レディオヘッドの才気あふれるサウンドスケープにオマージュを捧げ、ポストロックの神様による革命が過去20年にわたりどのように音楽界に影響を及ぼしてきたかを紹介します。


 私(筆者)がまだ“平日飲み”のルールを適用していた1997年、レディオヘッドのベーシストであるコリン・グリーンウッドは、Stockwell(ストックウェル、パブ)で私たちによく合流したものでした。

 ある晩、ラストオーダー後に流れた友人宅で、コリンはテープをかけてもいいか僕らに尋ねたのです。バンドのレコーディングが上がったもので、仕上がりは良いかどうか確かじゃないと彼は言いました。

 こうして私は、『OKコンピューター』を初めて聞くことになりました。レディオヘッドが、単なる最高のクラシックなロックバンドから、新世代の量子化学者的サウンドのパイオニアとなり、ブレイクするきっかけとなったアルバムであった。私は、コリンは元々この作品が良いものだと分かっていたと読んでいます。

 もちろん『OKコンピューター』は、単なる始まりに過ぎませんでした。続いてリリースした『キッド A』と『アムニージアック』では、無意識下で逆巻くモダンエレクトロニカの世界へとダイブし、ロックミュージックが無限に発展できるサウンドにも関わらず、そこで盲目的に継続される儀式に疑問を投げかけました。

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 『イン・レインボウズ』や2016年の『ア・ムーン・シェイプト・プール』のような、後にリリースされたアルバムでロックソングで使い尽くされた様式に取って代わる、魅力的なアイデアを僕らに提案しました。彼らが執拗に掘り下げてきた様々な心の機微は、21世紀の人生における困惑、混乱、恐怖、そして時たま訪れる高揚感を絶妙に捉えていました。

 彼らは、業界全体も変えてしまいました。予告なく2007年の『イン・レインボウズ』をリリースし、それもファンに直接販売して、彼らが価格を自由に決める形式を設定したのです。レディオヘッドは、音楽を特別な出来事ではなく日用品になり下げてしまった、気の滅入るようなマーケティング主体のアプローチに反旗を翻したのです。

 ボーカリストのトム・ヨークの政治的そして“印象派的”な行動は、もちろん彼が修得していった感覚であります。さらに彼のSpotify批判は、ただの技術嫌いに聞こえるかもしれません。でも、レディオヘッドは、権利の擁護のないロックミュージックの未来に一打撃を与えようとしただけじゃないのでしょうか?

 「最近のバンドは、養鶏所で見かけるかごの中の鶏みたいなものだ」 と、2008年にヨークは私に言いました。そして、「僕らがしてきたみたいに、みんなこの“ケージ鶏”のプロセスを飛び越えて、“馬鹿やろう”といえる度胸を持たないとだめなんだ」と、続けていたのです。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。