2018.05.25

ケガする確率がかなり高いアメリカンフットボールの考察

アメフトでの脳症はブームになりつつあるのか?【PART 2】

今回英国版『エスクァイア UK』のエディターは、アメフトにおける脳のダメージについて、NFL関係者や医療関係者に取材を重ねています。
 
▶▶▶本記事は、『ケガする確率がかなり高いアメリカンフットボール ―「脳症」についえ考察【Part 1】』の続きになります。

 
'It's As Though Brain Damage
Were Popular':
Inside America's Most Dangerous Sport 

04

©Getty Images 
  
 本記事のPart 1では、パーキンソン病やアルツハイマーを引き起こす致命的な脳症と言われている“CTE(慢性外傷性脳症)”を患った選手たちの、ゾッとする話について触れました。今回はCTE問題について、掘り下げた内容になっています。
 
 アメフトのCTE問題に関する良書を見れば、そのタイトルに答えが見つかるはずです。その名も、『League of Denial(否定のリーグ)』ESPNのレポーターであるマーク・ファイナル-ワダと彼の兄弟スティーブによる共著になっています。 
 
 2002年にCTEによる悪影響が指摘されて以来、NFLは継続的に戦ってきました。
 
 それ以前は、ボクサーならこれを「パンチドランク」または拳闘家認知症と呼んでいたのはご存じかと思います。しかし、殿堂入りしたピッツバーグ・スティーラーズの“鋼の男”マイク・ウェブスターは、引退からほんの11年後である50歳のときに亡くなっているのです。 
 
 人々に大いに愛されたこのプレーヤーの人生は、結局は混乱の悪循環へと陥っていたのです。 
 
 怒りと被害妄想が常に彼を襲い、絶えず痛みにも苛まれ、引退後の彼の精神は想像を絶するくらい消耗し、眠ることすらままならなかったのでした。結婚生活は破綻をきたし、最終的に行きついた先はピックアップトラックで寝起きするような生活でした。彼自身、すべての原因はアメフトにあるとしました。さらには銃などの凶器を集め、NFLの役員たちを殺す話までし始めたのでした…。 
  

GettyImages-504713758実

写真:2016年1月12日、ワシントンD.C.にて。法医学病理医と神経病理学者博士ベネット・オマルは連邦議会が主催する説明会に参加。 Dr.Omaluはマイク・ウェブスターの事例に関して説明した。Photograph / Getty Images 
 
  
 表向きの死因は心臓発作と公表されましたが、検死を担当した若きナイジェリア人法病理学者ベネット・オマルは、そのままで終わらせることを拒んだのでした。 
 
 オマルは、「ウェブスターが脳震盪後症候群を患い、鬱病に苦しんでいた」ことを知っていたのです。それで彼の脳を検査しました。敬虔なカソリック教徒のオマルは、「死後の世界を信じる」と『Frontline』誌(アメリカの『Panorama』誌に当たる)でコメントしながら、検死台の上で死体に話しかけたとのことです。
 
 このように…「ねえマイク、僕を助けておくれよ。周りが間違っていることを証明しようじゃないか。君はアメフトの被害者だ。今どこにいようとも、君は僕を助ける必要があるんだよ」と。 

 
 オマルが発見したことは、もしかしたら、スポーツ界を永遠に変えてしまうかもしれません。アメフトだけでなく、脳損傷とヘディングが関係するスポーツならば、アイスホッケーやラグビー、さらにはサッカーまで含まれることでしょう。オマルとウェブスターの話、そしてNFLの反応は、この冬公開されたウィル・スミス主演の映画『Concussion(原題)』のテーマにもなりました。
 
 
 「健康なニューロンにはすべて、タウと呼ばれるたんぱく質が含まれています」と、ボストン大学神経学課のロバート・スターン教授は言いいます(世界をリードするボストン大学のCTE科学者には、マッキー、カントゥ、スターンなどが挙げられます。オマルは現在含まれていない)。 
 
 「ある部分のニューロンから、また別のニューロンへと情報を運ぶ神経セルの鉄道があると想像してください。脳に衝撃が与えられた後、タウたんぱく質はもつれ、この“線路”は破壊され、次第に神経セルは死滅します。ウェブスターの脳には、これらのもつれたタウたんぱく質が多く見られました」と話しています。 

 
 これは、ある科学雑誌のほんの1つの事例に過ぎず、その結果として大した変化は起きませんでした。が、若き元レスラーのクリス・ノウィンスキは、脳震盪に関する文献を読みあさり始めました。ハーバード大卒(リングネームは“Chris Harvard”)の彼自身が脳震盪後症候群を患っており、それについて詳しく知りたいと考えたのです。 
 
 しかし、オマルの論文以外に情報はあまり存在しなかったので、ノウィンスキはこの件に取り掛かろうと決心したのです。彼自身は科学者ではないため、オマルやその他の研究者のために脳の提供面で協力しました。彼はアメフト選手が亡くなるごとに、その遺族に連絡を取り、脳の提供を求めました。この話は彼の著書、『Head Games』に書かれています。(次ページへ続く) 

1 2 3 4 5 6

By Sanjiv Bhattacharya on January 8, 2016
Photos by ESQUIRE UK and Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Spring Hill, MEN'S + 
※この翻訳は抄訳です。
 
Edit / Kaz OGAWA

Page Top