電気自動車(EV)について語ることは、ほとんどの自動車メーカーにとって避けて通れなくなりつつあります。最近の大きな話題となったのは、あのランボルギーニです。今から3年以内の2024年までには、全モデルをプラグイン・ハイブリッド車にする計画であり、また、その直後には同社初となる完全電動車が予定されていると発表したのです。

 今回はカーメディア『Road & Track』誌が行った、ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマンCEOに対するインタビューの内容を取り上げます。ヴィンケルマンCEOによれば、同社の新たなる計画は「おうし座」の中で最も明るい星の名にちなんで「Direzione Cor Tauri(おうし座を目指す)」と銘打たれています。

 「2021年および2022年について言えば、これまでの燃焼エンジンの新型化とアップデートを行うのみで、成長する機会が十分にあると私たちは捉えています。その先に待ち受けているのが、第二段階と呼ぶべき重要な計画です。2024年までに当社の全車種、全ラインナップの電動化を実現する予定です」と、ヴィンケルマンCEOは語っています。

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ランボルギーニのスーパーSUV、「ウルス」。

 まず最初のハイブリッドカーとなるのは、「ウルス」です。

 「このPHEV(プラグインハイブリッド)は、現在のV8エンジンよりも速いクルマとなるでしょう」と、ヴィンケルマンCEOは自信を覗かせています。この発言は恐らく、ポルシェが「カイエン・ターボSEハイブリッド」用に採用している670馬力のハイブリッドV8に匹敵するエンジンを搭載予定であることを示唆していると見られます。

 その次に登場するのが、「アヴェンタドール」の後継モデルです。現在の強力な自然吸気12気筒エンジンをさらに進化させ、そこにハイブリッド化を組み合わせる計画です。

 「『アヴェンタドール』の後継車には、V12エンジンを搭載するつもりです。つまり、あの『アヴェンタドール』ならではの美しいエンジン音が失われると心配する必要はありません。エンジンは変らずそこにあり、見事な音色を奏でているはずです」と、ヴィンケルマンCEOは語ります。

 しかし、「ウラカン」の後継モデルに搭載されるパワープラントについては、ヴィンケルマンCEOは口を閉ざしています。ランボルギーニの社内から漏れ聞こえてくる情報によれば、V型10気筒からツインターボ仕様のV8エンジンへの変更という筋が有力かもしれません。

 いずれの新型スーパーカーにも搭載される予定のハイブリッドシステムについては、電動のフロントアクスルに加え、内燃エンジンのハイブリッドアシスト付きのリアアクスルを組み合わせたものになるという情報もあります。それぞれのパフォーマンスについては公式の発表がされていませんが、ヴィンケルマンCEOによれば、「ウルス同様いずれも、現行モデルよりも速いクルマになる」とのことです。

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自然吸気V10エンジンを搭載した「ウラカンSTO」。 expand=

 限定モデルの「シアン」には、革新的なスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサを用いた二次電池の種類のこと。劣化が少なく数百万サイクルの充放電が可能とされています)が採用されるというです。ですが、「アヴェンタドール」にも「ウラカン」にも搭載の予定はありません。ヴィンケルマンCEOによれば、ヨーロッパの多くの国々でEVとしての承認を得るのに必要なEV走行距離を実現するには、従来型のバッテリーパックを用いる必要があるようです。

 また、ランボルギーニ初となる完全EV仕様車の開発についてもヴィンケルマンCEOは言及しており、こちらは2020年代後半の発表を目標に、すでに開発が始まっています。

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2014年にパリで発表されたコンセプトカー「アステリオン」。

 「今、手にしているものを捨て去るつもりはありません。理想は現在と未来、それぞれの最良の要素を融合させることに他なりません。私の夢としてあるのは、1950年代から60年代のGTカーのような4シーターの2ドア車が心に浮かんでいます」

 この発言を受けて、1968年に登場し、10年にわたって生産されたグランツーリスモ「エスパーダ」を思い浮かべた方はさすがです。ただし、ヴィンケルマンCEOの説明によれば、「エスパーダ」それよりもややクロスオーバー(街乗りでの快適性を重視した都市型のSUVタイプ)的な要素が加わったクルマ、ということになるのかもしれません。

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Heritage Images//Getty Images
1968年に登場した「エスパーダ」。

 「確かにわれわれランボルギーニは、60年代に『エスパーダ』を生み出しました。そこに今日的なエッセンスを加えるとなると、シートの位置を高くし、車高を上げ、よりクリアな視界を持ったクルマを試してみる絶好の機会となるかもしれません」と、ヴィンケルマンCEOはコメントを加えています。

 ランボルギーニにおけるこのEVの位置付けを考えれば、ポルシェが近々発表を予定している大型電気自動車用のプラットフォームが流用される可能性も低いとは言えません。しかしヴィンケルマンCEOは、クロアチアのEVメーカーであるリマックと、ヴィンケルマンCEOが社長を兼務しているブガッティとの間で計画されている技術提携の枠が、ランボルギーニにも拡大される可能性があるとも述べています。

 「将来のことについては、“絶対”などはありえません。われわれに興味を持ってくれるあらゆるパートナーの声に対して耳を傾けていますし、検討に値するあらゆる提案に対して、常にオープンでありたいと考えています」と、ヴィンケルマンCEOは語ります。

 急速な電動化を推し進めるためには、当然莫大な予算が必要です。ヴィンケルマンCEOによれば、新型スーパーカーとなる「アヴェンタドール」にも、そして「ウラカン」に加え「ウルスPHEV」にも、開発にかかる費用は4年間で15億ユーロ(約1600億円)に上り、さらに完全EVの新型車の開発コストも加わります。

 ところが最近のコロナ禍をものともせず、ランボルギーニは大きな成功を手にしています。「2020年についてはパンデミックにも関わらず、利益率や売上といった面で、過去最高の数字となりました。だからこそ今、私たちには成長の第二段階に点火する条件が整っていると言えるでしょう」と、ヴィンケルマンCEOは強気な姿勢を崩そうとはしません。

 今後のランボルギーニの動きに、引き続き注目しましょう。

Source / Road & Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。