2018.05.28

俺たちは黙ってプレーなどしない

国歌斉唱中の罰金ルール導入を承認したNFLオーナー陣ー「選手たちの表現の自由」をめぐる主張はどこに?

NFL(米プロアメリカンフットボールリーグ)のオーナーたちは、国歌斉唱中に抗議をした選手のチームに罰金を課す新たなポリシーを承認しました。

 国歌斉唱中の罰金ルール導入を承認したNFLオーナー陣ー「選手たちの表現の自由」をめぐる主張はどこに?
Getty Images

 
NFL Owners Just Made a 
Mockery of All the Talk 
About Players' Free Speech 
Last Season

 2017年、NFL(米アメリカンフットボールリーグ)では、ドナルド・トランプ大統領が国歌斉唱中に抗議を行った選手たちを「クソ野郎」と侮辱したことで、抗議行動が大きく拡大しました。
 
 大統領への嫌悪感は選手だけにとどまらず、分断を煽るトランプ氏の発言に対し一部のチームオーナーたちも、団結への思いを口にしました。そのなかでシカゴ・ベアーズのジョージ・H・マッカスキー会長は、選手たちの表現の自由について次のようにコメントしています。 
 
 「米国を世界でもっとも偉大な国家としているものは、建国の礎となった“自由”であり、また敬意をもって平和的なやり方で自分の信念や考えを示すことができる“自由”です」と。 
 
  
 そんななか、同様にNFLのオーナーたちは、2018年5月23日に自分たちの主張をかなぐり捨てるかのように、国歌斉唱中の抗議(そもそもは警察の取り締まりや刑事司法制度における人種差別に光を当てるために、コリン・キャパニック選手とエリック・リード選手が始めたものでした)に関する、リーグの新たなポリシーの導入を承認したのです。
 
 「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、オーナーたちは「国歌斉唱中にフィールド上、あるいはサイドライン上で起立せずに抗議を行った選手がいた場合、チームに罰金を課す」という新ルールを承認した記せられています。 
 
 ただしこのルールでは、選手たちには国歌斉唱の際にロッカールームにとどまる選択肢も与えられています。個々の選手が罰則の対象になるわけではないということはポイントですが、この意図は明らかです。罰金を積極的に課されたいようなチームがない以上、罰金をもたらすような選手を敢えて雇うチームもないということになるのです。 
  

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Photograph / Getty Images 
 
 
 民間の組織として、NFLが新たなルールを取り入れるのは自由です。 
 
 とはいえ、今回の決定は「選手たちに事実上表現の自由はない」ということを強調するものではないでしょうか。こういった抗議が一部の人を不快にさせると言っても、そもそも何らかの抗議が誰かにとって耳の痛い話であるのは当然のことです。ですが、お気づきの通り、こういった人々にとってはすべての抗議が不都合なタイミングで、間違ったやり方で不適切な代弁者によって行われるものなのです。
 
 抗議とは本来、何らかの問題から影響を受けていない人々の生活を妨げるものであり、彼らに問題の存在や緊急性に気づかせるためのものなのです。 
 
 選手たちが国歌斉唱中に抗議することを選んだのは、選手からコーチ、オーナー、ファンまでリーグに関係するすべての人が、この瞬間を目にしているからであり、この瞬間こそ、米国の偉大さに敬意を払うよう意図されたものだからです。選手たちは、人々がしっかり聞いているのがわかっているタイミングで、「米国がすべての人にとって、必ずしも素晴らしい国家というわけではない」ということを示唆していたのです。 
 
 キャパニック選手の抗議に反対する人には、この抗議が「星条旗あるいは米軍に対して敬意を欠く、非愛国的な行為だ」と指摘します。今回の決定を発表したNFLコミッショナーのロジャー・グッデル氏の声明も、このような意識を反映しています 
 
 「フィールド上の抗議活動が、多くの選手たちに愛国心がないという誤った認識を与えてしまったことは残念です。これは過去においても現在においても、まったく事実ではありません」とロジャー・グッデル氏。 
 
 国の政策に批判をする人に対し、一部の市民が「愛国心がない」というような見方をするのは、米国社会の奇妙なところです。
 
 ブッシュ政権の時代にも、イラク戦争を「大嘘から始まった破滅的な意思決定である」と批判すると、「軍隊の不支持」や「愛国心の欠如」と混同されたものでした。実際、米国政府やその政策を誠実に批判することは、国家を良くしようとする試みなのです。言うなれば、それは米国の建国理念や理想に少しでも近づこうとする動きに他なりません。(次ページへつづく)

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By Jack Holmes on May 24, 2018
Photos by Getty Images
ESQUIRE US 原文(English)
 
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊

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