2019年の秋にデビューし、すでに認知度も高いファーストモデルはステンレススチールケースとブレスレットからなるスタイルで、これまでのブランドイメージを覆し、新たな領域を開拓した。
10年以上の歳月をかけて生み出されたこの渾身作。ホメロスの大叙事詩からつけられた、“オデュッセウス”の名にふさわしい冒険の旅は、これからさらに広がっていく。
A. LANGE & SÖHNE
ODYSSEUS
新設計されたケースとブレスレットは、一体感あるデザインに、スチールならではの硬質感と新たな魅力を引き出す。さらに唯一無二の個性を際立たせるのがフェースだ。左右には曜日と日付の小窓を備え、アウトサイズ表示に込めたブランドの伝統と矜持を漂わせるのだ。その修正もケース右側にさりげなく張り出した上下のプッシュボタンで容易にでき、120m防水など、よりアクティブなライフスタイルに応える。
内なるキャリバーに息づく、
変わらぬ様式美と革新的な技術
搭載する新キャリバーL155.1 DATOMATICに冠され、ローターにも刻まれたDATOMATICとは、独自の日付機構と自動巻きの組み合わせを意味する。キャリバーを覆う大型プレートや受けの装飾といった様式美を守りつつ、毎時2万8800振動のハイビートと50時間のパワーリザーブを装備。天輪は、外径の内側に調整ビスを埋め込むことで、高振動でも乱流や空気抵抗を抑え、歩度の安定性とエネルギー効率を向上している。
オデュッセウスのディテールに宿る
A. ランゲ&ゾーネの神髄
モダニティーを感じさせながらも、細部にはまごうことなきA. ランゲ&ゾーネの哲学が表現されている。それは、使うことで実感する道具としての完成度であり、さらに増す愛着だ。
そこに漂う圧倒的な存在感に、ドイツ時計の精神を研ぎ澄まし、孤高を極めてきたブランドの未来が伝わるのだ。
現代のラグジュアリーの位置づけは、よりアクティブに変わってきている。ファッションはカジュアルが主流になり、クルマであればショーファーカーよりもドライバーズカーに人気が集まる。いずれも多様化する日常で常に価値が感じられる。それは時計も例外ではない。ステンレススチールケースにブレスレットを備えたオデュッセウスは、これまでのブランドにはなかったスポーティなテイストを漂わせる。だがそれがけっして時流に乗ったものではないことは明らかだ。そこからは、次世代に向けて新たなジャンルに挑戦する強い意志が伝わってくるのだ。
精悍なブルーの文字盤には、ステンレススチールケースの堅牢さと調和する、力強い針やインデックスを備えるとともに、それぞれに夜光を施し、暗所でも視認性を損なわない。そしてひと目でA. ランゲ&ゾーネであることを知らしめるのが、左右に設けたアウトサイズのデイデイト表示だ。それはブランドの歴史を彷彿とさせ、卓越した技術が秘められていることを予感させるのだ。さらにこの独創的な表示機構は、ケースサイドに張り出したプッシュボタンで簡単に操作できる実用性を備える。そんなひけらかさない機能美にも、技術に対する独自の哲学と美学が感じられる。
その個性を決定づけるブレスレットも注目に値する。躍動感ある5連のデザインは、幅広いラグが円形のケースから連なり、一体感を生み出す。リンクには美しいブラシ仕上げを施し、さらにバックルにかけて幅を狭めていくことで、洗練されたスタイルと手首との装着感を生み出す。たとえスポーティでもそこに武骨さはないのだ。
オデュッセウスは、古代ギリシャの詩人ホメロスが残した大叙事詩に登場する英雄だ。トロイア戦争の凱旋から一転し、苦難と波瀾万丈の旅を続ける。その名はやがて冒険の旅を意味するオデッセイになった。そしていま、A. ランゲ&ゾーネが新たなラグジュアリーウォッチを標榜し、伝統を継承しながらもそれに縛られることなく、可能性を切り開かんと出帆するにふさわしい名なのである。そして、今はまだ旅の序章にすぎない。「オデュッセウス」の道はまだまだ続く。今後の展開に期待したい。
*「オデュッセウス」の最新情報は
A. ランゲ&ゾーネ公式ウェブサイトで閲覧を。
Photograph / Eiichi Okuyama(CUVA CUVA)
Text / Mitsuru Shibata
Edit / Kazuyuki Okumura