[INDEX]

▼ プロテインスナック類

▼ 食事制限よりもバランスを重視する

▼ クレアチン

▼ アシュワガンダ(ハーブの一種)に注目

▼ アンチエイジング


私(この記事の筆者、アビー・ランガー氏)は管理栄養士として、これまでさまざまな食事法やダイエット法の流行が現れては消えていくのを目撃してきました。そのうえで、「2024年がどのような年になるのか?」を予想してみましょう。例えばケトン式ダイエットプラントミート(代替肉)といった強力なトレンドでさえ、廃れ始めるかもしれません。何でもエアフライヤー(ノンフライヤー)で調理するといった風潮についても、同様の可能性があることは否定できません。

先日、コロラド州デンバーで開催された栄養学関連のカンファレンスに出掛けてきました。そこでさまざまな新製品が展示された会場を歩き回りながら、最新の栄養学に関するセミナーや同業者たちと情報交換を通じて、2024年のトレンド傾向として見えてきたものがいくつかありました。

中にはかなり期待を抱かせるものもあり、それはうれしい驚きでした。以下に、新たなトレンドとなりそうな物事を紹介しながら、その有用性や健康上のメリットなど私なりに採点しましたのでご参照ください。

プロテインスナック類

プロテインバー
Laura Reid//Getty Images

プロテインバーやプロテインパウダーは相変わらず人気ですが、超加工食品(ウルトラ・プロセスフード:*1)に対する意識の高まりは見逃せません。結果として、メーカー各社が力を入れ始めているのが、自然なタンパク質(ホールプロテイン)を成分に用いた携帯食としての新種のスナック類の開発です。

会場では、「Egglife(エッグライフ:*2)」のフレーバー付きラップサンドも試食できました。プロテインが豊富で、フレーバーのないものであれば全く違和感のない風味でした。ピーナツバターなどの食材とも、抜群の相性です。

味付けされたツナと穀類などをミックスしたStarkist(スターキス:*3)の「SmartBowls(スマートボウル)」も、携帯食としても便利ですしおすすめです。マクロ栄養素の点でも優れたおやつで、どこへでも携行しやすい点も魅力的です。鶏肉からつくられた「Wilde(ワイルド:*4)」のプロテインチップスには鶏むね肉、卵白、鶏ガラスープが使われていて、美味しいだけでなく満腹感も得られます。「Whisps(ウィスプス:*5)」のチーズクリスプも高評価。ナッツ入りの新製品ですが、従来のWhispsのあの香ばしいチーズ味に、ナッツ由来の良質な脂質が加えられています。

トレンドスコア: 4点(5点満点)

自然なタンパク質でつくられた食品は単においしさだけでなく、加工(プロセス)も最低限にとどめられていることが多いもの。ビーフジャーキーや粉っぽくて食べにくいプロテインバーなど、それ以外の携帯食の選択肢が増えるのは大歓迎です。

食事制限よりもバランスを重視する

ヘルシーな食事
Kseniya Ovchinnikova//Getty Images

厳しい食事制限を課すダイエットをすれば、最初は快調に減量が進むかもしれません。ですが、長続きさせるのは困難でしょう。また、たとえ体重を落とせたとしても、身体に無理を強いるようなダイエットは健康的とは言えません。

より寛容な、それでいて健康的な食習慣が新たなトレンドとして台頭しています。例えば制限するのではなく、健康に重きを置きながら多様な食材を用いる「地中海式ダイエット(*6)」を思い浮かべてみてください。地中海式ダイエットが流行したのは、「制限まみれのダイエットは、肉体的にも精神的にも悪影響を及ぼしかねない」という研究結果があったからです。

トレンドスコア: 5点(5点満点)

私は栄養学の専門家として、クライアントやフォロワーや同業者たちと接しながら、継続することの難しい食事制限を避ける流れが生まれているのを実感しています。健康的な食事から安らぎを得たいというのが、最近の傾向なのです。これは決して悪いことではありません。

バランスの良い食生活には、多くのメリットがあります。多種多様な栄養素を摂取できますし、長続きしやすく、制限に頭を悩まされることなく素晴らしい人生をおくれるでしょう。

クレアチン

クレアチンを飲む女性
Farion_O//Getty Images

さまざまな利点が認められているクレアチンですが、その効果はもはや筋肉増強にとどまるものではありません。「骨量の減少を防ぐ可能性」も指摘されており、さらには「認知機能を向上させるという最新の研究結果」もあります。これは129人の被験者に対し、毎日5グラムのクレアチンを6週間にわたって与えたところ、認知機能がわずかに、しかし優位に向上した」という結果(*7)もあります。

しかしながら前者、骨量の減少に関する研究結果(*8)はまちまちであり、特に男性においては明確な結果は得られていません。いくつかの研究では、クレアチンが骨密度や骨質の改善に影響を与える可能性を示唆する結果も出ています。例えば、高齢者女性を対象とした研究では、クレアチンの摂取が腰椎の骨密度と骨粗鬆症リスクの低下に関連していることが示唆されました。

