセンジャーシートが配され、しかも超高速走行下においても同乗者と共有できる空間とするため、重量配分の上でもインターフェイスの点でも、完全な左右対称で設計されているのです。これこそ、単座のフォーミュラカーの技術を応用したハイパーGTであるゆえんと言えるでしょう。

 完璧なシンメトリーに調律された空間の中で開かれた前方視界が、1点に向かってワープするように静かに力強く滑っていく様子を想像してみてください。それこそ従来のロードカーになかった、未来的なヴェロシティ体験に他なりません。

リシャール・ミルとマクラーレンが共鳴する
モノづくりへの情熱と技術

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
ムーブメントを守るために、ベゼルのテーパーと厚みの変化を考慮した「3次元曲面」を特徴とする、独特な表面クリスタルガラスが開発されました。また、かつてないほど複雑なデザインのため、最適な形状が得られるまでに5つの試作品が制作されました。

 マクラーレンとリシャール・ミル、ハイパーGTとハイパーウォッチそれぞれの「スピードテール」は、換言するならば、“未知のヴェロシティに向けたクルマと時計の競演”です。

 「RM 40-01 スピードテール」の、グレード5チタンのベゼルは、2時・4時・8時・10時の4カ所がえぐられています。これは実車の「スピードテール」のフェンダーやエアスクープに相当するところであり、上からサファイヤクリスタルの風防を通じて眺めると、時計の文字盤自体が「スピードテール」のキャビンのように、上辺より下辺のほうが短く、絞られているのです。

 また同様に横から眺めても、カーボンTPT®のミドルケースが、12時側から6時方向にかけて薄くなっていくことに気がつきます。これらは「スピードテール」の水滴型シルエットを彫刻的に解釈し、時計として再現したもの。形態的にマクラーレン「スピードテール」を印象づける大切な仕上げとして、6時位置からブラックラバーのストラップ上には、実車のストップランプさながらのオレンジのラインが走ります。

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
プラチナとレッドゴールドの巻き上げローターは「スピードテール」のボンネットから、バレルはルーフラインからインスピレーションを得ています。ムーブメント下部からストラップまで続くオレンジラインは、「スピードテール」の後部スクリーンに取り付けられているブレーキランプからの着想です。

 とは言え、リシャール・ミルの「RM 40-01 スピードテール」が、その名に値するハイパーなタイムピースである証は、やはりそのインターフェイスに凝縮されています。そもそも時針と分針、オーバーサイズデイト、パワーリザーブが表示される文字盤は、実車同様の完全なシンメトリー構成で、その室内環境やインストルメントパネルに重なり合います。パワーリザーブシステムは3つの機構が開発され、最終版が完成したそうです。加えて、「スピードテール」ならではの操作流儀は、リューズにも認めることができます。これはハイパーGTの天井に備わる、オーバーヘッドコンソールのダイヤルと同じ形です。また、4時位置のプッシュボタンを押すと3時位置のファンクションセレクター表示がN-W-H(ニュートラル・巻き上げ・時刻合わせ)と、さながらシフト操作のように切り替えることが可能です。

 このように、パーツの複雑さを語るには枚挙に暇がありませんが、そのディテール1つひとつは徹底的に吟味され、「RM 40-01 スピードテール」にはリシャール・ミルならではの仕上げに対するこだわりが詰め込まれています。

「このウォッチは、リシャール・ミルにおける最高レベルの仕上げを施しています。 面取り加工職人や研磨職人とも多くの研究開発を行いました。さまざまなパーツの鏡面仕上げ、ブラスト仕上げ、サテン仕上げ、およびチタンとカーボンTPT®の組み合わせなど、ディテールへのこだわりは格別です。ケース自体は69個のパーツで構成されています 」― ジュリアン・ボワラ氏(リシャール・ミル テクニカルディレクター)
「リシャール・ミルとマクラーレンは、軽量化すること、振動の影響を減らすこと、抵抗を最小限にすることなど、さまざまな問題に取り組む姿勢に多くの共通点があります。(中略)『スピードテール』においては、芸術作品のようなクオリティを持つクルマの製造を目指していました。それはこの時計にも確実に表れています。妥協のないデザインや素材、仕上げにおいて、『スピードテール』のディテールを美しく反映しています」 ―ロブ・メルヴィル氏(マクラーレン・オートモーティブ デザインディレクター)
リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
シックで落ち着いた着こなしにも対応できるほどに、多彩な顔を持つタイムピースです。このようなEsquire的な着こなしをさらに引き立ててくれます。

 「RM 40-01 スピードテール」を眺め、操っていると、時計かクルマかというスケール感を忘れさせ、マクラーレン「スピードテール」という1台のハイパーカーの中枢へと意識が取り込まれてしまうような不思議な感覚に襲われます。ですが、それはまさにこの時計の真骨頂に他なりません。そこに展開する魔法は無論、リシャール・ミルがこの「RM 40-01 スピードテール」のためにつくり出したトゥールビヨンに帰せられます。滑らかに回り続けるキャリッジやテンプを、文字盤の6時側に開けられたブリッジのさらに向こうに認めることができます。

 そんな忘我の時を演出する自動巻き機構は、ローターのコアにグレード5チタン、主部はプラチナ、さらに錘(おもり)の一部にレッドゴールドと、周辺部ほど比重を増す構造となっており、ボールベアリングにはセラミックスが採用されています。香箱は高速回転バレル、そして輪列は圧力角20度のインボリュート歯車とすることで、パワー伝達の質も高められているのです。

リシャール・ミル&マクラーレンの最新コラボモデルが登場
RICHARD MILLE
テクニカルディレクターのサルヴァドール・アルボナ氏は、利用可能な全てのスペースを余すところなく使い、洗練された時計の「エンジン」であるムーブメントをつくり上げました。

 軽量化やマスの最適化、抵抗や振動の影響を最小限に留め、高い効率を究めたマシンを生み出すという点で、リシャール・ミルの「RM 40-01 スピードテール」とマクラーレン「スピードテール」は、「同一のエンジニアリング的アプローチに基づいている」と言えます。そして、ハイブリッドという21世紀型のテクノロジーと、トゥールビヨンという18世紀以来の時計づくりの伝統技術を、同じ地平で捉えられる視線もリシャール・ミルならでは…。

 しかしそれは、「理詰めで時計とクルマが同じスピリットを分かち合う」といった、どこか窮屈さを感じさせる話ではありません。トゥールビヨンという機構が、重力による影響を分散するために考案されたメカニズムであることは知られていますが、その小宇宙めいた時間と、400km/h超の車内で流れる時間は、地上のあらゆる法則から免れた、究極の自由そのものの発現でもあるのですから。

RICHARD MILLE|
RM 40-01 AUTOMATIC TOURBILLON MCLAREN SPEEDTAIL

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「RM 40-01 オートマティック トゥールビヨン マクラーレン スピードテール」

  • キャリバー/CRMT4
  • ケースサイズ/縦48.25 × 幅41.80 × 厚さ 14.15mm
  • ベゼル・ケース素材/グレード5チタン・カーボンTPT®
  • ムーブメントサイズ/縦35.35 × 幅30.48 × 厚さ6.81mm
  • 防水性/50m
  • パワーリザーブ/約50時間
  • 世界限定/106本
  • 予定価格/1億1990万円

●お問い合わせ先
リシャール・ミルジャパン
TEL. 03-5511-1555

公式サイト