メルセデス・ベンツの最高級セダン「メルセデス・マイバッハSクラス」が日本に上陸した。豪華で快適なファーストクラス・パッケージも備えている。
全長5462ミリ、全幅1899ミリ、全高1498ミリのメルセデス・マイバッハS560
メルセデス・ベンツ日本が9月8日に受注を開始したメルセデス・マイバッハ。戦前から戦後にかけてドイツに存在した超高級メーカーの名前を使ったものだ。
乗りものが好きな人なら、1930年代のツェッペリン伯の飛行船を知っているかもしれない。そのエンジンもマイバッハが手がけていた。戦前のクルマが好きな人なら、マイバッハ・ツェッペリン(1929年〜)という3トンの超高級車を覚えているだろう。
マイバッハを66年に合併吸収したメルセデス・ベンツは、2002年にブランドを復活させ、マイバッハ62と同57を発表。全長6.2メートルのマイバッハ62を、ロールスロイスやベントレーといった英国の高級ブランドへの対抗馬として開発したのだった。
この方針を変更したのが2015年。Sクラスのパーツを多く利用しながら、機能的で操縦性も高く、Sクラスでは満足できない後席乗員のためのモデルとして(再)開発された。ブランド名も2016年に「メルセデス・マイバッハ」と改称されている。
今回のビッグチェンジも、Sクラスと同じタイミングで行われた。トップモデルに12気筒搭載のメルセデス・マイバッハS650を置きながら、モデルレンジの中核は(Sクラス同様)新開発の4リッターV8エンジン搭載のS560である。
違いはホイールベースが20センチ延ばされていること。それによって後席スペースにたっぷりとした余裕が生まれた。レッグルームが広くなり、シートが大きくリクライニングする仕様「ファーストクラス・パッケージ」もメルセデス・マイバッハでこそ堪能できる。
後席シートは大きな画面によるインフォテイメントシステムや、温度の微調整ができるシートヒーターとシートクーラーが備わっている。座面とバックレストを別々にしており、セイフティベルトにはエアバッグを搭載。衝撃から乗員をやさしく守るのも、このクルマのオーナーにはアピール度が高そうだ。
メルセデス・ベンツSクラスの新モデルは、安全装備や運転支援システムの充実が注目点のひとつだった。その点はメルセデス・マイバッハも同様だ。ステレオカメラとレーダーを積極的に活用し、正面だけでなく側方からの衝突も可能なかぎり車両が避けようとする機能をもつ。
また、路面の状況を読み取って乗り心地を最適化する電子制御サスペンションシステムや、遠くまで照射範囲を拡大するヘッドライトなど、安全性と快適性が手に手をとって進んでいっているような機能も提供する。最先端技術のかたまりのようなクルマだ。
「(メルセデス・マイバッハは)究極のエクスクルーシブ性をもつブランド」。東京・六本木のグランドハイアット東京で開かれた発表会の席上で、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長が自信たっぷりにそう語っていたのも印象に残る。
価格はメルセデス・マイバッハS560で2253万円、4輪駆動システム搭載のS560 4MATICもやはり2253万円。後輪駆動のS560には、マジックボディコントロールというエアサスペンションが装備されているので同じ価格、とは日本法人の言だ。V12気筒のS650で2761万円となっている。
メルセデス・マイバッハSクラス
レーダーで路面の凹凸を読み取って足まわりの硬さを瞬時に変え、さらにカーブでは車体自体を内側に傾けるマジックボディコントロールはS560に装備。
メルセデス・マイバッハSクラス
S560の3982cc V8エンジンは345kW(468ps)の最高出力と700Nmの最大トルクを発生。
メルセデス・マイバッハSクラス
緊急時にステアリングホイール操作をアシストし、交差点での歩行者や他車両の飛び出しにも対応するアクティブブレーキアシストも搭載。
メルセデス・マイバッハSクラス
後席にはバックレストが43.5度までリクライニングするエグゼクティブシートを採用。
メルセデス・マイバッハSクラス
ファーストクラスパッケージにはデンマーク国境に近いフレンスブルグで起業したドイツの銀食器メーカー「Robbe & Berking」社がマイバッハ専用につくったシャンパングラスも備わる。
メルセデス・マイバッハSクラス
微妙な温度も選べるヒーターコントロールをはじめ、手に触れる部分を入念に仕上げたという後席空間が特徴。
メルセデス・マイバッハSクラス
マイバッハは本来1909年創業のドイツのエンジンメーカーで、戦前から戦後にかけて高級車を手がけていた伝説のブランドだ。
メルセデス・マイバッハSクラス
モノグラムにあるMMは「マイバッハ・マヌファクトゥア」を意味している。
メルセデス・マイバッハSクラス
S650には463kW(630ps)と1000Nmの5980cc V12エンジン搭載。
メルセデス・マイバッハSクラス
発表会場でスピーチするメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長。
Text: 小川フミオ