さらなる検証の必要性

これらの研究結果から、クレアチンが骨量減少の予防に効果を持つ可能性はありますが、まだ確実な結論を出すには至っていません。今後、さらなるヒト試験を行い、クレアチンの効果と安全性を検証していく必要があります。

トレンドスコア: 3点(5点満点)

安全性が高く、幅広く研究されているクレアチンモノハイドレート(クレアチン)ですが、やはり筋肉増強にこそ最大の効果があり、それ以外の健康効果はまだ確実ではありません。

認知機能に及ぼす影響については研究の初期段階であり、骨量減少の予防効果については、まだ科学的に裏づけられていません。

このようにクレアチンは健康食品に分類されますが、過剰摂取は健康被害を引き起こす可能性があります。摂取前に医師に相談し、適切な量を摂取するようにしましょう。

アシュワガンダ(ハーブの一種)に注目

アシュワガンダは伝統的に、アーユルヴェーダで用いられてきたハーブです。男性の精力増強や抗炎症作用、睡眠の質の向上など、さまざまな効果があるとされています。

ネットを検索すれば、アシュワガンダの健康効果に関する解説がいくつも出てきますが、コルチゾールを低下させる特性やストレスや不安感を和らげる効果は、すでに肯定的な研究結果が伴っています。

さらに、アシュワガンダには認知的柔軟性(※編集注:一般に「外部環境からの変化に対して考え方を柔軟に変化させることができる能力」と定義されています)を高める効果があることも指摘されています。

トレンドスコア: 4点(5点満点)

その効果を証明していくためには、さらなる研究が必要であることは間違いありません。しかし、「サプリメントの用法・用量を守って摂取する分には問題ない」と言えるでしょう。「認証機関によって認証された適量とされている、300~600ミリグラムのサプリメントであることが望ましい」と言えます。ストレスや不安感に効く可能性のある、もう一つのオプションとして念頭に置いておくことは無意味ではありません。

アーユルヴェーダに少々はまっているエスクァイア日本版編集長も、これを愛飲しているようなので感想を聞くと…。

「いわゆる、『にんじん』のようなものだと思っていて、これを飲むようになってから活力は増し、身も心もバランスが整ってきたような気がします。それに睡眠に質も向上したと感じています。ですが、あくまでもこれは個人的な意見です…。ときに、体調によってはお腹に負担を関じることもあるので、飲む量には注意を払ったほうがいいでしょう。この効果を期待しながらも心配のある場合は、摂取を開始する前に医療専門家に相談することが最善ですね。これによって、個人の健康状態に最適な使用方法や量を決定することができるはずです」とのこと。

ちなみに編集長は、NOW Foodsの「Ashwagandha」を愛飲しています。

アンチエイジング(長寿)

氷風呂に入る男性
andresr//Getty Images

いかにしてより長く、よりたくましく生きるか。それがウェルネス業界の大きな課題です。冷水浴(コールドプランジ)、レッドライト治療法、長期断食、NMNサプリメント(※編集注:NMN=ニコチンアミドモノヌクレオチド。リボースとニコチンアミドに由来するヌクレオチドで、ヒトの体内に入ると、補酵素NADに変換され、アンチエイジングに関わるとされているサーチュイン遺伝子<成長遺伝子>を活性化する)などを筆頭に、さまざまなアンチエイジングの方法が取り沙汰されるようになっています。

特にインターネット上の議論は過熱の一途をたどっており、一部の著名人の間でも広がりを見せているトレンドです。ちなみにこれも、エスクァイア日本版編集長は試しているそうです。ちなみに商品は、TOKYOサプリの「THE NMN 5000」だそうです。とは言え、まだ始めたばかりなのでその効果はまだわからないということ。

トレンドスコア: 2点(5点満点)

残念ながら人類の長寿化は、ヒトでの研究がまだまだ進んでいないのが実情です。長寿をどのようにして実現することができるのか? その点についてもまだ解明されていません。

健康そのものへの科学的介入や、健康の“裏技(ハック)”については危険性が常にともない、むしろ逆効果になってしまうことも珍しくありません。人間はこの世に生まれ落ちた以上、誰しもか慣らす死ぬ運命を抱えています。その運命を受け入れながら、よりよい人生を送ることに意識を向けても罰は当たらないのではないのでしょうか。

健康問題に意識を向けるのは素晴らしいことです。ですが、ロンジェビティ(長寿)としてトレンド化されているあれこれは、まだ科学的な裏づけのないことが多いのが実情。その大半が極めて高価で、まだ科学的な根拠の不確かな方法が多く、むしろ好ましくない影響を及ぼすものも少なくないということを覚えておきましょう。


【脚注】

*1:Ultra-processed food 糖分、塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品のこと。複数の食材を工業的に配合して製造され、加工の程度が非常に高い食品でソーセージや菓子パン、清涼飲料などが代表的なもの。東京大学が発表したレポートを参照

*2:egglifefiids.com

*3:StarKist

*4:WILDE PROTEINE CHIPS

*5:Whisps

*6:The Mediterranean diet and health: a comprehensive overview

*7:The effects of creatine supplementation on cognitive performance—a randomised controlled study

*8:Effect of 12 months of creatine supplementation and whole-body resistance training on measures of bone, muscle and strength in older males

From: Men's Health US